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急成長するGUの戦略と新規参入商品とは【ILY, Designability cast】

Hello, people.

代表辻原とPRの服部がお届けしているpodacast「ILY, Designability cast」の第2回目でお話した内容を記事にまとめました。今回も、辻原を話し手としてお送りします。

今回取り上げるブランドは、前回テーマにした「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングループの系列ブランド「GU」です。GUも、ユニクロと同様に身近なファスト・ファッションですね。実はGUはユニクロの約2倍のスピードで急成長を遂げており、その生産・販売体制には、興味深い点も多いのです。今回は、そのあたりを分析していきましょう。

「ユニクロ」「GU」の差別化と相乗効果

2006年にGUが生まれ、今では、ユニクロは「高品質・高機能性」、GUは「安心品質・低価格」と、明確な差別化が実現しています。ビックロ新宿東口店には、ユニクロ(1−3階)の上(7階)にGUが入っています。私はユニクロを見た後に、GUに立ち寄ることも多いのですが、GUの商品は「これがこの価格で?」と驚くほど低価格のものもあります。
もちろん、ユニクロも他のブランドに比べれば安いわけですが、GUに親しんでいる若年層は、ユニクロを高いブランドだと認識しているのではないでしょうか。GUが登場したことで、ユニクロは「安かろう悪かろう」というイメージを払拭できたのかもしれません。

商品については、ユニクロが「ライフウエア」をコンセプトに、ベーシックファッションを提供している一方で、GUは、「ファッションをもっと自由に」をコンセプトに、トレンドファッションを打ち出しています。GUのターゲットはユニクロよりも若年層のため、デザインが少し奇抜だったりもしますね。このように、ユニクロとGUは、競合せずに棲み分けることで、ファーストリテイリングの2本の柱として存在できているといえます。

そういえば、2017年にGUにセルフレジが設置されたのは、革命でしたね。レジの行列が改善され、商品を買うときのストレスがなくなりました。今はユニクロにも同じセルフレジがありますが、先にGUに導入されたはずです。GUの方が、実験的な場なのかもしれませんね。

それにしても、GUはユニクロの約2倍のスピードで成長していて、すばらしいですね。ファーストリテイリングの売り上げは、トップが国内のユニクロ、二番目が海外のユニクロで、その次にGUが続いています。今や、ファーストリテイリングの全売り上げの約10%がGUですから。
原宿からフォーエバー21やGAPが撤退したように、ファストファッションの崩壊が見られる中、成長を続けるGUは稀有な存在だといえます。


ロゴ変更とブランド戦略

佐藤可士和さんマニアの私としては、2013年のGUのロゴ変更について語らずにはいられません。デザイナー視点で見ると、ロゴの変更からブランド戦略が透けて見える部分もあり、「佐藤さん、さすがだな」と。
まず、ユニクロのロゴと合わせて、スクエアロゴになったことに加え、小文字から大文字に変わりました。「GU」は「自由」という意味なのですよね。そのブランドコンセプトが明確に伝わるロゴになったと思います。
カラーは、TSUTAYA、IKEA、KALDIなどのロゴと類似の青と黄色。ビビッドでシンボリックなカラーリングです。かつてGUは、ユニクロに付随するブランドという立ち位置でしたが、新しいロゴには、単体で成立するぐらいの強いイメージがあります。「今後は独自の店舗を持っていくぞ」という戦略が、ロゴに反映されていると感じました。


また、ロゴ変更の前年に、きゃりーぱみゅぱみゅさんが新しいイメージキャラクターとして起用されたのは、とてもおもしろかったですね。CMソング「ファッションモンスター」は社会現象にもなりました。
それ以前のGUは、元AKB48の前田敦子さんを使い、ゆるふわ、ガーリーなイメージでした。当時のGUのロゴも、柔らかい感じでしたね。そこから、きゃりーぱみゅぱみゅさんを起用して、同時にロゴをカチッと固めたのは、とてもいいタイミングだったと思います。

2007年に第一号をオープンしてから、順調に成長しているGUですが、理想的な成長カーブを描き始めたのは、リブランディング後です。直線的な成長はよくありますが、カーブを描きながらの成長を遂げるには、テコ入れが必要。2013年のロゴ変更を機に、カーブする成長を描いているのは、注目すべき点です。
もちろん、佐藤さんの力だけではないと思いますが、成長をつくるきっかけになるというのは、すごいことだと思っています。

ユニークな生産・開発・販売体制

GUの生産の仕方についても、おもしろいですね。定番商品は東南アジアの工場で生産し、トレンドや季節に左右される流行商品は、中国の工場で生産しています。また、黒・白・グレーなどの定番カラーは東南アジアで、各年の流行カラーは中国で作っているのです。つまり、同じ商品でも、色によって原産国が異なるのですよね。

なぜ、工場の使い分けをしているかといいますと、GUの商品は安価なので、生産コストの調整が重要になります。ファッション業界では、AW(秋物・冬物)、SS(春物・夏物)と呼ばれる、それぞれの商品が一度にリリースされるタイミングがあり、その直前は工場が繁忙期となり、商品リリース後は閑散期となります。GUは、その閑散期に中国の工場で流行商品を生産しているので、コストが抑えられるわけですね。
ちなみに、GUの東南アジアの工場は、ハイブランドの商品も生産している工場です。GUは大量生産によるディスカウントを受け、一点あたりのコストを安くしていると聞いています。
こうした話を聞いてから、私はGUの商品を見る際に、「この色は今年の流行色なので、中国産かな」といった視点で見るようになりました。

GUは、商品開発もユニークで、まず販売価格を決めてから、商品開発をするそうです。最近のヒット商品である「マシュマロパンプス」は、1990円からの低価格設定で、1年間で約170万足を売り上げています。
また、販売方針として、値下げをして最後の一点まで売り切るのもGUの特徴です。アパレル業界は、商品の売れ残りが多いことが課題で、日本では年間10億着が売れ残っているといわれています。そんな中、GUは売れ残りゼロを実現しています。

コスメブランドも誕生

先日、新コスメブランド「#4me by GU(フォーミーバイジーユー)」の誕生が発表されました。メイドインジャパンにこだわったコスメが、500円〜1500円という価格帯で販売されるようです。メイドインジャパンが「どうしてこの値段でできるのだろう」と不思議ですが、GUらしいですね。洋服と同時にコスメも買えるのは合理的で、流行やファッションにコスメが参入するのは、自然なことだなと感じます。
GUの店舗では、店員さんにコーディネートアドバイザーがいて、「こういうシーンに、こんなイメージで」と依頼すると、トータルコーディネートしてくれるそうです。小物やコスメも含めてコーディネートするという道筋は、わかりやすいですよね。

コスメは、2020年9月4日より、オンラインストアと大型店、一部の店舗で販売されるそうなので、ウォッチしてみてくださいね。GUの店舗は、価格設定や生産体制などの勉強の場としても、おもしろいのではないでしょうか。

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ILY, Designability castは「ビジネスにおけるデザインの可能性を探求する」というテーマのもと、さまざまなビジネスやデザインの話題をお送りしております。spotifyから聴くことができますのでよろしければ音声でもお楽しみください。

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私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。


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