見出し画像

(令和三年・2021/06/21〜06/30) 📚📚📚「宮崎正弘の国際情勢解題」 & etc., 💕🐧

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月30日(水曜日)   通巻第6967号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~<< 読書特集 >>
*************************************

奥本康大『正伝 出光佐三  ──日本を愛した経営者の真髄』(展転社) 
石平『中国共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社) 
樋泉克夫のコラム 【知道中国 2246回】   

    ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽    
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆    
   書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~終戦二日目に出光佐三は社員への訓辞を書いた
  「大東亜戦争は『消えた』のであり、勝負は決していない」

  ♪
奥本康大『正伝 出光佐三  ──日本を愛した経営者の真髄』(展転社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 『海賊と呼ばれた男』という映画を見た。五年ほど前だった。試写会だったか劇場だったかの記憶はない。
 映画は劇的なシーンを重ねて盛り上げているのだが、セットがみすぼらしくて、ずばり感動が薄かった。主演者の下手な演技もさりながら、評者(宮崎)が学生時代に、感動して二回読んだ出光佐三本人の『日本人にかえれ』の読後感とすごく違うのである。もっとも映画も原作本も主人公の名前は違ううえ、原作を読んでもいないので、映画の話はこれくらいで措く。
 本書を読んで、その違和感の原因が得心できた。
 出光佐三の先祖は宇佐神社宮司だった。大家族であり、苦学して神戸の高校にすすんで、丁稚奉公にでて社会を学んだ。
 若くして油をあつかう会社を立ち上げた。その無名の青年がひたすらがむしゃらに働く日常をじっと監察していた素封家は、その不屈の精神に惚れこみ、ポンと現在の価格に換算して一億円を佐三にあたえた。その恩人は日田翁。「返せとも言わないし、利息も不要。やりたいことをやってみればええが」。
 その頃、資源産業の現場を執拗に精密にみて廻っていた佐三は「あと五十年で石炭は廃れる」と予測した。三井三池炭鉱全盛、飛ぶ鳥を落とす勢いの頃である。
 型破りの行動力を伴って、官庁と軍を説き伏せ、或る時点から出光は海外へ商圏を急拡大した。昭和十二年には多額納税者入りし、国会議員にもなった。
 ところが海外への商圏拡大は仇となった。敗戦で抱え込んだ借金は、現在の物価価値に換算して500億円強だった。
不可抗力とはいえ、人生万事、波瀾万丈。

 なにも海賊的行為をしたわけではなく、日本精神、とりわけ教育勅語に則った社員教育をなし、ひとりの首も切らずに戦後はラジオ修理などもやりながら耐えた。家族のような絆で社員は結ばれていた。
 社員の入社式で佐三の訓辞は『卒業証書を捨てよ』だった。だから、本書の奥付で奥本氏は肩書き学校名のところを「卒業証書は捨てました」と書いているのだ。そう、この本の著者は出光OBである。
 石原慎太郎が出光佐三をモデルにした小説は『挑戦』である。
これも学生時代に読んでいるが、国際カルテルであるメジャーの徹底的な妨害にもめげずに、イランから自社タンカーで石油輸入に賭けた男の情熱、灼熱をテーマにした愛国的な作品だった。
 戦後の日の丸タンカーのことは年配者なら昨日のことのように覚えている。日章丸、英国の妨害、訴訟に怯まず、出光は堂々と民族資本としてイランから石油を輸入した。カルテル、メジャーの國際支配の壁をぶち破った快挙は、GHQ時代の閉塞感を吹き飛ばした。
 昭和天皇陛下は出光佐三を追悼して御製をおつくりになった

  国のため ひとよつらぬき 尽くしたる きみまた去りぬ さびしと思ふ

 出光佐三の希望により、分骨された骨を収納した墓は尊敬した鈴木大拙が眠る同じ寺、鎌倉東慶寺にある。
 本書は海賊という歪んだイメージを正した正伝である。
      ★
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆    
  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~🔴   周恩来はスパイマスターで卑劣漢だった 虚像と実像は違う 🔴
  毛沢東の酒池肉林は並外れていたが、同時に多くの同志を裏切っていた

     ♪
石平『中国共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 中国共産党は悪魔である、と開口一番、ただしい歴史認識に基づいた叙述がある。日中友好の幻想にまだ酔っている人には目から鱗がおちることになればよいが。。。
 毛沢東がいかなる陰謀と殺人と破壊工作で党の主導権を確立していったかは、これまでにも多くが語られた。その意味で、本書はおさらいである。
 ようするに「百周年の誕生日をむかえた中国共産党がどれほど罪深く、それほど外道なふるまいをする危険な勢力か」を徹底的に、達筆に、しかも簡潔に要点だけを抉った。
 「世界最大のならず者国家中国の軍事的脅威と浸透工作によって、我が日本が脅かされている今こそ、中共の悪を歴史的に明らかにし、マフィア同然の反日反社勢力の罪悪と危険性にあたいする日本人の認識を深める」使命があると著者は執筆動機を語る。
 なぜか。
 日本の一流(?)とかの学者、ジャーナリスト、学究らは中国共産党の革命史観にそって賛美するものしか書いていないし、天安門事件前までの中国史たるや、共産党代理人が書いた書籍しか市場に流通していなかった。
そのでっち上げ史観に日本のインテリが影響を受けている実態はじつに情けないではないか。
 ウィグル族の弾圧を欧米はジェノサイドと認定し非難している。
ところが、日本は与党内の親中議員と公明党によって反論が渦巻き、決議さえ出来ずにいる。なにしろ与党幹事長を基軸に与野党を問わず親中派議員がぞろぞろと国会にいるからであり、新聞テレビで、まともに中国共産党の暗黒面を伝えるのは産経新聞しかないではないか。
経済制裁にさえ、日本の財界は加わらないで、むしろ対中投資を増やしている。この愚劣な幻想行為は、なにからおきているのか。
中国共産党のマインドコントールに嵌って贖罪意識を植え付けられ、日本が悪かった、日本が中国様に謝罪し、そのためには経済援助を惜しんではならないという善意の発想を基礎にしている。
この善意は、中国が展開した高等戦術、その洗脳工作から産まれた日本人の意識の破壊、つまり考える前提を破壊し、中国寄りに思考を組み変えることからおきているのである。
 中国的共産主義のおぞましさと残忍さの第一の例証は、かれらが権力を握る遙か以前から凄惨な内ゲバに明け暮れていたことである。その実態は匪賊と代わらず村を襲撃して地主や有力者の財産を取り上げ、公開処刑して、村を暴力で支配し、それが解放区などと美化した。実態は大量虐殺でしかなかった。
 大量虐殺は権力を握った後の国内で更に大規模に繰り返され、つまりは皇帝毛沢東の独裁にさからう者は、たとえ「革命の同志」であっても、残忍な拷問の末に殺された。周恩来は、毛沢東の上司であったのに、いつのまにか家来となって生きのびた。狡猾な卑劣漢である、と著者は言う。
 ついで少数民族の虐殺と民族浄化であり、南モンゴルからチベット、そして現在はウィグル自治区でジェノサイドが続行している。
 一方で権力を握ると腐敗が始まり、汚職が横行し、つぎに色欲が爆発する。カネにあかせて妾を大量につくる。そのお手当のために汚職がエスカレートする。これも毛沢東以来の、というより孫文以来の伝統なのである。
 本書を読んだあとでも中国共産党を賛美する人がいたらお目にかかりたいものだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@    【知道中国 2246回】          
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港128)

  ▽
 ここで2244回に挙げておいた華資の分類に従って、それぞれの代表例をあげておくことにする。殖民地としての香港の摩訶不思議な一面が透けてみえるはずだ。
先ず「殖民地化に伴って成長した伝統華資」では、何東(ヘンリー・ホートン)一族を筆頭に挙げることに異存はないだろう。

香港が殖民地化して10数年が過ぎると、香港が秘めた経済的可能性に目を付けたヨーロッパ各地の血気盛んな若者が香港にやって来た。中にはイギリス軍人もいたが、彼らは香港に定着し、中国人女性と結婚する。かくて19世紀も半ばを過ぎる頃には、欧亜混血児が誕生するのであった。

 彼らは家の外では香港政庁付属の学校に入り英語で教育を受け、家庭では主に母親から広東語による儒教道徳教育を授かる。なかには父親の本国に渡り西洋上流社会に馴染んで文化を身に付ける者も現れた。
全く新しい二重の文化的背景を持つ若者は香港に戻り、身に付けた西欧と中国の両文化を生かし「四大洋行」などで買弁と呼ばれる代理商人を務める一方で、自らの商権を拡大しながら、政庁による殖民地行政の一角を担うのであった。

 その典型がイギリス人を父に、宝安県(現在の深?特区宝安区)生まれの女性を母に持つ何東(1862~1962年)である。
彼の資産形成の根幹は不動産ビジネスで、香港島と九龍の中心部で手にした広大な物件を原資に株式投資、東南アジア一帯の製糖ビジネスなどに乗り出す一方、広東澳門輪船公司、錦興紡織、黄埔船塢、電車公司、渣甸輪船公司、中印航運公司などを起業し、香港火険や広東保険公司で経営顧問を務めている。

 不動産ビジネスが産み出した莫大な資産を他に投資するという香港における資産形成の手法は、やはり何東から始まったと考えられる。

 財力は当然のように政治力を呼び寄せる。彼は西欧人上流階級しか住むことを許されなかった「半山区」と呼ばれる香港島の中腹の高級住宅地に豪壮な邸宅を構えた。政財界のみならず香港社会に隠然たる影響力を発揮し、さながらに皇帝の如く振る舞ったのである。

『DYNASTY 大王朝』(R・S・エレガント TBSブリタニカ 1981年)は香港で築いた莫大な財産を背景に、香港や中国はもちろん世界各国の中枢に張り巡らせた人脈を駆使し巨大ビジネスを展開する一族を描いた小説だが、何東一族の姿を彷彿とさせるに十分だ。

 元国民党軍の将軍で中日戦争当時に秦皇島要塞司令官を務めた何世礼は何東の息子。マカオに飛び出しカジノ・ビジネスを隆盛に導いた「カジノ王」で知られたスタンレー・ホー(1921~2020年)は、いわば何東一族の異端児でもある。因みにスタンレー・ホーの体内にはイギリス、ペルシャ、ユダヤ、中国の血が流れているといわれるだけに、長身で容貌は西欧人。あるいは何東がそうであるように、スタンレー・ホーもまた殖民地としての香港の歴史を体現しているとも言えるだろう。

 何東一族に匹敵する羅一族を起こしたのが、香港に近い広東省番禺生まれの羅文錦(1893~1959年)である。若くしてロンドンに留学し、1915年に実施された試験はイギリスでトップ。イギリス弁護士資格を取得した最初の香港出身者である。
香港に戻った後、何東一族の許で法律事務を担当し、何東の長女と結婚。何東一族と血縁関係で結ばれる。

 一族には弁護士が多いが、天星小輪、香港電車、中華電力、香港・九龍貨倉、香港商業広播電台、香港電視など殖民地時代の中核企業の経営に参画。一族の羅徳丞(ロー・タクシン/1935年生まれ)も弁護士で、一族は伝統的に殖民地行政に深く関わっていた。

 さらにアヘン売買で財を成し不動産ビジネスに転じた利希慎(1879~1928年)が起こした利一族、西洋薬販売から不動産ビジネスに進出した張祝珊(1882~1936年)を祖とする張一族、ハワイ華僑出身の郭一族など・・・
一族の歩みに香港の歴史が宿るのだ。

【知道中国 2247回】        
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港129)

