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夕焼けが綺麗ですね

帰省を終えて東京へ帰るため、福岡空港に来た。年明けすぐとあってか、いつもより大分人が多い。「大分人おおいたじんが多い」ではなく「大分人だいぶんひとが多い」である。ただ、大分県民がいつもより多い可能性も無くはないのかもしれない。

僕が乗る羽田行きの夕方の便まではまだ時間があったから、暇つぶしに展望デッキに行ってみることにした。

外に出ると、風が冷たかった。でも思ったほど寒くはなかった。空気が澄んでいて気持ちがいい。雲の切れ間から金色の太陽の光が差し込んでいるのがとても綺麗だった。滑走路は遥か先まで続いていて、空港の広さを思い知らされた。

展望デッキのすぐ下の辺りに、JALの飛行機がとまっていた。近くで見るとすごく大きい。エンジンのチェックでもしているのか、ギュオーーーという猛烈な音を立てている。その音は、実家で使っている古い掃除機の吸引音によく似ていた。というより、飛行機のエンジン音みたいな凄まじい唸りをあげる古代の掃除機を僕の実家が未だに使っているということに、今になって驚いた。

近くでは大きく見えた飛行機も、飛び立ってしまうとあっという間に小さくなる。みんなそれを見上げているのが、なんだかおもしろかった。

時間が来たので館内に戻り、手荷物検査場へと向かった。長い列ができていたが、出発時刻が近い人用の優先レーンに入れたので割と早く抜けることができた。

売店で水を買い、3番搭乗口から飛行機に乗り込んだ。僕は一人で移動するときは、飛行機でも新幹線でも、基本的に太平洋側の窓際の座席に座るようにしている。なんとなくそっちの景色が好きだからだ。誰かと移動するときも、わがままを言ってその席をとるかもしれない。

17時45分になって飛行機が動き出した。福岡は東京に比べると日が沈むのが遅いが、それでもこの時間になるとかなり暗い。それに合わせて機内の照明も一段落とされる。

離陸とともに地上からぐんぐん離れて、福岡の街並みが見えてくる。街灯や車のライトがきらきらと輝いて見える。大通りほど明るく、人の少ない所ほど明かりが少ない。そうやって街の形が見えてくるのが面白い。

もうすっかり夜だなと思っているうちに、飛行機が雲に入って何も見えなくなってしまった。まだ夜景を見ていたかったので残念だった。

でも少しして雲の上に出ると、そこにはとても素敵な夕焼け空が残っていた。暗い雲海の水平線の先にオレンジ色の帯がぼんやりと伸びていて、その帯から上に向かって真っ暗な夜空まで優しいグラデーションをなしている。

と、頑張って言葉で説明してみたが、写真を撮ったのでそれを見てもらった方が早いと思う。

我ながらいい写真である。大満足だ。

写真をとってしばらくその美しい景色に見とれていると、隣に座っていた女性客が、私も写真をとっていいですか、と声をかけてきた。

はい、と答えるついでにチラッとその女性の顔を見たら、夕焼けと同じくらいに綺麗な人だった。

「夕焼けが綺麗ですね」という気色の悪いセリフは、大分後になって思いついた。

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