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勉強は体力でゴリ押せ!! ~段取りの大切さ~

 ぼくはこの13年ほどの間、ひょんなきっかけから、大学受験生を中心に学習指導をしている。その対象は、高校生はもちろんのこと、浪人生や社会人と様々な背景をもった受験生たちだ。

 学習塾を開業するという知人からの依頼を引き受けたのがこの仕事の始まりだったのだが、ぼくは、好きなクラスメイトが通っているから、といった理由でしか塾に通った経験がなかった。

 そのため、一般的な学生たちが何を求めて塾に通ってくるのかについて、ぼくにはピンとくるものがなかったのである。

 ところが、実際に学生たちとふれあい、彼らが躓いている点を把握する中で、彼らにまず伝えてあげるべきことが見えてきた。それは、段取りの大切さである。

 勉強時間に比して学力の成長が芳しいものではないことに悩む学生は、段取り、すなわち学習の順序や手順が適切でないことが多い。

 そこでぼくは、自身の経験を話すことで段取りの大切さを感じてもらうようにしている。それは次のような内容である。

 高校1,2年生だった頃のぼくは、特に専門的に学びたい学問があったわけでもなければ、希望する進学先もなかった。

 しかし、いよいよ半年後に3年生へと進級し、現役の大学受験生となるのを目前に控えた2年生の秋に、ぼくはこう判断したのである。

 「大学受験に必要なのは、長時間の勉強に耐えられる体力だ」

 思い立ったらすぐに行動する性格であるため、ぼくはそう思った日から、朝、晩と10kmのランニングを始めた。雨が降ろうと雪が降ろうとぼくは走った。

 からだづくりほど、継続したことが結果として表れるものはない。半年が経って迎えた3年生の春の時点で、ぼくの体力は、体力測定の1500m走を、記録に納得がいかないから、という理由で、1時間の体育の授業中に4本も走ることができるほどになっていた。

 (余談だが、ランニング中に母校の二宮尊徳の像を見かけるにつけ、ぼくは、「きっと彼は、薪を背負いながら本を読むことで、勉強と体力づくりを同時に行っていたに違いない」などと、バカなことを考えていた)

 そうして培った体力に物を言わせて、ぼくは毎日7~8時間ほどの勉強時間を確保して、受験勉強に励んだものである。

 彼らに印象付けるため、敢えて極端な例を引き合いに出しているものの、何を身につけるにしても、自分の現在の能力を把握したうえで、成長のための段取りを適切に組むことは、何よりも重要なことである。

 大学受験に関して言えば、学生たちの学習姿勢の中で目につくのが、まず志望校の受験対策関連の書籍を買い集める姿である。

 加えて、既に何かをできる人が発信している、"できる人がしている〇〇な学習法"と題された動画コンテンツを参考にするのも最近よく目にする姿のひとつである。

 このような態度を見せがちな学生は、現在の自分は力不足である、という漠然とした認識は持っているものの、では、まずどうするべきなのか、について適切な判断をすることができない傾向が非常に強い。

 だから、こうした学生には、まず、現時点で何を理解できていないのかを本人に認識してもらったうえで、それを克服するためにふさわしい段取りをつける必要性をわかってもらう必要がある。

 算数の加減乗除を正確に処理できないままに数学の多項式の展開の公式を丸暗記するのは効果的でないし、英語の発音の基礎もないままに英単語を覚えようとしても、非効率この上ないのである。

 こうした考え方に基づいてぼくは学習指導を行っているため、ぼくの仕事の大半は、目の前にいる学生が何を理解していないのかを探ることである。

 目の前の学生が理解していないことが判明すれば、それを理解するために必要な事柄について順を追って説明し、自習時には特に力を入れて学習してするよう提案する。

 この指導方法で根気よく取り組むことで、ほとんどの学生は、試験で7割や8割ほどの得点率であれば達成してくれるようになる。

 どのような段取りが必要になるのかについては、学生ごとに異なる。しかし、その工程をめんどくさがっていては、結局のところ、彼らの成長を期待することは難しい。

 ぼくにとっては、目の前にいる学生にとって必要な段取りを見つけ出す作業は、とても楽しく感じられる仕事のひとつなのである。

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