 ▽
 次に「中国近代化の過程で生まれた民族資本で、国共内戦から共産党政権成立前後に掛けて上海などから香港に拠点を移した大陸由来華資」だが、その典型は栄一族だろう。

 一族を遡れば、19世紀末に上海で創業された伝統的金融業の広生銭荘に行き着く。創業者は無錫出身の栄熙泰と徳生と宗敬の二人の息子。20世紀に入り一族は製粉・紡績業に転じ、最盛期の1930年前後には12の製粉工場と9つの紡績工場を傘下に10数万の従業員を擁し、全国の生産量に占める割合は製粉では3分の1、紡績では5分の1。同時期、銀行業にも進出している。

 共産党政権成立を機に徳生とその息子の毅仁の系統は上海に残り、共産党政権を嫌った他は香港、台湾、アメリカ、ブラジル、ドイツ、タイなどに生活拠点を移す。まさに共産党政権が一族分散の遠心力となって働き、結果として一族のグローバル(全球)化を後押ししたわけだ。だが、?小平が踏み切った対外開放が今度は求心力として働き一族最結集への動きを促すわけだから、まさに「禍福は糾える縄の如し」である。

毅仁は共産党政権下でも民族資本家の代表として厚遇を受け、上海副市長(1957年)、中央政府入りし紡績工業部副部長(59年)などを歴任。文革では窮地に立たされたものの、しぶとく生き残り、79年には?小平の推挽で国務院直属の投資会社であるCITIC(中国国際信託投資公司)の董事長に就き、開放路線の先導役を果たした。栄家一族の内外に張り巡らされたヒトとカネのネットワークに着目したからこそ、?小平は彼を要職に抜擢したに違いない。93年には国家副主席に就任している。

このように?小平=栄毅仁という結びつきによって、共産党政権と栄家は共存共栄の関係を築くことになる。中国人社会における国境も時代も政治イデオロギーも超えた「人脈の妙」を垣間見ることが出来るはずだ。

 毅仁の息子である智健が香港にやって来たのは78年6月というから、共産党政権が正式に対外開放に踏み切る半年ほど前である。
どう考えても「計算し尽くされた絶妙のタイミング」としか言いようはない。従兄弟の智■・智譲(宗敬の息子)が経営する電子工場でマネージャーとして働き、86年には父親が董事長を務めるCITIC(香港)の経営に。以後、共産党政権と栄一族のネットワークを背景にM&Aを積極展開。
返還前後は特区政府行政長官候補に挙げられたこともある。

 栄一族に次ぐのは無錫出身の唐殿鎮を祖とする唐一族。無錫では栄一族と並び称せられる繊維業者だった。

1922年に染色工場を、35年には紡績工場を創業している。国共内戦時には一族当主であった唐君遠は共産党政権に協力し、工場経営を継続している。朝鮮戦争の際には航空機や大砲を寄付。文革ではさほどの被害を受けることなく、上海市政協副主席を務めた。

 唐君遠の子女は上海、香港、アメリカに。なかでもアメリカ留学後に共産党政権下の上海に戻ることなく香港に定着した翔千は叔父が香港で創業した染色・アパレル関連企業を経て上海出身者と73年に半島針廠と南聯実業を創業し、父親に連なる江沢民の要請に応じ深せん・東莞・上海・新疆などに進出し、「愛国商人」として中国ビジネスを有利に進めた。

 香港には唐君遠の従兄に当る炳源の一族がいる。炳源は父親が創業した紡績・製糸に加え米・粉・油など食品関連企業を引き継いだが、蒋介石政権の経済政策に不満を持ち拠点を香港に移し、1949年に南海紡織廠を創業し、戦後の混乱期に香港産繊維製品の欧米市場売り込みに貢献した第一世代の「紡織王」と呼ばれる。炳源の後継である驥千もまた「愛国商人」で知られた。
 共産党嫌いの「愛国商人」が群がる不思議な街・・・
それもまた香港なればこそ。
   ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎   



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月25日(金曜日)参   通巻第6966号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  (休刊予告)小誌は明日(6月26日)から30日までが休刊です! 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~世界60ヶ国が連帯し「北京五輪ボイコット」を呼びかけ
  豪・英でも北京五輪開催阻止へ政治的工作を開始か
*************************************

 6月23日、スイスのローザンヌにあるIOC(國際オリンピック委員会)本部ビルの前に、世界中から北京五輪ボイコットを呼びかける人々が集まった。
 「世界ウイグル会議」を筆頭に南モンゴル、チベット、香港、そして台湾から集合した活動家らは、IOCに対して、非人道的な国家で国際的なイベントを開催することは、許されないと訴えた。

 近く國際連帯を求め、世界60ヶ国で反対運動を組織化し、北京五輪ボイコット運動を一気に盛り上げる予定だと代表たちが語った。
 中国の新疆ウイグル自治区におけるイスラム系少数民族の強制収容や香港での民主派弾圧などに対して世界ウイグル会議(WUC)や国際チベットネットワーク(International Tibet Network)など約180の団体は世界の首脳や五輪関係団体に「五輪が悪用され、中国政府によるおぞましい人権侵害や弾圧がエスカレートする」とする公開書簡を発表している。

 この国際的な訴えと公開書簡に対して、二月にIOCは「人権などをめぐるこうした懸念については「中国政府および現地当局に対し、過去にもまた現在も指摘を続けている」と釈明している。
 
英国とオーストラリアは北京冬季五輪をボイコットする可能性を示した。
 ラーブ英国外相は「スポーツと外交・政治は分離しなければならないと考えるが、それが不可能な場合もある」と答え、北京五輪「不参加」の可能性を示唆した。
 豪でも動きは表面化している。
 豪国会議員らは、「1936年のヒトラーのナチス政権下で開催されたベルリン五輪との類似性」を理由に、同国選手に北京冬季五輪のボイコットを呼びかけている。
 米国でも議会人がボイコットの声を挙げている。日本の国会?
     ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽    
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@   【知道中国 2245回】           
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港127)

   △
 やはり香港社会を動かしてきたのは、不動産ビジネスを展開する華資である。
彼らは互いに競い合う一方で、大枠では各種ビジネスを住み分ける。そうして香港全体が必要とする商品とサービスの価格と市場を有効裡に操作しているのである。

不動産、電力、ガス、バス、フェリーのサービス、スーパーマーケットに並ぶ品々とその価格は華資が定め、そこから得られる利益は華資の財布に入ってしまう。かくて土地が巨大ビジネスの原資となり、華資は雪だるま式に資産を増やしてきたのだ。

これが香港の実態であり、1997年6月30日午後12時59分59秒が過ぎ時計の針が7月1日午前零時を指した後、江沢民国家主席(当時)がイギリス殖民地から中華人民共和国特別行政区への「回帰」を内外に向かって高らかに宣言しようとも変わることはなかった。

 イギリスの殖民地なってから現在に至るまで、基本的に香港には私有地はありえない。政府が競売に付す土地の使用権を売買する。形式的には誰にでも入札の機会は与えられているが、落札するには莫大な資金を用意しなければならないことから、事実上、応札可能家族(=業者)は限られている。上記の華資(特に3と4が中心)とその周辺の新旧20家族ほど──総計で30にも満たない華資に限られてしまうのである。
 
 彼ら一握りの華資が政府払い下げの「地産」を抑え、「地産」をテコに香港の「覇権」を握る。
これが地産覇権のカラクリと言うことになる。まさに19世紀末から20世紀前半の間、官僚と商人が手を組んで金儲けに猛威を振るい、中国に腐敗と貧困と弱体化をもたらした大きな要因とされる「官商勾結」の構図、現代では「権貴体制」と呼ばれる権力と財力とが奇妙に合体したそれだ。

 判り易くいえば「越後屋、ソチも相当のワルよのう」「いえいえ殿サマ、滅相もございません」「うふ、うふ、うふふふふ・・・ブハッ」のアレである。ここで東映京都太秦撮影所製時代劇風にキャステイングするなら、テッパンは殿サマは山形勲で越後屋は上田吉次郎だろう。
殿サマは進藤英太郎でもいいが進藤と上田ではアクが強すぎで、双方の演技が殺し合いしかねない。二本柳寛の殿サマに進藤の越後屋も捨て難い。

 閑話休題。このような華資は骨の髄から「強権貪権不知足(強権強欲、足るを知らず)」である。そこで彼らは不動産開発で手にした莫大な資金を、金融・流通・港湾・輸送・製造・衛星・通信・IT・観光・メディア・農業・電気・ガスなど、儲かると踏んだビジネスに惜しげもなく注ぎ込む。富が富を生み、富は権力を引き寄せる。

 その勢いは公共事業にまで及ぶ。まさか将来、香港では空気までもが「官商勾結」における投機対象になるなどということはないだろうが・・・。
些か極端に表現するなら、一般の香港住民が支払わなければならないカネは、回りまわって香港の越後屋の懐に還流されてしまう仕組みである。

 確かにイギリス殖民地時代も「官商勾結」の構図は見られたが、それが野放図に巨大化するのは香港返還が具体的政治日程に上り始めた80年代後半以降のことと敢えて指摘しておきたい。
その要因を香港返還に関する中英協議の欠陥に求める声もあるが、その当否は扨て置き、香港を手中に納めた30に満たない家族(華資)は、かくて北京の権力中枢との『蜜月関係』の維持に腐心するようになる。

 やや強引に表現するなら、殖民地も共産主義もへったくれもない。やはり魚心あれば水心である。
返還前に内外に向けて?小平がブチ上げた「香港の繁栄の維持」とは、香港の越後屋と中南海の殿サマのための掛け声でしかなかった。
 1970年初頭からの「香港の黄金時代」が越後屋を育んだのではなかったか。

   ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)台湾のワクチン入手を中共が妨害するのでコロナ対策に困難きたしているとニュースが伝えますが、妨害の中身、方法、内容なし 実態 知りたい。教えて頂けませんでしょうか?
 ( SH生 北海道 )

