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京都、至福の夜。

桜が咲き乱れる直前の3月末に京都を訪れた。

日中は市内の飲食店や神社を巡ったり、お店の方に早咲きの桜スポットを教えてもらったりしてアクティブに活動した。

夕暮れ時にホテルでチェックインを済ませ、ひと休みもそこそこにウェルカムドリンクを渇いた身体に流し込み、いざ夜の京都へ。

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その夜のメインイベントは、『磔磔』という老舗ライブハウスの50周年を記念して行われる音楽ライブと決めていた。

ライブ前に、近くにある『スプリングバレーブルワリー京都』へフラッと入り、美味しいビールと腹ごしらえを済ませ、程よく酔ったところで準備完了。

さあ『磔磔』へ出発!と息巻いて歩き始めたが、途中で逆方向へ進んでいることに気づき少し酔いが覚めた。(早めに気づいた自分を褒め称えたい。)

無事に会場へ到着し、今のうちにと記念撮影。

『磔磔』の建物自体は大正時代のものだそう

出演者は、奇妙礼太郎さんと荒谷翔大さん。

お二人の音楽は以前からよく聴いていて、特に荒谷さんに関しては、その歌声を聴けることを待ち侘びていた。

彼が昨年末にyonawoを脱退し、もうyonawoの音楽は更新されないと思うと寂しい気持ちになったものが、またこうしてソロアーティスト・荒谷翔大の活動を続けてくれるのはとても嬉しい。

そこに天才・奇妙礼太郎が掛け合わされるのだから、これは貴重。

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まずは荒谷さんの弾き語りソロから始まった。

yonawo時代の曲もギターソロになると普段と印象が異なり、ゆったりとしたグルーヴがじんわり染み渡ってくるようだった。

そして当時はライブ会場やインスタライブでのみ披露していたオリジナル曲を、初めて生で聴くことができ、その歌声の美しさに思わず涙腺が緩みそうになった。

薄暗がりの老舗木造ライブハウスで、ほろ酔いになりながら聴く彼の音楽は最高のひと言に尽きる。

少々の休憩を挟み、奇妙さんの弾き語りソロに移った。

彼の歌声を直接聴くのはこれが初めてで、どんな雰囲気なのか楽しみにしていた。

まず感じたのは、音源よりもずっと声の幅が広いということ。

高らかに歌い上げるときはピンっと空気が一瞬張る感覚がしたし、聴衆の耳を一気に集めるような囁き声はとても優しさに満ちていた。

それでいてトークは小気味よく、「たべっ子どうぶつ」の自作曲を口ずさむのだから、軽妙洒脱なことこの上ない。

最後にお二人のセッションが数曲あって閉幕。

これまでで最も感動したライブ体験だった。

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『磔磔』を出た後、『bar K家 本館』へ。

電話を一報入れておいたことが幸いして、満席の店内に無事席を確保できた。

カクテルに力を注いでいることがメニューから窺い知ることができ、クラシカルなカクテルにも独自のひと工夫が凝らされていた。

特に、アードベッグ5年を惜しみなく様々なカクテルの材料やおつまみに使用していたことには驚いたし、とても贅沢な体験だったなと思う。

古民家をリノベーションした趣たっぷりのお店

カクテル以外にも、陳列棚に鎮座するオクトモアを見つけたのでそれもロックで飲んで、それはもう幸せな時間だった。

終バスの時間が過ぎてしまったので、配車サービスを活用してホテルへ戻る。

お金をたくさん使った分、至福の夜を過ごすことができた。

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【おまけ】

先日、記念すべき荒谷翔大 1st Single『涙』がリリースされた。

文学性と日常性とが同居した、歌声も含めてこの空気感が本当に良い。

人気が高まる一方だったyonawoという大きな船を突然降り、自らの表現を突き詰めていく彼の姿は、同世代とは思えぬほど格好良い。

yonawoというバンド、荒谷翔大という人間。

その存在自体が儚く美しい。

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