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村上春樹作品におけるある種のばかばかしさについて

村上春樹の短編作品が結構好きです。エッセイも好きです。長編はあまり読まないかな。

世間様が村上春樹に抱くイメージは、敷居の高さ、その中でも特に仰々しい性行為の描写なのではないかとおおよ想像がつく。というか、長編作品に対しては僕もそのような印象しかない。

けれど短編集は意外と真逆で、かなりライトですよ。ちょうど、彼の描くファンタジーの世界と現実世界の間、それも限りなく後者に近いところ。あの時代の早稲田文学、って感じがします。

特に好きなエッセイが、「柿ピーと一夫多妻制について」。そうそう、生活ってこのくらい生々しくてばかばかしいものなんだよなぁとつくづく思う。

村上春樹は柿の種を食べるとき、それとピーナッツの元々の比率が保たれるよう食べる。しかし妻はそんな彼の習慣を無視してピーナッツを多く食べてしまうものだから、妻がいると元々の比率が崩れてしまう。それを彼が指摘すると彼女は「でもあなた、ピーナッツよりも柿の種の方が好きっていつも言っているじゃない」と打ち返す。そしてそのエッセイは、何も言い返せなくなった村上春樹の「やっぱり一夫多妻制は限界があるなぁ」という心情で結ばれる、ただそれだけです。

最近はその生々しいほどにばかばかしい生活が世の中に不足しているような気がする。本当に暇だとみんなろくなことを考えない。僕もそのうちの一人で、本当にろくなことを考えていない。

良かったら話しかけてください