(編集部から)どなたか、ご存じの読者がおられたら御教示ください。

  ♪
(読者の声2)朝日新聞よりも赤いといわれる北海道新聞の女性記者、旭川医科大学に無断侵入で逮捕。朝日はじめ左よりの「識者」が擁護するも会議室の扉の外で録音までしていたという。
 新聞社はいつから犯罪者・スパイ養成機関になったのか(戦前からですが)。報道で実名も判明、早稲田出身の新卒記者に無謀な取材をさせた新聞社の罪は重い。
宮内庁は結婚問題も解決できないのに今度は陛下が感染拡大懸念を「拝察」発言。天皇陛下訪中から昭和天皇独白録、習近平との会談ねじ込み、女系天皇問題と政治がらみが多すぎる。
 いま読んでいる「明治大正見聞史(生方敏郎)初版大正15年」が面白い。明治15年(1882)、群馬県沼田生まれ。39年早稲田大学英文科卒業。朝日新聞社に
入社し、のち『早稲田文学』の編集に携わる。幕末明治初期の外交文書の編集にかかわり、当時の日本外交の滑稽さを指摘するとともに、国際間の問題も
「無教育で洗練されていない、考えの狭隘な、短気な、不躾な私たちの故郷の人々と似たり寄ったりの程度に私には見える」。明治三十年頃の論調「英獅露鷲虎視眈々として我が後を窺ふ」というような言葉が随分多く見受けられた、と当時の雰囲気を伝える。学校教育の初期は開巻第一に「神は天地の主宰にして、人は万物の霊なり」などとあった。それが急に平易になり、ハト、ハナ、トリとなったので、これも地方民の間にずいぶん評判が悪かった、とある。
 田舎の人はことごとく反明治新政府、神棚には東照大権現、子供のちゃんばら・戦争ごっことなれば敵は平家であり薩長である。それが日清戦争で
一変する。大国と恐れていた清が連戦連敗、次第に蔑視するようになる心理、三国干渉では「私たち小学生徒でも先生やお父さんと一緒になって、泣くほどまでに遼東還附を口惜しがった。どこのお母さんや娘さんも皆大いに口惜しがったものだ」と当時の空気を伝える。戦争が終わり大陸から兵隊が戻るや今度は赤痢の大流行。氷水屋も川遊びも禁じられ西瓜は畑で腐るだけ。食物にも飲み物にも祭りにも何にも、一郡中嘆きの声ばかりに満ちて、快楽というものは一つもなかった、とコロナ禍の現代とそっくり。
 乃木大将の自刃について、東京の某新聞社内部の様子が描かれる。乃木家に電話し下女に確認する。
 「下女が電話口へ出て本当です、と言うんだ。奥様もやはり一緒だそうだ」「何が一緒だ」 とOが口を出した。
「一緒に自殺したというんでしょう」「では心中だな」 と小柄な社会記者Wは鋭い声でやったので、皆がどっと笑った。
乃木大将という観念と心中という言葉とがあまりに不釣合いだったからだ。
「だって、そうじゃねえか。男と女と一緒に自殺すりゃ、誰の場合だって立派に心中だ」 Wはきめつけるような調子で重ねてこう言った。
赤ら顔の軟派記者大酒呑みのB君は、「心中というにはいかにも艶がなさ過ぎらあ」 と呟いた。「共同自殺や」 と前歯のひどくとび出しているOという老記者が、その頃、岩野泡鳴と遠藤清子との、いわゆる共同生活から流行り出したところの共同という言葉を混ぜて、得意らしく叫んだ。
「乃木大将は馬鹿だな」
 と大声で、若い植字工が叫んだ。あまりに突然なのでこれはちょっと意外だったが、すぐその後から夕刊編輯主任のM君が、
「本当に馬鹿じゃわい。何も今夜あたり死なないたって、他の晩にしてくれりゃいいんだ。今夜は記事が十二頁にしても這入りきれないほどあり余っとるんじゃ」 といかにも残念そうに言った。外交部長のK君も、
「惜しいなあ。もっと種のない時に死んでくれりゃ、全く吾々はどの位助かるか知れないんだ。無駄なことをしたもんだな」
 新聞雑誌は他人の不幸で成り立っている部分があるとはいえ、あまりにもひどい。さらに乃木批判がつづきますが、そこに主筆のTさんが編集室にはいってきた。
 「諸君はさっきから、しきりに乃木さんを罵倒しているようだが、そういうことはこの際慎んだら、どうです。あのような現代の偉人に対して、ことにその訃報に接しながら、あまり不真面目な無駄口はいかにも聞き苦しい」 と言った。
 与党政治家の不祥事を喜び「アベ死ね」と呪詛していた某新聞社の体質はいまも変わらないのでしょうね。
  (PB生、千葉) 

  ♪
(読者の声3)日本李登輝友の会・東京多摩支部設立総会 記念講演会のご案内
 来る7月11日に日本李登輝友の会・東京多摩支部設立総会を開催する運びとなりました。記念講演は、日本李登輝友の会会長で元拓殖大学総長の渡辺利夫先生を講師に「日本と台湾の絆─後藤新平の事績を通じて」と題してお話しいただきます。この機会に台湾に心を寄せる皆様と、日台交流・親善を深めてまいりたいと思います。
 皆様方にはご多忙のことと存じますが、万障お繰り合わせの上ご出席賜りますよう謹んでご案内申し上げます。            

日 時:7月11日(日)13時30分(13時00分受付開始)
会 場:リオンホールB 東京都国分寺市本町3-1-1 cocobunjiプラザ 5階 
    交通:JR中央線国分寺駅 北口通路東側のエスカレーターで
問合せ:042-325-6330(代表)
第1部 東京多摩支部設立総会 13時30分(会員・当日入会の方のみご参加)
第2部 東京多摩支部設立記念講演会 14時30分~16時30分
* Formosa Verde(緑の台湾)生演奏。作曲/Piano 竹内直子、Bass 澤田将弘
講師  日本李登輝友の会会長 渡辺利夫
演題  日本と台湾の絆─後藤新平の事績を通じて
 台湾総督府の民政長官となった後藤新平は、非凡かつ機略に富む児玉源太郎総督の厚い信頼を得、アヘン漸禁政策、衛生事業をはじめ、南北縦貫鉄道敷設などの難事業を次々と展開した。その8年余に及ぶ台湾時代の後藤の業績を学び、今後の台湾と日本の関係のあり方について考えます。
参加費:一般、会員は2000円、学生は500円
(7月8日まで、事前登録で各500円割引 → Webフォーム↓
forms.gle/3xdHLSiE1UoiRaCH6
[連絡照会先]主催者:日本李登輝友の会・東京多摩支部設立準備会
・準備会委員長 坂口隆裕 Tel/Fax 042-324-7801    
*参加者は平熱の方のみといたします。ワクチン接種済の方も必ずマスク着用をお願いします。

   ♪
(読者の声4)承久の変で挙兵が行なわれた城南離宮ゆかりの城南宮の鳥羽重宏宮司と、文化史・芸術史の第一人者でもある田中英道東北大学名誉教授(当会代表理事)の講演は、ここでしか聞けない話ですので、研究者以外の方もぜひ御気軽に御参加下さい。
(10時から有志で、後鳥羽天皇(上皇)をお祀りする水無瀬神宮に正式参拝)
   記
日本国史学会 承久の変800年シンポジウム
https://www.facebook.com/events/2835428973434878
【日時】 令和3年6月26日(土)14:00~17:00(開場13時30分)
【講師】 鳥羽重宏(城南宮宮司)「後鳥羽上皇と城南離宮 ──承久の挙兵から鳥羽伏見の戦いまで」
   田中 英道(東北大学名誉教授/当会代表理事)「後鳥羽上皇をめぐる文化と芸術」
    (講演後、質疑応答を含めてパネルディスカッション)
【会場】 大阪観光大学 5号館大講義室(JR「日根野」駅から徒歩)
    https://www.tourism.ac.jp/concept/access
【資料代】 学会員2,000円 / 非学会員3,000円(大学生・大学院生は一律500 円、当日入会可能)
【主催】 日本国史学会 http://kokushigaku.com/
    ※ コロナ対策のため、参加者におかれましてはマスク着用のうえ、体調確認と個人情報提供に御協力お願いします。以降の東京での連続講演会およびシンポジウムも毎月第2土曜日に開催予定。
   (日本国史学会 事務局長=久野潤)
       ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります!  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月25日(金曜日)弐   通巻第6965号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります! 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~<< 読書特集 >>
*************************************
マックス・フォン・シュラー
『アメリカはクーデターによって、社会主義国家になってしまった』(青林堂)
川島博之  『中国、朝鮮、ベトナム、日本 極東アジアの地政学』(育鵬社) 
門田隆将 v 竹田恒泰『なぜ女系天皇で日本が滅びるのか』(ビジネス社) 

    ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽    
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆    
  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 女系天皇は二千年の日本の国体を破壊する策謀でしかない
   継体天皇は五代溯り、光格天皇は四代溯って皇位継承という先人の智慧

   ♪
門田隆将vs竹田恒泰『なぜ女系天皇で日本が滅びるのか』(ビジネス社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 いまさら小誌読者に父系男系の皇統の重要な意味を説く必要はないだろう。
ところが、世の中を見渡すと軽佻浮薄、テレビ論調の受け売り、女性週刊誌の出鱈目な皇室論に振り回され、「男系」、「女帝」、「女系」の区別が分からないで、男女同権だから、女性天皇は国際的センスだとか、無知をさらけ出す議論が横行している。
 いったい何時から日本人はものを考えなくなったのか?
 もし女系天皇となったら、日本の終わりという危機意識はまるでない。
 そこで旧皇族の論客・竹田恒泰氏と、先鋭的ジャーナリストの門田氏が皇位継承問題を徹底的に話し合った。
 現在の議論は有識者会議のヒアリングが終わったこともあって、旧宮家復活論が目立つようになっているうえ、KK問題が浮上し女性宮家問題は吹き飛んだ。しかしまだ左翼メディアは天皇制打倒を叫んで陰謀をはかる勢力と組んで、女系天皇を囃し立てている。
 基軸にあるのは皇室典範の改正議論である。
 竹田氏は独自の試案を掲げる。持論は『養子案』で、現在保守陣営が議論している旧宮家復活とは趣を異にしているが、本書の狙いはそこにあるのではなく、なぜ男系が日本の歴史と文化にふさわしいのかの確認作業である。女系天皇が誕生すれば、日本は滅亡するしかないとする国体の危機意識が前面にある。
 事実ではなく制度を論じているのである。
 過去の女帝に関しては推古天皇、持統天皇らの実績もあるが、ちゃんと父系男系に後継天皇の座を確保した。皇統譜から消されたが、神功皇后も飯豊天皇も、「称制」(天皇空白期を代行)のあと男系の皇子に譲った。
 継体天皇は五代溯り、光格天皇は四代溯っての皇位継承だった。とくに継体天皇の場合は越前・三国の大王だったオホドを迎えに行って大伴金村、物部荒カイが説得して、ためらったオホド大王を樟葉宮に迎えて即位された。
 光格天皇はどうだったか。
 門田氏が言う。
「今の天皇は閑院宮家ですからね。後桃園天皇が崩御された時に、系譜としては東山天皇まで溯り、それで下がってきた形です。つまり桃園天皇、桜町天皇、中御門天皇、東山天皇と四代上がって、それから閑院宮直仁親王、閑院宮典仁親王、光格天皇と三代下がって来るわけです。新井白石が皇統の断絶を危惧して、三宮家だけでは将来は危ういということで新しい宮家の創設を建言し、1710年に閑院宮家が創設されました。そして70年後に閑院宮家から出た光格天皇が即位されて、実際に皇統の危機が救われる」(58p)
 竹田氏が補強する。
 「古代以前の天皇の息子たちは地方にどんどん散っていって、地方の豪族の娘さんと結婚しました。だから、およそ地方の豪族というだけで、天皇と血縁関係があると見られます。五代も溯るのは嘘だと(左翼や歴史学者が)主張されますが、天皇の御子が全国に散らばって行ったのは、応神天皇などまさにその時代ですから、御子が越前あたりの豪族となり、わずか五代にわたって勢力を担っていたのは、むしろ普通の話です」(60p)。
 こうして本書では継体天皇と光格天皇のケースが語られるが、ひとつかけている事例は顕宗天皇と仁賢天皇の皇統後継の歴史である。
 このケースも厳密にいうと三代溯っている。
 本書61pの略系図には、イチヘノオシハ皇子(履中天皇の皇子。本書では「磐坂市辺押磐皇子」)と顕宗天皇の間に飯豊天皇(女性)を加えるべきではないかと思う。そして、イチノヘノオシハも事実上即位されていたと説く歴史家がいる。
 というのも、第二十一代雄略天皇の皇子は白髪の清寧天皇ひとりで、清寧は皇子に恵まれず、崩御されると、雄略に殺されたイチヘノオシハの皇子兄弟が播磨に隠れ住んでいたのを見つけ出して迎えた。古事記ではふたりの皇子は馬喰に身を隠し、志染の石室に二十年隠れ住んでいたとある。名乗り出たときに地元の豪族は驚いて転げ落ちたとするのが古事記の名場面である。(実際に現場に行ってみたが、志染の石室は雑木林の密集地区で隠れるのは適切だが、湧き水だけの洞窟。おそらく住める場所ではないというのが評者(宮崎)の実地照査の印象)。
 それまでの中継ぎがイチヘノオシハの妹君だった飯豊天皇で、角刺宮(御所市)を仮皇居とされた。実際に宮内庁管理の御陵(忍海)へ行くと「飯豊天皇陵」と明示する看板がある。
 つまり顕宗天皇は履中天皇の孫ゆえに二代溯るが、間に飯豊天皇が実在されたのだから三代溯ることになる。もっと詳しく系図をたどると、第十六代仁?天皇の皇子三人(履中天皇、反正天皇、允恭天皇)のあと、第二十代が安康天皇。その安康がマヨワに殺害されるや、ワカタケル(雄略天皇)は兄二人を殺し、つぎにマヨワも殺害し、ライバルの履中天皇皇子イチヘノオシハをだまし討ちして、皇位を継承した。
 いずれにせよ、本書はあらためて皇位継承の正統な議論とは何かを覚醒させてくれる。
           ☆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆    
  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~三種の農業地帯が隣接する極東アジアの地政学的特殊性を追う
  中国人の心情は岳飛と秦檜で解ける? 「うーん、そうかな」。

