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白髪染め液 in 浴槽

昔から白髪が多くて困る。

若白髪と言える年齢でも、若さを凌駕する白髪の量が見た目をおじさんに仕上げてしまう。この白髪の量問題は、年々過激さを増してきていて、頭の両サイド(ツーブロックエリア)はもう黒の勢力は感じられず、白銀の世界に動物の足跡のように黒い斑点があるようなレベルになってしまった。

あらがう術は白髪染めのみになり、人生で未だ髪を染めたことがない自分が初めて触れたカラーが白髪染め。まさかあの頃の黒さ取り戻す方向にカラー剤を使うとは思わなかった。

栄光を取り戻そう。

白髪染めを手に取り、お風呂場へ向かう。服を脱ぎ裸の状態で、1剤と2剤が装填されたガス式のカラー剤を手に持つ。気分はさながらヒットマン。
「白髪を根絶やしにしてやる」と鏡に眼光鋭い自分が映る。股間も鋭くこちらを睨めつけている。これがポケモンだったら、バトル画面に入るくらい目が合っている。

クシやカラー剤の基本位置を決めて、塗り始めていく。もちろん髪の毛がどれだけ綺麗に出来たかの質も問題だが、お風呂場を汚すことがあってはならない。


染め終わり後、浴室からリビングに戻る。今か今かと待ち望んでいた奥さんと廊下ですれ違い、やっと私の番ねと目配せされたような気がした。

悲鳴が聞こえた…どうやらお風呂の中に液剤が飛んでいたらしい。茶色い輪染みのように浴槽の一部が染まり、拭いてもとれない最悪なケースになっていた。
白髪染めガンマンとしては仕事をしたはずだが、白髪の最後の悪あがきか、液剤が血しぶきのように跳ねてしまいダイイングメッセージを残していきやがった。

退去時に清算されるかと思うと震える。


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