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まいにちてがき絵日記 | No.395 | ある旅の記憶 鹿をみにいく夕方

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23才のとき、初めて湯治らしいことをした。
そこは山間の静かな湯治場で、刺激的なものはない。
毎日のささやかな日課が娯楽になる。
なかでも、夕飯前に鹿をみにいく散歩の時間は結構胸が弾む。
といっても飼われている鹿などではなく、決まった時間に食事をしに現れる野生の鹿を見にいくのである。


そこへ行くためには2パターンあって、階段を登って薬師堂を抜けるルートか共同浴場の横の坂を登って旅館街を歩くルートか。行きも帰りも同じってのはつまらないのでいつもぐるりと回るように散歩する。鹿は同じ時間にいつもいる。毎日いるし、毎回いる。この前行ったときは頭数が増えていた。日課は同じことを毎日やるからこそ毎日が違うことを実感できる。鹿だって同じ時間にいたとしても毎日同じようには現れないし、天気が違えば景色も変わってみえる。

湯治をしようも思ったのは別にどこか治したいところがあったわけでもなく、ただ直感に従っただけだった。けれど、今考えてみれば、それは身体への興味の現れだったのかもしれない。
身体と心は互いに関係しあっている。身体を癒すだけではなくて、一瞬立ち止まって自分の身体と向き合うことで心に栄養を与えるという湯治をみんなもやってみたらいいのにと思うことがある。

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まいにちてがき絵日記◼️ほんともうそも時間も場所もなんでもあり。とにかく1日1ページ。ありふれた道具で描く平凡な生活のひとコマ◼️

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