  ♪
川島博之『中国、朝鮮、ベトナム、日本 極東アジアの地政学』(育鵬社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 地政学をもっと立体的に、地理と歴史と政治を掛け合わせて紐解くと、どういう世界観が産まれるか、実験的な書物とも言える。
 アジアは、米中対決の主戦場となった。それゆえに極東アジアの安全保障について、もっと多角的な考察が必要だろうと筆者は説き始める。
 なぜなら「海の向こうのアジア大陸に住む人々は、日本人とはかなり異なった歴史を経験しており、それに基づいた『国家観』、『戦争観』をもっている」からだ。
 川島氏は農業技術の専門家、アジア各国の農業調査のフィールドワークを長く体験されてきた。
 中国の農村ではテレビで毎日のようにやっている反日映画を通してしか日本を知らないが、じっさいに農家を訪問しても、大半があの映画は共産党のプロパガンダであることを認識しているという。
「あの映画をそのまま信じているのは、よほどの馬鹿者だ」と吐露する中国人もいた。
 評者(宮崎)の経験でも、かの南京へはいったおり(十数年前)、タクシーの運ちゃんがいきなり言ったのだ。
「お前ら日本人はここ(南京)で30万人殺しただろ?」。
「あ、あれは共産党の宣伝だよ」と言うと、たちまち納得顔になって、
「そうか、やはりな。共産党は一番悪いんだ」。(当時、タクシーに録音装置はなかった)。
そして次なる質問はこうだった。
「日本で、コレ(タクシーの運転手)やると、幾ら貰えるのかね」
 さて農業研究の目から水田をみると、「コメを作る地域の人口密度は、小麦を作る地域より高くなった。軍事面では、コメ作地帯は河川が多く用水路もあるために、それらが堀の役目を果たして護りやすいが、攻めにくい(中略)。村人の結束が固いから、コメ作地帯は村が独立国のような役割を果たすようになった」(20p)
 この原則は、日本でも縄文時代後期の集落から、その共通性を確認できる。稲作はすでに縄文時代から日本で始まっていたことは1970年代から次々と縄文遺跡から発掘された水田跡で考古学的に立証されている。
 遊牧民は牧草地をもとめて移動するから、家族中心の集団化し、規模は小さく、人口密度は低い。
 朝鮮半島は畑作地帯だが、日本統治時代からコメがつくられるようになった。
 ついで「靖康の乱」の由来、経過が詳しく述べられるが、この乱の具体的なことをほとんどの中国人は知らない。
ところが、岳飛と秦檜について、誰もが知っている。
 岳飛は悲劇の英雄として秦檜は悪徳政治家として、歴史の裁断がされているのは、外国と軍事的に負けたり妥協したりしたら、中国人は拒否反応を示す。リアリスティックに問題を解決しても、領土を譲渡したり賠償金をしはらうことは、あってはならないことで、だから王毅外相が戦狼外交と言われてもあれほど傲慢な態度を崩さず、突っ張るのである。
 となれば戦後の日本外交など、中国から見れば度し難いほどに劣悪のやり方と思えるだろう。
 杭州に岳飛廟があって広い公園だが、その脇に秦檜夫婦が後手に縛られて謝罪している像があり、川島氏が訪ねたときは唾をかける人が多いので柵で囲まれていたという。評者が見たのは十数年前だが、柵はなく、立ち小便の「名所」だった。
 さて、そのような攘夷感覚の中国がアジアで猛威をふるい始め、他方、アジアが頼りとする日本は軍事力も外交力もゼロ。
 だからアジアは米国に目を向ける。かつての支配者、英独仏にも従来とは異なったアプローチになるというわけだ。
      ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆    
  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~お茶の水大学、奈良女子大はトランスジェンダー男が入学する
米軍もLGBTの伝染病が拡がり、女性が参加したら軍事作戦は機能しなくなった

  ♪
マックス・フォン・シュラー
『アメリカはクーデターによって、社会主義国家になってしまった』(青林堂)
 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 凄い本である。なにしろアメリカ人でここまで自国の凋落ぶりを、歯に衣を着せずにずばずばものを言うのだからアメリカの没落は本物なのだろう。
 シュラー氏は在日が長く日本語が堪能な人である。
 アメリカは自由で民主的で闊達な国だった。「だった」と書くのは過去のことだからだ。
オバマという無能な大統領が出現してからというもの、アメリカは、政治、経済、教育、報道分野が世界破壊を企む極左に乗っ取られてしまった。トランプ前大統領のツィッターを凍結するなど、どこに自由なアメリカがあるのか?
 米軍に女性が多数算入してきたため、軍事作戦は機能しなくなっている。いずれ半数になると戦車も潜水艦も稼働しなくなるという。
 極左思想を奉じる政治家、官僚、ジャーナリスト、ハリウッド、そして企業経営者や軍人の一部さえが利権の臭いを嗅いで左翼と共闘している。これが「ディープ・ステート」だ。
 BLMの猖獗で、黒人の犯罪をみても警官は手をつけなくなり、治安も崩壊した。じつはBLMへの黒人参加者はごく少数だ。
 本書には以下のことが要領よくまとめられている。
 2020年大統領選は、不正によってバイデンが「勝った」。1月6日のキャピタルヒル占拠事件は意図的に仕組まれた暴動だった。極左がアメリカを牛耳ったのだ。弾圧される保守・愛国層は無力感に襲われているが、ディープ・ステートによって作られたのがコロナウイルス禍だ。
 性区別が撤廃されると女子トイレにトランスジェンダー男が自由に入ってこられる。日本も、こうしたアメリカ病がすぐに伝染する。
 お茶の水大学、奈良女子大はトランスジェンダー男が入学する
黒人優遇政策と白人排斥運動が激化し、子供たちに左翼思想を植え付ける場となったのが、アメリカの教育現場である。
この点では日本のほうがアメリカより「先進的」である。WGIPによって、日本人が日本に誇りを持てないという戦後の若い世代を大量につくってしまった。教科書は極左が乗っ取った。この後追いをアメリカがやっているわけだ。
アメリカはこのままいくと崩壊を迎えることになる。もし、アメリカが崩れ去ると日本はどうするのか。
左翼の圧力によって解体される警察、左翼思想が蔓延し始めたアメリカの士官学校。いずれアメリカ軍は中国軍に敗北するかもしれない。
日米関係は終焉を迎えることになり、中国から国を守るために、軍備を増強しなければならないだろう。
日本はアメリカの崩壊後に備えるべきであると著者は声高に訴える。
日本が友好関係を結ぶべき国はロシア、ベトナムなどであり、ここで踏ん張って、日本人本来の精神を取り戻すべきであると本書は訴えている。
 深刻な危機に警鐘を乱打する読み物となっている。

     ★☆☆☆☆★  ★☆☆☆☆★  ★☆☆☆☆★  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)
       ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります!  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月25日(金曜日) 通巻第6964号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~米国統幕議長「中国軍の台湾侵略は1~2年以内は無理だろう」
   米国連邦議会下院「軍事委員会」で証言
*************************************

 6月23日、米国連邦議会下院「軍事委員会」で証言に立ったマーク・ミリー統幕議長は、「向こう1年から二年以内に中国軍の台湾侵攻はないだろう」と語った。理由は「状況は複雑だが、現在の台湾軍の能力を勘案して予測していることだ」と述べた。

 すでにインド太平洋前司令官のフィリップ・デービットソンは「六年以内の可能性が高い」とする証言があり、現司令官のジョンア・キイリノも「同意見だ」としている。

 軍事専門家は、「インドの動きが中国軍を牽制している」とし、とりわけインドが「クワッド」に加わって反中姿勢を明確にしたため中国海軍の配置バランスの変更をもたらしている。「さらにアフガニスタンの米軍撤退後、中国軍はアフガン国境への軍事力シフトが必要になり、したがって台湾を短期間で攻撃できる能力は相対的に低下している。だからこそ陽動作戦で、台湾への領空侵犯をくりかえしているのだ」と分析する。

 留意すべきは米軍のインド太平洋戦略の変更で、PDI(PACIFIC DETERRENCE INITIATIVE)は同海域に於ける米軍の対中国抑止力の能力向上を目的としており、EDI(欧州抑止イニシアティブ)がロシアを対象としていることに似た概念である。

 中国の対米戦略はA2・AD(接近阻止、領域拒否)であり、第一列島線の内側を中国軍優位とする戦略だ。
 こうした情勢変化にともない急がれるのは日本の自衛隊の配備バランスの変更であり、四国、紀伊半島が空白という問題、またF35Bをヘリ搭載護衛艦から離発着できるようにために数千度の熱に耐える甲板への改修工事など、課題は山積みである。
    ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽    
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)夫婦別姓をめぐっての最高裁判決は、ごく常識的で健全だと思います。しかし、この伝統的ルールや、公序良俗を破壊しようと、このたぐいの訴訟を起こす人たち、というより組織の存在が問題です。
 この人たちは原発再稼動で規制委が10年もの年月をかけてようやく「安全」と太鼓判を捺したのに、原発再稼動停止の仮処分を求め訴訟を起こす。慰安婦問題などでも「植村記者の記事を捏造」としたのは怪しからんと提訴する。国連人権委に毎年でかけて日本の悪口を叫んでいるのは異常としか言いようがないですが、このような非常識で、まともでない人たちをマスコミが持て囃すのでしょうか? 
   (HH生、新潟県)

