納得できる経営計画さえあれば、会社は迷わず進んでいける
「経営計画って結局、計画通りになんてならない…」
企業経営者の方はもちろん、フリーランスの方でも経営計画を立てている人はたくさんいるでしょう。けれど「どうせ計画通りになんていかないんだから、経営計画なんて必要ないんじゃないか」と考えている人も中にはいるかもしれません。
実際、僕自身も創業からずっと毎期の事業計画や数値目標を自分なりに掲げて金融機関への訪問などをしていましたが、正直なところ直近数年の実績をもとに「ざっくりこれくらい売上を増やしていきたいなー」という、あまりにも大雑把な目標設定をしていました。利益を出すためにがむしゃらに働いてきた結果、会社としてはそれなりに成長はしていました。ただ、事業の数値目標はあれど、会社としてどうありたいかといった経営目標や中長期的な計画は、まだまだぼんやりとしている状態でした。
そんな僕が「今後の会社のことを考えてもう一度、経営計画書をきちんとつくろう」と思ったのはちょうど3年ほど前。コロナ禍でも順調に余剰利益を積めたこと、社員が増えてきて組織体制の基盤が整ってきたこと。理由は他にもいろいろあるんですが、ふと立ち止まって会社の将来を思い描いた時に「このまま、のらりくらりと経営を続けていくのが果たして本当にやりたかったことだろうか?」と自分自身に問い直したのがきっかけでした。
いままで通りの経営を続けていけば、この先数年はそれなりに売上も利益も出せる自信はありました。ただ、会社の規模感としてはできることに限界もある。いろんな人の力添えで会社として成立しているけれど、社会に還元・貢献できるようなインパクトある事業を展開するにはまだまだ時間がかかりそうだ。そんな風に考えて、会社の未来、そして自分なりの将来ビジョンを照らし合わせながら、経営計画書をまとめ直すことにしたんです。
今村不動産は今年6月で9期目に突入しました。経営計画書を刷新して3年です。もちろん全てが計画通りとはいきませんが、当初計画した5年後の売上目標50億、10年後の100億に向けての数値目標や組織づくりについては、おおむね計画通りに進んでいます。漠然とした未来予測ではなく「会社として、また個人として達成すべき目標が明確になったこと」「判断に迷ったときに立ち返る指標ができたこと」が、経営計画書をつくってよかったなと思うところです。
他にも、僕ら不動産の開発会社は商売として扱う金額が大きいので、必然的に自己資金ではなく金融機関からの融資をもとに事業拡大を目指していきます。綿密な事業計画書があること、それにもとづいた経営ができていることは評価にもつながりますし、会社の成長スピードもこの数年で以前よりもぐんとはやくなったと感じています。
そんなわけで、今回は僕なりの経営計画についての考えをまとめてみることにしました。経営計画書作成のプロではありませんが、何か少しでもヒントになれば嬉しいです。
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経営数値目標は経常利益から逆算して考える
経営計画書に決まった形式はありませんが、僕なりにまとめると
① 会社として掲げる理念や経営方針
② 当期を含めた中長期的な数値目標
③ 中長期的な事業展開や組織体制
に分類できるんじゃないかと考えています。
①に関しては企業としてどんな未来を目指すのか、いわゆる企業ブランディングを社内でチームを結成し、外部ブレーンにも入ってもらって進めていきました。これはまた別の機会に詳しくご紹介したいと思います。今回は②数値目標と③事業展開について紐解いていきます。
まず、経営計画で重要な数値目標ですが、僕の場合は経常利益から逆算して考えるようにしています。当たり前のことですが、いくら売上が上がったとしても、利益が残らないと会社存続はもちろん成長のための翌期の投資もできなくなってしまいます。経常利益、そして税引後の純利益をどれだけ残しながら毎年何に投資していくか。ここを数値目標の軸にすることで、中長期的な事業展開やそのために必要な組織体制・採用計画も立てやすくなりました。
経常利益をもとに逆算して売上目標をつくっていくわけですが、ここで重要になるのがほっておいても出ていく「販売管理費」。販管費の金額予測が正確なら『目標とする経常利益+販管費(固定費)=必要となる売上総利益(粗利)』という逆算ができます。さらに、ここで出した粗利を粗利益率で割り返すと、売上目標が算出できるといった算段です。
もちろん、これはあくまで数値を出すための考え方で「販管費」と「粗利益率」が実際とかけ離れてしまっていると、数値計画自体の意味がなくなってしまいます。大事なのは自分の会社の事業構造をしっかり把握しておくことだと思います。
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事業構造の把握のために役立ったキャリア制度
会社の業種や事業によって、販管費に対する考え方や粗利益率はまったく違うと思いますが、僕の場合、自社の事業構造を把握するのに役立ったのが、前回ご紹介した「給与体系・キャリアパス」でした。
不動産開発業についてめちゃくちゃ簡単にご紹介すると、
土地や建物を仕入れ > 商品化(用途変更・改装・テナント付など) > 販売
という流れで、仕入れ額と販売額の差が売上総利益(粗利)になります。
不動産という性質上、例えば雑貨や食料品などの仕入・販売と違って「商品化」の段階でどれだけ付加価値を生み出せるかがポイントになってきます。もちろん、市場環境やニーズの変動もあるので目論見通りにいかないことだってあります。ここで重要になるのが「計画通りの粗利で売買が成立すること」。さらに「粗利と販管費が連動していること」です。