(宮崎正弘のコメント)メディアは左翼分子が乗っ取っており、彼らと同等か、もしくはそれ以上に異常です。

  ♪
(読者の声2)7月の千田会は7月11日です。外交・安全保障研究家 鈴木くにこ先生講演会『オリンピックと日本人の心』です。
東京五輪2020の聖火は、3月25日に福島を出発して、全国46道府県を巡り7月9日に東京都に引き継がれる予定である。COVID-19で1年延期になった東京五輪2020だが、聖火リレーの最中も、この感染症は変異しながら、私達を脅かしている。
それでも、聖火は、人から人へ、希望、勇気、平和等々の思いを乗せて繋がれて行った。コロナで揺れる東京五輪だが、オリンピックの本当の意義は何なのか、オリンピックはどんな歴史の困難を乗り越えて来たのか、「人の心」に焦点を当てながら、聖火(聖なる火)をお迎えした東京で、そんなお話を皆様と共有できたら幸いである。
千田会 事務局 https://sendakai.wixsite.com/home
FAX 0866-92-3551、E-Mail morale_meeting@yahoo.co.jp
---------------------------------------------------------
 外交・安全保障研究家 鈴木くにこ先生講演会『オリンピックと日本人の心』
 東京五輪2020の聖火は、3月25日に福島を出発して、全国46道府県を巡り7月9日に東京都に引き継がれる予定である。COVID-19で1年延期になった東京五輪
2020だが、聖火リレーの最中も、この感染症は変異しながら、私達を脅かしている。それでも、聖火は、人から人へ、希望、勇気、平和等々の思いを乗せて繋がれて行った。コロナで揺れる東京五輪だが、オリンピックの本当の意義は何なのか、オリンピックはどんな歴史の困難を乗り越えて来たのか、「人の心」に焦点を当てながら、聖火(聖なる火)をお迎えした東京で、そんなお話を皆様と共有できたら幸いである。
【講師】鈴木くにこ先生 外交・安全保障研究家
    https://www.kunikosuzuki.com/
 学習院女子高等科時代、ロータリー青少年交換計画で渡仏、バカロレア取得。慶應義塾大学法学部政治学科を首席卒業。外務省入省。国際報道課及び在仏日本大使館勤務。
トゥルーズ第一大学政治学前期博士号(DEA)及びヨーロピアン大学経営学修士号(MBA)取得。慶應義塾大学法学研究科後期博士課程を単位取得退学。国会議員(中山太郎元外務大臣)秘書や東京大学特任助教授、NPO法人岡崎研究所主任研究員等を経て、現職。
著書は『オリンピックと日本人の心』(内外出版)、『歴代首相物語』(共著、新書館)、『日本の外交政策決定要因』(共著、PHP研究所)等。

とき   7月11日(日)14時30分~16時30分(開場:14時10分)
ところ  としま区民センター6階会議室601・602 豊島区東池袋1-20-10
交通:JR・東京メトロ・西武池袋・東武東上「池袋駅」東口32番出口より徒歩4分
参加費   事前申込:1500円、当日申込:2000円、事前申込の大学生:500円、高校生以下無料
申込先   7月10日21時迄にメール又はFAXで受付(当日受付も可)
E-mail:morale_meeting@yahoo.co.jp  
FAX:0866-92-3551
主催  千田会 https://sendakai.wixsite.com/home
発熱などの症状がある方は来場をご遠慮ください。予防的な観点を熟慮し、マスクの正しい着用、手指消毒・衛生的手洗いなど十分な対策を各自で行って下さい。

       ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります!  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月24日(木曜日)弐   通巻第6963号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~表現の自由よ、さようなら。全体主義よ、こんにちは
  香港リンゴ日報、最終巻は百万部を印刷
*************************************

 6月24日、香港の自由の最後の砦だった「リンゴ日報」は最終号を編集し、印刷、配送した。百万部を印刷し、同時に24日午后零時をもってネット版も閉じた。
 自由のために戦ってきたリンゴ日報は26年の歴史に幕を引いた。
 言論の自由は消えた。

 リンゴ日報本社の編集室には最終版の割り付け風景を撮影する世界各国のメディアが取材に殺到した。本社ビル周辺には香港市民数百があつまりスマホのライトを照らしながら、リンゴ日報の勇気を称えた。

 香港で残るメディアのうち『大公報』『文わい報』『東方日報』は中国共産党の機関紙のごとく、中立は『明報』、やや共産党に批判的なのは英語媒体の『サウスチャイナ・モーニングポスト』だけとなった。

 欧米メディアは拠点をシンガポール、ソウルなどへ移転した。とくにNYタイムズはソウルに拠点を移した。
日本のメディアで香港に支局があるのはNHKと日本経済新聞くらいで、あとは台北支局から出張取材している。

 英国のドミニク・ラーブ外相は批判の声を強め、政治秩序を保つなどとして、言論の自由を警察力を使って圧殺するのは深刻な脅威であると記者会見した。
台湾の頼清徳副総統も批判し、「国境なき記者団」も言論の自由を冒涜するものと香港政庁の措置に強い抗議姿勢をしめした。珍しく日本のメディアも批判的な姿勢だった。
    ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽    
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ハンガリー野党六党が次期選挙に統一会派。オルバン政権打倒へ
  復旦大学のブタペスト誘致に絶対反対の国民の声を背景に
*************************************

 ブタペスト市長はカラチョニ・ゲルゲィという。
ゲルゲィ市長はオルバン政権がすすめるブタペストへの中国復旦大学キャンパス誘致は「トロイの木馬だ」として、猛烈な反対運動の中心人物となった。

 復旦大学の欧州分校はブタペスト市内の一等地、50万平方にキャンパスを建設し、5000名の学生を募集し、と500名の教職員採用を予定していている。
 なぜなら民主化以降、EU加盟、シェンゲン協定移行にともない、ハンガリーからおよそ50万人が外国へ去ったことへ危機感があるからだ。過去数年で、とくに英国へ、ハンガリーの知識人らは職を求めて故郷を捨てた。

2021年6月3日、そのキャンパス予定地の周辺の道路を、ゲルゲィ市長は「香港自由通り」「ダライラマ通り」「ウィグルの烈士通り」などと改称し、多くの市民の共感を得た。同月7日には数万の市民が抗議デモを繰り広げたが、ハンガリー国会は6月15日に誘致賛成の決議をした。
ハンガリー国会は定数199名。このうち133名がオルバン率いる与党議員であり、決議可決は予測されていた。

しかし或るシンクタンクの世論調査では66%が誘致に反対。支持は27%の結果が出ているという。この民意を反映し、野党六党が強調して2022年に予定されている統一候補による選挙区調整を行い、オルバン政権の打倒を目指すとした。

 ハンガリーは旧東欧ソ連嫌悪なかでいち早く民主化し、複数政党制を導入、1999年にはNATOへ、2004年にはEUに加盟し、2007年にはシェンゲン協定にも加盟したが、シリア難民の通り道となったときはいち早く国境を締めた。

 オルバンはEUの支援が生ぬるいとして、プロジェクトを持ちかけてきた中国の話に飛び乗った。復旦大学キャンパス誘致ばかりか、ブルガリアとつなぐ鉄道プロジェクトにも前向きで、欧州が警戒する「借金の罠」に陥ろうとしている。
 オルバンは評判の悪い中国製ワクチンも大量供給を受け入れた。

 余談だが、註ハンガリー全権大使は大高正人氏で外交官一家。叔父の大高弘氏は、李香蘭こと山口淑子女史と結婚したので縁戚にあたる。
  
   ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります! 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~〜〜
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)ここへ来て原油価格が不気味に上昇し、ビットコインと対照的です。1バーレルが100ドルを超えると大手石油会社や米銀行が予測していますが、ガソリンはまた値上げになりそうですね。
 背景には産油国の陰謀説もありますが、如何ですか。
   (NB生、福岡市)

(宮崎正弘のコメント)業界の分析は「投資が減っているため将来の供給に影が射しているからだ」としています。自動車業界が目の色を変えてEV投資に切り替え、ガソリン使用の自動車は衰退するという予測があるため、EV路線への疑問が本格化しない限り、原油上昇基調はつづくように思われます。

   ♪
(読者の声2)たびたび話題のビットコイン、中国ではマイニング工場の電力ケーブルが政府によりカットされたとか。予想以上に大規模で驚き。これでPCのグラフィックボードが安くなるのではと期待する声もある。
https://i.imgur.com/RQnTxj4.jpg
 一方、お困りの国韓国では新型コロナワクチンの2回目接種分も1回目で打ち尽くし接種予約取り消しの事態に。米国のワクチン支援は台湾優先、もちろん日本も台湾やベトナムに支援はしても韓国分などない。国会では立憲民主党の森ゆうこ議員が北朝鮮へのワクチン支援を訴えてどこの国の議員なのかと批判が殺到した。北のお友達の辻元清美はこのところおとなしいですが立憲民主党が売国政党であることに変わりはない。
 韓国の新聞は文在寅大統領はG7のオブザーバー参加でG8になったと勝手に盛り上がっていましたが、写真ではジョンソンとバイデンに挟まれ、呼びつけられたのが正解。早速踏み絵として黒海で行われるウクライナとNATO・アメリカなどによる多国籍海上訓練にご招待。
https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20210623-00000010-cnippou-000-1-view.jpg
 参加国の順番はウクライナ・NATO・アメリカ・トルコ・グルジア・ブルガリア・ルーマニア・ギリシャ。イギリスの空母機動部隊は日本への遠征途中で一部が黒海に向かう。韓国は宗主国の中国が怖いし恐露病もある。
韓国の国防部と海軍は訓練招請があったことを認めた上で参加も参観もないとヘタれた。救いようのない国ですね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ecee393583da6462d1728d1f64133e31cbc8b159
   (PB生、千葉)
       ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります!  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月24日(木曜日)通巻第6962号  <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~米上院共和党、不正選挙の温床「連邦選挙法改悪」を阻止
   不在者投票、郵便投票が不正選挙結果をもたらしたのだ
*************************************

 6月22日、米国連邦議会上院は、民主党が提案してきた「人民のための選挙法案」(通称「連邦選挙法」)を共和党によるフィルバスターで阻止した。
 昨年11月の大統領選挙では各地で不正投票が行われ、トランプの敗北となったが、この結果を受け入れられないとするのが共和党の多数派。

とくに郵便投票による不正は、各地で指摘され、制度そのものは存続するにせよ、審査の厳格な規制が唱えられてきた。
すでに3月25日にはジョージア州議会が、不在者投票の際の身分証明書提示を義務づけ、郵便投票はやめるとした選挙法の改正を議決し、「選挙結果の信頼性を高める」としている。

この動きはフロリダ州、テキサス州、アリゾナ州、バージニア州に拡がっている。
他方、選挙における身分証明書の提示の簡素化などに動いているのはリベラルの牙城ニューヨーク州と隣接のニュージャージー州である。

フィルバスターは日本語で「議事妨害」と翻訳されているが、語源を辿るとオランダ語の「海賊行為」に行き着く。ともかく法案を葬るために、会期が切れるタイミングを見計らって延々と議会で演説を続ける行為で、歴史的に最長記録ストロム・サーモンド議員による24時間18分。

最近の例では2013年9月にテッド・クルーズがオバマケアに反対し、21時間以上にわたって演説を続け議事を葬った。
     ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります! 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@   【知道中国 2244回】         
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港126)

    ▽
 1970年代前半までの香港社会を牛耳っていたイギリス系資本を大別すると、
1)Jardine & Matheson(怡和洋行)、Swire & Son(太古洋行)、Hutchison(和記洋行)、Wheelock(会徳豊)など殖民地化に伴って成長したイギリス資本系商社の「四大洋行」
 2)HSBC(香港上海匯豊銀行)とStandard Chartered Bank(香港渣打銀行)を軸とする金融資本
3)19世紀にロンドンで創業され、1960年代に香港に参入し、60年代末にGilman(太平洋集団)、Dodwell Motors(天祥汽車)、Tung Tai Trading(東泰貿易)などを買収したThe Inchcape Pacific(英之傑太平洋集団)
4)イギリスのImperial & International Communications(帝国国際通訊)を母体とするCable & Wireless Public(香港電訊)
5)19世紀末に香港に移住したイラク系ユダヤ人で英国籍のElly Kadoorieが創業したSir Elly Kadoorie & Sons(嘉道理家族財団)

 これらイギリス系資本に揉み手で近づき、絡まり、凭れ、競合し、時に出し抜きながら香港経済を動かしていた漢族系の家族経営集団(香港、中国本土、台湾、東南アジア華人系。以下、「華資」とする)は、次の4種に分けられる。
1)殖民地化に伴って成長した伝統華資
2)中国近代化の過程で生まれた民族資本で、国共内戦から共産党政権成立前後に掛けて上海などから香港に拠点を移した大陸由来華資。同系統は中国本土、台湾、東南アジア、南北アメリカなどに血縁ネットワークを持つ
3)1960年代以降の香港経済拡大のなかで成長した新興華資
4)東南アジアで成長した後に、その機能の一部、あるいは海外事業本部機能を香港に移した東南亜華資

 これらの華資は規模や業種にかかわらず経営の根幹部分を一族が押さえている点で共通しているが、やはり最大の特徴は中核を不動産ビジネスが担い、そこから生み出される富が他の様々な分野に投資され、さらに大きな富を産みだし、その富が香港全体を動かすことになる。

いわば不動産(地産)が政治権力(覇権)を握ることから「地産覇権」とも呼ばれる社会システムが香港なのだ。不動産本位制野蛮強欲弱肉強食経済こそ、返還前後から叫ばれてきた「香港の繁栄」の本質なのである。

 1970年代前半は香港経済が謳歌してきた自由放任(レッセフェール)が地産覇権に取って代わられ、香港経済の主役の座がイギリス系資本から華資へと移る端緒の時代だった。これを言い換えるなら第25代総督(1971年~82年)のクロフォード・マレー・マクレホースが築き上げた「香港の黄金時代」は、皮肉にもイギリス系資本に黄昏が射しはじめた頃でもあったわけだ。

華資にとって飛躍の舞台となった1970年代前半を眺める前に、彼らが謳歌することになる地産覇権の姿を簡単に見ておきたい。
それというのも、地産覇権こそが返還を経て香港版国家安全法の現在までの香港の姿を理解するうえでカギとなると思うからである。

 華資は不動産ビジネスで手にした莫大な資金を他に投じ、第三者の介入を排除し、競争のない各種ビジネスの命脈を握る。
香港全体の市民が必要とする商品とサービスの価格と市場を有効裡に操作してしまう。不動産、電力、ガス、バス、フェリーのサービス、スーパーマーケットに並ぶ品々とその価格を定めるのは、とどのつまりは華資なのだ。
   ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎  

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)貴誌前々号「アフガニスタンから中国人はすぐに帰国せよ」と註カブール中国大使館が警告を発したとあります。米軍がいなくなれば、ガニ政権は内戦で崩壊し、タリバン政権が復活します。かれらの敵は中国になるというわけですね。
 ところで、爆弾テロの絶えないアフガニスタンですが、いったい誰がかれらに武器を提供しているのですか?
   (DH生、水戸)

(宮崎正弘のコメント)欧米情報筋が推定しているのは、パキスタンルートでしょう。なにしろパロチスタン地方では中国人へのテロ、誘拐が絶えませんし、爆薬はパキスタン軍の横流しではないかと言われています。
 パキスタンのペシャワールは世界に悪名高き武器密造の町(ゴルゴ13にも出てきます)。
カイバル峠を越えるとカブールはすぐで、実際に筆者もこのルートでアフガニスタン国境へ行ったことがありますが、カイバル峠にはパキスタン政府の統治が及んでおらず、プールつき数台の高級車をもち、ガードマンが警備する豪邸が建ち並んでいました。武器密輸で荒稼ぎしたからでしょう。
 パキスタンのクエッタからアフガニスタンのカンダハルへもルートがあり、このカンダハル一帯は米軍がもっとも苦労したタリバン支配地域。
またタジキスタンから河川を利用してアフガニスタンのマザーシャリフへ繋がるルートもあります。タジキスタンにはロシア軍と中国軍が駐屯しているので、警戒が厳しいから無理だろうと考えるヒョウロンカが多いのですが、発想をかえれば、軍の武器横流し、密輸マフィアの暗躍がある。マザーシャリフへはウズベキスタンからもルートがあります。マザーシャリフもアフガニスタン政府の統治が及んでいません。
 いずれにしても公式的にタリバンへ武器援助をしている国はありません。
 すべてはブラックマーケットで調達され、マフィアが搬入していると考えられます。
 中国のアフガニスタン引き上げは、こうした情報をパキスタンなどから入手しているからでしょうね。

  ♪
(読者の声2)貴誌前号の「ビットコイン暴落」について、です。
今回の急落は中国のビットコイン禁止徹底が材料です。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210621/mca2106212312022-n1.htm
一方、中米のエルサルバドルがビットコインを法定通貨とするようです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK159FS0V10C21A6000000/
エルサルバドルの法定通貨は米ドルですから、元々、通貨調整はできない国ゆえでしょう。日本の国会は空回りで有名ですが、このため、資金決済法の文言を書き換える必要があるとか。
とはいえ、イングランド銀行とFRBを(の株主)握る国際金融資本には許せない事態です。
ロシアも政府が管理できないビットコインの公務員保有を禁止しています。
https://coinpost.jp/?p=215615
 ロバート・キヨサキはビットコインをpeople's moneyといいましたが、たしかにその通りという印象です。サイバー攻撃を受けたアメリカのパイプラインがランサム(身代金)をビットコインで支払ったようです。
つまり、ビットコインはマネロンができるわけで、犯罪の温床になりやすい。またビットコインの価格チャートをみていると、チャート分析の勉強ができます。
いわゆるサポートラインやレジスタンスラインで下げ止まったりしています。今回の28600ドルも今年1月21日の安値とほぼ同値でこの辺りに、買い発注している人が多いようで出来高も増えています。
 話は代わって、コロナワクチンですが、私が勤務する企業でも企業接種で動いているそうです。日本はすごい同調圧力で困っています。諦めて接種するしかないか、ここで疑問です。
果たして、「ありがとうございます」といって、ワクチン接種するご老人は、このワクチンがたって6ヵ月間しか効果ないことをご存じなのでしょうか?
今接種すると12月に効果が切れるので効率悪くないでしょうか(笑)
   (R生、逗子)
       ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります!  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月23日(水曜日)弐   通巻第6961号 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ビットコイン、53%の暴落。背景は中国の取り締まり強化だが。。
  四川省政府、26の石炭鉱山に閉鎖命令。電力需要と気象対策
*************************************

 ビットコイン市場で未曽有の暴落がおきた。
 6月22日、ビットコイン価格は場中で29834ドル(終値は32309ドル)となり、最高値だった4月15日の63410ドルから53%もの暴落となって投資家は落胆した。

 暴落原因は第一に中国政府がデジタル人民元の普及に最大の障害と見て「敵対」し始めたからだ。
 なぜなら世界の投資家のあいだで「ビットコインとは『中国コイン』」と呼ばれて射いたからで、購買の80%近くが中国人によるものだった。

第二に気象対策で、火力発電に制限をくわえてきた中国は、とりわけ石炭による発電を減らすという方向性を示した。国際公約は『2060年にカーボンゼロ』だ。

第三はテスラの右顧左眄(支払いをビットコインで受け付けると言ったり、拒否したり)による動揺である。

 石炭による火力発電は中国のあらゆる場所に公害をもたらしているが、四川省政府は早速、省内にある26の炭鉱の閉鎖を命じた(と言っても中国では不法操業をつづける闇炭鉱はいくらもある)

 最大の理由は電力消費である。ビットコインは採掘に膨大な電力を必要としており、その電力消費は世界発電量の0・6%を占める。
     ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります! 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)オリンピックをまじかに控え、コロナ対策もいよいよ難しい局面に入ってきたようです。
その対応策で焦点の一つになっていることは、外食、なかでも酒類を伴う飲食を制限するかどうかのように見えます。素人ゆえの発想なので、及び腰の質問なのですが、ナゼ酒はいけないのでしょうか?
誰かの説明によると「酒を飲むと声が大きくなって、それだけ飛沫が多く飛ぶからだ」と聞きますが、其れならば大声を出さないように牽制する器具を開発すればいいのではないかと思います。
つまり、発声音の大きさをセンサーで感知し、一定以上の声の大きさを感知すると赤ランプが点滅する器具を開発するのです。その器具はハンドフリーのセンサーや豆電球が着いた簡単なもので、マスクをしなくてもいいようにネクタイのように首に下げたりします。
これを飲食店に来客用に具えておけば効果的な対策とならないものでしょうか?
(SSA生)

(宮崎正弘のコメント)このところ、レストランでもノンアルコールビールばかりで、つまらないことこの上なし。しかし、飲食店の三割が休・廃業となり、雇用がおよそ150万人失われます。
 補助金の支給は平均で四ヶ月遅れているとかで、小生の通っていた店で、いまも営業しているところは数える位ですね。回復には三年を要するでしょう。

  ♪
(読者の声2)いつぞや宮崎さんが「文春の三莫迦」と言っていた立花隆氏が、半藤一利氏のあとを追って鬼籍に入りました。立花さんは往時、文春ジャーナリズムのエースとして活躍され、田中角栄につづいて革マルvs中核派の死闘など、優れた作品があると思いますが。
   (DD生、千葉)

(宮崎正弘のコメント)批判したのは彼らの歴史観です。お二人とも会ったことはありますし、戦闘的左翼という印象はありませんね。歴史観が間違っているのです。
三十数年前の数年間ですが、『週刊文春』の下請け翻訳や通訳の手伝いに駆り出されたとき、社内でよく立花氏をみかけました。立花チームは、多くの記者を率いていて、氏はその情報のまとめ役でした。合掌。
       ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆ 



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月23日(水曜日)通巻第6960号  <前日発行> 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~<速報>
 中国駐アフガニスタン大使館が在留中国人に警告
   「一刻も早くアフガニスタンから撤退せよ」
*************************************

 カブールの中国大使館は、アフガニスタンに滞在するすべての中国人に警告を発し、「一刻も早くアフガニスタンから撤退せよ」としたことが分かった。『サウスチャイナ・モーニングポスト』(6月22日)が速報した。

 理由は明記されていないが、ウィグルにおける中国共産党のジェノサイドに対して、いよいよイスラム教徒たちの「報復」が始めると知覚したのだろう。

 ウィグルの若者のなかで、およそ一万人が中国共産の弾圧を逃れ、国外に去った。おもに「東トルキスタン独立運動」の活動家らで、シリア内戦では数千人がISに加わり戦闘の体験を積んできた。
シリア内戦が終結すると、いつの間にかシリアから去っていた。

 かれらはアフガニスタンに既に潜入しており、カザフ、キルギス国境、とくにパキスタンのカシミール国境にいると推定されており、これらを支援するイスラムのネットワークがある。

 中国は米軍ならびにNATOのアフガニスタンからの撤退を「一方的だ」と抗議しており、またアフガニスタンへ「平和維持軍」を派遣するとも発言していた。

 中国のアフガニスタンにおける利権はアイナク鉱山で、2000年前のアレキサンダー大王の時代から、豊かな鉱脈が知られ、操業は続いてきている。アフガニスタンには石炭、銅、金、鉄鉱石、鉛、ならびに宝石類としてエメラルド、ラピスラズリ、ガーネット、ルビーなどが採掘される。
 
 アイナク鉱山の開発を手がけているのは中国冶金科工集団(MCC)。30億ドルで、30年のリース契約を締結した。
このアイナクは主に銅を産出し、現場には中国人労働者のテント村がある。

 アイナク銅山は世界で2番目に埋蔵量の多い未開発銅山で銅の埋蔵量は推定600万トン。
ペンタゴンと米国の地質調査所による共同研究ではアフガニスタンに埋蔵されている鉱物資源はおよそ3兆ドルの価値があると推定されている。 
     ☆◎☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります! 
  ++++++++++++++++++++++++++++
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
  ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆ ☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪
(読者の声1)香港の自由は死んだ! <自由を、しからずんば死を> 
何もしない何も連帯しない、ひたすら支那の暴虐を黙認する日本政府よ!
これが自民・公明の<保守AHosh> まさに偽善と欺瞞のこいつらの支那傀儡性だ! 最低の国家になった。恥ずべき国家だ!
さらに一人の偉大な野党のフリードム・ファイター山尾志桜里議員も何者かの<謀略により>葬られたのか? 不可解な議員辞職
議員辞職すべきは自民・公明の支那傀儡トロイの馬議員だろが!
そして日本にフリードム・ファイターは近未来一人も誰もいなくなった。そして誰もいなくなった!いなくなるだろう! いるのは支那に媚びて支那利権誘導のための支那語流暢な通弁と女衒のみだ!
  (AO生、世田谷)