計画通りの粗利で売買が成立することについては、創業からずっと培ってきた自社の市場調査&開発力である程度予測することができるようになっていました。加えて、今村不動産では営業インセンティブも含めた明確な給与・キャリア制度を設計していたので、販管費→粗利→粗利率→売上を連動させながら、ブレのない数値計画をシュミレーションすることができました。僕自身が独立するまで他社で働いてきて「不満だったからきちんと整備したい」と思ってつくったキャリアパスや給与制度でしたが、実際のところは経営計画づくりにも役立ったのは、当初考えていなかった嬉しい誤算でした。
また、不動産開発は仕入れから販売まで1年以上の長期間に渡ることがほとんどで、当期に仕入れた不動産は次の期の販売=利益を生む在庫になります。つまり、制度と数値がしっかりと連動してさえいれば、仕入れた不動産数や金額をもとに次の期の数値シミュレーションを立てることができるんです。これを繰り返していけば(もちろん完全に正確ではないにせよ)、ある程度中長期的な目標数値の予測が立てれますし、そのために達成すべき営業目標も決めやすくなります。少なくとも、毎期末にスタッフと次期の目標や給与・キャリアについて話し合う→大幅にブレない次期の数値目標が決定できる、というサイクルをつくることはできます。
そういった意味でも、僕の実体験にはなりますが、漠然と売上目標を立てるのではなく自社の人員体制や給与制度と連動させながら積み上げ式で目標数値・中長期計画を立てる方が、より現実的な経営計画をつくれるんじゃないかな、と思ったりしています。
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特化型のビジネスは本当に正解だろうか
そんな風に考えていくと、経営計画をもとに会社成長のために毎期何に投資していくか、組織をどうやってつくっていくのかと、経営に対する意識も少しずつ広がっていきました。
今村不動産では創業からこれまではとにかく収益をあげるために、得意としてきた店舗開発を軸に事業特化して経営を進めてきました。結果として身近な業界内では今村不動産=店舗開発に強い会社という認知を獲得できていると思いますし、関係先の仲介業者様からも店舗関連の物件については率先して情報をいただけるようになっています。ただ、この先もずっと事業特化して経営を続けていきたいかと言われると実はそうでもなくて、中長期的には総合ディベロッパーとして幅広い分野を自社完結できる企業形態を目指しています。
というのも、一点集中は創業初期の経営戦略としては強い反面、リスクヘッジを考えると危うい側面があると思っているからです。特に市場の影響をモロに受ける不動産業界では、一点集中型ではそのジャンルのニーズが減退してしまうと、たちまち経営が傾いてしまう危険をはらんでいます。例えば、今回の新型コロナで都心部の店舗テナントが相次いで撤退したのは記憶に新しいところですし、リモートワークの普及によって企業のオフィスに対する意識も大きく変化しました。もし僕らが都心部の店舗やオフィス物件開発に特化した会社だったら大きなダメージを受けていたはずです。他にも、近年ニーズが高いマンション開発に特化していた場合、直近の業績や見通しは良かったとしても、将来の人口減少や世帯構成の変化によって需要が減少する、場合によっては世の中の常識がガラっと変わって自宅を所有するニーズ自体がなくなる可能性だってないとは言い切れません。
店舗開発にとどまらず大規模な住宅や都市開発、さらに自社アセットを保有することで開発以外の分野へチャレンジしていく。経営計画を練り直したことで、数値をベースに会社としての事業展開まで見通せるようになったと思います。
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経営計画を拠り所にした組織作りを目指して
数値目標=事業展開=組織体制
経営計画をもとに僕が今期注力して投資・取り組みたいと考えているのが組織づくりです。経営計画書をつくるにあたって、数値目標とそれを達成するための事業展開、そして数年先を見越した組織図を整備しなおしました。いくら理想的な目標を掲げたとしても、その達成を目指して共に働いてくれる仲間がいなければ、それこそ絵に書いた餅になってしまいます。
組織作りや採用計画についても会社によって考え方はいろいろあると思いますが、僕らの場合は給与・キャリア制度からもわかるように完全なジョブ型の採用をしています。中長期的な事業展開を見越した組織図、そこに必要な人と役割を落とし込み、求める人材像を明確にし、役職や職種に合わせて媒体やエージェントを使い分けながら求人活動を展開しています。
まずは目先の不動産開発業務のさらなる強化に向けて昨年の秋に東京支社を構えたので、営業職の4~5名採用を目指しています。あとは、業界的にもまだまだIT化が遅れているし、自分たちも積極的に投資してこなかった分野を拡張すべく、広報担当とマーケティング担当の採用も進めていきます。自社の広報力強化もですが、将来的に今村不動産らしい不動産テック分野のサービス開発を推し進める第一歩にしたいと経営計画上では考えています。これに関しては状況に応じてM&Aも視野に入れてもいいかなとも思っています。
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漠然と思い描いていた会社の将来が、経営計画書を整備することですごくクリアになります。振り返って僕なりに大切だなと感じているのは、売上や利益の数値目標を立てることじゃなくて、事業展開や組織体制とセットで考えることです。数字・事業・組織を連動させながら計画に落とし込むことで「とにかく売上をあげないと」と闇雲に営業を続ける経営からは少なくとも脱却できると思いますし、自社の事業構造を俯瞰して捉え直すきっかけにもなります。
ただ、計画はあくまで計画。計画を立てたことに満足せず、変わることが前提でいままで通りこまめに進捗をチェックしながら、ゴールだけはぶらすことなく経営を楽しんでいきたいなと思います。
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