  ♪
(読者の声2)日本ではLGBTQのQ(queer=変態)が無かったことにされているという欺瞞。どうやら日本ではQが最も差別されているようです(苦笑)
   (EH生 横浜市) 
        ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆  



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月22日(火曜日)
通巻第6959号   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~かくて香港から「表現の自由」は消える
  リンゴ日報、26日に廃刊、資産凍結で給与支払えず
*************************************

 27年間、リンゴ日報は香港で自由のために戦った。
 共産党という悪魔を相手に怯まずに戦ったが、力尽きた。虐げられ、抑圧された人々にどれだけの勇気を与え、精神を鼓舞しただろうか。

 全体主義に従順に従って思考回路を閉ざし、独裁に協力する人々は何処かで、良心と、真実をもとめて考える努力を捨てたのだ。

 リンゴ日報創業者のジミー・ライ(黎智英)と、筆者は単独インタビューをしたことがあるが、彼の哲学はハイエクである。そして「自由な言論、透明性の高い情報がなければ市場は成り立たないのだ」と発言したことがまだ耳元に残る。

 哲学者のハンナ・アーレントは自身が体験した全体主義の衝撃について、「起こってはならないことが起こってしまった」とし、現実に「ナチは私たち自身のように人間である」。だが、「悪夢は、人間が何をなすことができるかということを、彼らが疑いなく証明した」
全体主義体制の悪魔は人々の知性を蝕み、知性を殺した。

 リンゴ日報は香港警察によって物理的に発行が不可能となり、実際に同社資産が凍結されたため、社員の給与支払いが滞り、取材、編集、校正、印刷、配送という一環システムが維持できるのは6月25日まで、と同社幹部は見通しを述べた。
 
 27年に亘って香港に存在しつづけ、「自由、民主、人権、法治」という基本的の原則、崇高な価値観を掲げて人々を鼓舞してきた自由の灯が消える。
         ☆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ♪
 香港の若者五名、釣りボートで脱出し台湾で保護されていた
  米国へわたり、政治亡命を申請
*************************************

 2020年7月だった。釣り具とスマホだけの身軽さでボートに集結した若者は五人いた。おたがいがよく知っている間柄ではなかった。
 抗議デモに対して香港警察の非人道的な弾圧、現場を歩いていただけでも出鱈目な拘束といい加減な裁判に、香港にはもはや自由はないと共通に認識した彼らは米国への亡命行を試みた。

 スマホのGPSだけを頼りに中国海域に迷い込んだときは「生きた心地がしなかった」とかたるのだが、どうやらボートは台湾へ漂着できた。

 六ヶ月の観察期間と、身元の取り調べ、そして米国との交渉がすすみ、2021年1月に五名は渡米した。ウォールストリートジャーナルが、このうちの一人と接触、インタビューに成功した(6月21日号)。

 現在もかれらは匿名で支援団体に匿われているとされ、米国当局に政治的保護と、亡命を申請している
      ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります! 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆ ☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 
 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪
(読者の声1)6月21日の日本経済新聞「社説」にはげんなりです。LGBT法案が見送られて残念という論調です。なにをトチ狂ったことを主張しているのでしょうかね、この経済紙は。
 ウィグル人権弾圧非難決議が国会で見送られてしまったことのほうがよほど深刻な事態ではないのですか。
 LGBTはすでに社会的には認知されているばかりか、テレビをみていたら、大きな顔をして「活躍」中じゃありませんか。それを少数派保護を拡大し、保障しろというのは、別の狙いがあるのです。
つまり国家破壊を助長する策謀の一環だと理解できます。
   (GH生、さいたま市)


(宮崎正弘のコメント)朝日新聞が全体主義大好きな論調ですが、イデオロギー的体臭が濃厚です。日経はグローバリズム第一主義ですので、アメリカでLGBTが社会に浸透しているのが先進的であり、それを見倣うのが日本という立場でしょ。
 その基調のどこにも日本的価値観、伝統的文化的なものを尊重する基本の思想がありませんね。

  ♪
(読者の声2)貴誌に三回連載の「『戦後支配の正体 1945~2020』から紐解く実態経済と経済学のカラクリ」(SAA氏)について、この本は私と宮崎さんの共著でもあり、簡単にコメントします。
 所謂ケンイズに代表される近代経済学は、セニョリッジ(通貨発行益)を誰が得るのかを意図的に曖昧して構築されていること、その理屈づけに会計学(学問というよりも方法論の体系)を悪用していること、が特徴です。
この壮大なる虚構に気づいた時に呆然とします。
これに気づかないで発言する経済学者や評論家の多いことは致し方ないでしょう。気づけば沈黙するしかありません。処方箋はどこにもないのですから。
   (渡邉惣樹、カナダ)

  ♪
(読者の声3)以下は産経新聞の記事です。「16日に閉会した通常国会で、新疆(しんきょう)ウイグル、内モンゴル両自治区などでの中国当局による人権侵害行為の即時停止を求める国会決議案は採択が見送られた。超党派の日本ウイグル国会議員連盟などと連携して、採択を働き掛けてきたチベット、ウイグル、南モンゴル、香港などの在日民族団体13団体による「インド太平洋人権問題連絡協議会」は「決議の成立を妨げた勢力に対しては、満腔(まんこう)の怒りをもって抗議する」との声明を発表した。
13日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明は、ウイグル自治区での人権侵害などに懸念を示した。中国における人権問題は、もはや世界的な関心事だ。
 続々と対中制裁を発動するG7各国と比べ、日本政府の動きは鈍い。そんな中、せめて立法府における非難決議を-という動きは、16日に閉会した第204通常国会では頓挫した」。
 いったい、日本の国会って何をやっているのでしょうか?
   (TY生、横浜)

   ♪
(読者の声4)貴誌6951号(6月17日付け)の「読者の声2」の粛清人(みしはせ)の質問に答えた宮崎先生のなかで、「ツングース系の漂流民とする合意があるようですし、蝦夷征伐の途次、阿倍野比羅夫が、これを退治」したとありました。
 この阿部比羅夫という人物は何者ですか?
   (HD生、新潟市)


(宮崎正弘のコメント)阿倍比羅夫は越後の豪族だったといわれます。或いは安倍比羅夫は「越国守」だったとする説もあり、大和朝廷の左大臣だった安倍内麻呂の死後、阿部宗家は退潮する一方で、越後で阿部比羅夫が急速に台頭し、武に優れて武勲著しく、蝦夷制圧に貢献したのです(手塚治虫の『火の鳥・太陽扁』は、この安倍比羅夫がモデルの由です)。
とくに斉明天皇四年(658)に百八十隻の水軍を率いて、秋田から淳代(ぬしろ)に攻め入って蝦夷を降伏させ、服属を誓った飽田蝦夷恩荷 (おが) に小乙上を授け,渟代と津軽2郡の郡領を設置し、さらには北海道南部の渡嶋 (おしま) の蝦夷を集め、大和へ連れ帰り、大歓迎の宴会も開催して撫柔したと『日本書紀』にあります。
この時期、事実上のまつりごとは斉明天皇を背後で動かしていた中大兄皇子(天智天皇)が中軸にあったというのが歴史学の定説です。
三回目の蝦夷遠征では佐渡と北海道を拠点としていた粛慎 (みしはせ) を討ち,熊二頭,ヒグマの皮 70枚を献じた。翌年にも再征に臨み、蝦夷 400人余を集めて饗応し、禄を与えた。粛慎を討つ際には陸奥と渡嶋の蝦夷を駆使した。用兵に優れた能力を発揮し、大船団は伏木港、七尾港にいったん集結し、阿賀野川にあった前衛の柵を超えて津軽へ向かったとされます。
天智天皇即位前年 (661) に安倍比羅夫は将軍に出世し、前将軍・阿曇比邏夫 (あずみのひらふ) らと百済救援のための物資、武器を運搬・搬入した。
わさびで有名なのは長野県安曇野。安曇比羅夫は、白村江の戦いで戦死した。安曇族は、その後、分散したが多くが水軍の拠点から信濃へ移住したとされ、安曇野市の穂高神社は安曇比羅夫命が主神です。ちなみに同神社の「御船祭り」は9月27日。阿曇比羅夫の命日です。
阿倍比羅夫は天智2 (663) 年には前将軍上毛野君稚子 (かみつけのきみわかこ) らとともに後将軍として2万 7000を率いて新羅を討ったのですが、白村江 (はくすきのえ) において予期せぬ敗戦となりました。
阿部比羅夫は斉明天皇の御代に大錦上,筑紫大宰帥の地位にあった。つまり北九州防衛の最高責任者に抜擢されたのであり、歴戦の兵として英雄視されていたことを意味します。
なお後の十世紀に現れた予言師・安倍晴明とは系統が異なり、晴明は大阪阿倍野生まれの由で阿部性を名乗ったとか。

  ♪
(読者の声5)讀賣新聞(6月21日)に、「中国ハイテク、EV参入続々」という記事が大きく載った。
 習近平国家主席は、CO2の排出量を減少させるEVの流れは変わらず、今後5年間で40%の成長率を保つ。米アップル社もEV参入が取り沙汰されているという。
 だが中国は、自然エネルギーの太陽光発電機で、世界中に大々的に売り出した。それが、今ではどうなったか、知る人ぞ知る。環境問題に無関心な国がどうして、太陽光や電気自動車に乗りだすのか。毛沢東は、焚書や郷紳を排して中国の伝統的な価値観を壊し、国民を盲目にした。
 その、毛沢東の子弟が国を動かしている。それよりも毛沢東回帰すらしている。社会・経営理論なき中国が主導するのは、目先の利益だけだ。それに伴う周辺環境をおろそかにしている。
 讀賣新聞は中国の広告費を貰い、企業の為に載せたのであろう。日本は、小池東京都知事のごとく、前のめりで踊らず、世界はどうあるべきかを冷静に見てほしいものです。
  (斎藤周吾)
      ◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆  



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月21日(月曜日)参   通巻第6958号   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~エルサレム「巡礼」は米国共和党指導者の「義務」?
  ニッキー・ヘーレイ(元国連大使)もイスラエルを訪問、激励
*************************************

 2024年の米国大統領選挙に臨むのはポンペオ(前国務長官)、ペンス(前副大統領)、そして茶会系のテッド・クルーズ(テキサス州選出上院議員)。
むろん、トランプ前大統領の再挑戦もあるだろうが、共和党内支持者の熱狂的なトランプ熱はすこし冷えた。

 エルサレム訪問は共和党候補にとって欠かせない儀式である。
以前も大統領選挙に挑んだジョン・マケイン、ミット・ロムニー候補らが、選挙キャンペーンを兼ねてイスラエル訪問を繰り返した。
米国メディアは国内のユダヤ人票向けにこうした大物政治家のエルサレム訪問を大きく伝える。

 6月18日、今度はニッキー・ヘーレイ(元国連大使、サウスカロライナ元州知事)がエルサレムを訪問し、被災者を慰問した。
へーレーは現地紙のインタビューに「ハマスが4500発のロケットを飛ばしたのだから、イスラエル軍が空爆したのは当然の国家の権利よ」と語った。

 じつは大統領選挙予定候補のなかで、すでにポンペオとクルーズ議員、リンゼイーグラハム議員らが、「11日戦争」直後にエルサレムを訪問しており、ニッキー・へーレーの訪問は四番目となる。
      ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@   【知道中国 2243回】             
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港125)

  ▽
 ある日、外を見てビックリ。窓の向こうの空一面が黒煙に覆われていたのである。1972年1月9日だから、あの電撃的なニクソン訪中の40日ほど前のことだった。

 イギリスが世界に誇った豪華客船クイーン・エリザベス号も寄る年波には勝てず、1969年には退役となる。その翌年、香港の海運王で知られた董浩海が率いる東方海運貨櫃航運公司に買い取られ香港へ。
当時、香港のマスコミでは洋上大学に生まれ変わると大々的に報じられていたが、改装中に原因不明の火災が発生。消火活動の不手際から一時は巨大な船体が炎に包まれ大火災に。それが黒煙の火元だったわけだ。

 その日は空一面が黒煙に覆われたままで薄暗く、昼との境目がないままに夜となったように記憶する。その後の数日、黒煙は香港の空に棚引いていた。はたして消火活動の不手際か。ヒョッとして、真面目に消火に取り組まなかった。いや「出来レース」だったのか。

 お世話になっていたKさんが構えていた尖沙咀・漢口道の写字楼(オフィス・ビル)でのことだった。いつものように暇潰しをしていると、突然火災報知器が作動し、警報が鳴った。同じ階の2つ、3つ離れた事務所からの出火である。どの部屋からも廊下に人が飛び出し右往左往。しばらくすると数人の消防隊員が階段を駆け上がって来る。地上からスルスルと伸びてきた梯子の先端のゴンドラでは、消防隊員が消火ホースのノズルを構える。

 これで一安心。迫力ある消火シーンを見物できると思いきや、彼らは次の動作に移らない。火元の事務所は反応なし。
すると梯子車の消防隊員が鳶口で窓を割り始めた。室内に飛び込むかと思ったら、次にクーラーの室外機を壊す。さて室外機は火元ではないはずだし。これでは消火にはほど遠い。Kさんの事務所にまで火が及ぶかもしれない。

 だがKさんは慌てない。何百ドルかを手に部屋を飛び出し、消防隊長と思しき人物に手渡した。するとどうだ。Kさんの事務所に火が及ばないように処理しながら消火活動を継続し、鎮火を見届けて引き揚げて行った。
水浸しの廊下を進んで火元の事務所を覗いてみると、床も書類も水浸し。窓は割られ、クーラーの室外機はメチャメチャ。

 現在のように香港版国家安全法と呼ばれる「厳格な法律」など思いも及ばなかった時代である。「官逼民反(当局が横暴であるほどに民は反抗する)」のではなく、「官逼民靡(当局が横暴であるほどに民は従順になる)」しかなかったのだ。

 一息ついた後、Kさんは「彼らにとっては小遣い稼ぎ。嫌でもなんでもカネを握らせておかないと泣くのはコッチだから。あそこの事務所はケチって大損した。やはり損を覚悟しないと得は取れない。損して得取れだ」と苦笑い。

 さてクイーン・エリザベス号のその後だが、焼け崩れスクラップ状態で半ば沈みかけたブザマな姿を、そのまま2年ほど洋上に曝していた。その間に『007 黄金銃を持つ男』のロケに使われている。転んでもタダでは起きない董浩海のことだから、映画制作会社にバカ高い使用料を請求した可能性は否定できない。世界的大ヒット作品の007シリーズである。使用量が安かろうはずもなく、大いに吹っ掛けた・・・のでは。イキがって無料で結構ですなどとは口が裂けても言わないはずだ。実事求是ならぬ、実利求利であるからだ。

Kさんの事務所で目にした消火活動の一部始終からして、クイーン・エリザベス号の一件を勘繰るなら、いくらでも勘繰ることはできる。どれほどの保険が掛けられていたかは不明だが、焼け太りの可能性は十分に考えられる。やはり転んだまま泣き寝入りすることも、タダでは起きることも金輪際あり得ない。

董浩海の息子が、じつは中国政府(江沢民政権)の強力な推しで1997年に初代行政長官に就任した董建華である。そこで当時の香港経済界を牛耳っていた企業家の姿を追うことで、権力を相手に丁々発止の振る舞いを見せる香港の「越後屋」の姿を探ってみたい。
   ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
((( 短期集中連載 ))) 三回にわけて連載(最終回)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

『戦後支配の正体 1945~2020』から紐解く実態経済と経済学のカラクリ(3)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++
  (SSA生) 

第九章 貨幣の変遷は価値帯同率変遷の歴史である

 これまで「心の中には価値が生れ、それを可視化すれば心の外で交換・移動・在庫できることにヒトは気付き貨幣を生み出した。価値があってこそ貨幣がある。ところがいつしかヒトは貨幣をつくれば(印刷すれば)価値がその貨幣(紙)に宿っていると思い込むようになってしまった。
価値と貨幣は本来別物であり、貨幣には価値に対する『粘着度』(=価値帯同率)により違いがある。」と記しましたが、貨幣(通貨)の変遷は粘着度の変遷(逓減)の歴史だと思います。金貨はその粘着度(価値帯同率)が高くしかもそれがユニバーサルで、その下にポンド⇒ドルなどの国際基軸兌換通貨が続きます。

 貨幣の誕生以来、価値と貨幣の間の粘着度は徐々に低下し、ニクソンのドル・金兌換廃止により、一層この傾向は強まりました。「戦後支配の正体」には「貨幣とは何か? ケインズ経済学は貨幣の流通量を人間の英知で最適に出来るという『幻想』がベースになっている」と疑問を呈しておられます。

しかしこのニクソンのドル金兌換撤廃を以って、「貨幣の流通量を人間の英知が決める?流れ」は広がり、コロナ禍を機に世界の常態になってしまいました。第一次大戦のためのアメリカからの莫大な借金が英国47億ドル、フランス40億ドルあり、ドイツの賠償額は1320億ゴールドマルクと同書に書かれていますが、恐らくこれらも金かドルに連結しているに違いなく、一応「価値」とは相応の粘着度=価値帯同率が備わっていたはずです。
これは当時の国際間の貸借には「通貨に相応の価値が帯同している」ことを前提としてきたことを示します。

 今の世界はどうでしょう?
どの国でも印刷機を回せば価値不帯同通貨は「潤沢に」準備でき、そこでは(中国のアジア・アフリカ向け借款と同様に)通貨が価値を「帯同」しておらず、貸借本来の目的(価値の移動)が抜けた意味のないものと成りました。つまりどの国においても通貨は殆ど価値との「接着力」を弱めながら、通貨の増刷の都度「価値帯同率」はゼロに向かっているのです。

 このままではMMT的財政政策の導入度が高い国ほど価値帯同率は逓減し、世界中で価値と通貨の離反が進むことになれば、通貨による価値の国際間貸借は減少に向かうのではないかと思われます。
なぜならば、価値帯同率の希薄な通貨の貸し借りは意味が見いだせなくなるからです。それ故、各国とも自国通貨の「価値への接着力(=帯同率)」を高め価値帯同率の高い通貨を増やすべく自己努力せざるを得ない世界になることでしょう。

 ところが価値の裏付けのない通貨増刷で生まれる価値不帯同通貨を「まっとうな」(建前上)通貨とみなして構築された財政理論がMMTなのです。
これは「仮に国家・政府は国家運営に必要な全ての経費(総労働コストも含める=100%ベイシック・インカムの適用を想定した場合)を新規通貨発行で賄い、すべての税金を廃止するとどうなるか」として考えてみればわかる通り、これでは「国民誰もが働かなくても生活費は支給され、その他あらゆる国家経費も政府が通貨を印刷すれば、それで全て済んでしまう」ことになり、「ヒトが生きる為に必要なものを生産するために誰かが働かねばならない」という基本が抜けているのです。
但しMMTを「弁護」することもできます。それは「インフレ率<経済成長率を達成できることを条件にすれば」ということです。
しかしそれは簡単ではありません。通貨増刷は増えれば増えるほど計算上インフレ化は進行するので、それにしたがい達成すべき成長率のハードルは上がってしまうからです。

 いずれにせよハードルの高い経済成長を、高い知的財産と科学技術力や強力な軍事力に委ねているのが中国なのです。


第十章 世界はMMTに塗り替えられつつある=「裸の王様は(やはり)服を着てはいない」と気づき始めた。

 日本経済新聞 2020年12月17日によると「米連邦準備理事会は16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債などを大量に買い入れる量的緩和の指針を強化して米国債などの購入を、完全雇用と物価安定に近づくまで継続する、と表明した。・・・会合参加者は2023年末までの政策見通しも提示し、同年末までゼロ金利を据え置くシナリオが中央値となった。
FRBは物価上昇率が2%に到達するまでゼロ金利政策を維持すると既に表明している」とあります。以上の記事を読み、「アメリカも本格的にMMTを政策の柱とする」と言外に表明したな、と私は思いました。又日本も同様であり、更にコロナ禍で困窮の度を深めつつある人が増えているという実態から、私は「ベーシック・インカム」制度が徐々に導入される(せざるを得ない)ような方向に進むような気がします。

 それから半年後、コロナ禍で、主要国の経済政策はすっかりMMT型になってしまいました。
ところで
1.月刊誌HANADA7月号で田村秀男氏は以下のように書いています。
「中国は流入するドルに応じて人民元を発行し、高度経済成長を遂げてきた。ドルの調達源は対外貿易黒字と外部からの対中投融資だが、最近では投融資の
比重が格段に高まっている。日米欧の投資家による国際金融市場香港経由の対中 証券投資が急増しており、二〇年では中国の対外負債増加額一兆ドルあまりのうち約五割が株式と債券投資による。習政権は確保した外部資金を使って対外投資資産を八千五百億ドル増やした。対外負債、資産、さらに証券投資とも過去最大の増加額である。言い換えると、北京のコロナ大災厄に乗じた対外膨張加速は、ウォール街主体の金融資本による対中投融資なくしてはありえない。習政権を追い込むためには、ウォール街を抑えるしかない。日本は声をあげる べきだ」。

2.また同誌「蒟蒻問答」で堤堯氏は以下のように言っています。
「ニクソン・ショック以来のアメリカは国債(借金の証文)を乱発。他国からの資金でファイナンスしなきや財政を維持できない。米国債を保有した国は、
これが目減りするのを嫌ってドルを買い支える。マイケル・ハドソンは、「米国債本位制」と名付けた。ハーマン・カーンは「わがアメリカは、史上どの帝国もなし得なかった壮大なペデンを上手くやってのけた」といった。米国債本位制のカラクリに絡め取られて、米国債保有額で日中が首位を争っているが、米国債の約定に、「アメリカに敵対する国が保有する米国債は無効化できる」とする条文がある。「敵対するなら借金を払わないぞ」という意味だ。米国債はFRBのコンピュータのなかに数字として存在しているだけだ。
だからコンピュータの「削除」キーをポンと押せば、中国が保有する米国債が消えてなくなる。事情は日本についても同じだ。一兆ドル以上がボタン一つで消し飛ぶんだから、恐ろしい話じゃないか」。

3.月刊誌VOICE 6月号で養老孟司氏はこう書いています。
「経済の分野に目を向けても、理論と現実が適応していない状況が散見されます。これまで人類はカネを物神化してきましたが、経済はモノではなく情報そのものです。話題を集めたMMTはその典型で、MMT論者がいうにはカネは債務と債権の記録です。たとえばあなたが銀行から1000万円を借りたとすると、その金額分の情報が発生したことになる。流通さえしていれば、そこに価値の裏付けは必要ない。泡銭という言葉がありますが、まさしく現代経済の本質を表しています。」

 以上の1や2と3は全く前提が違っていることが判ります。
1と2は「貨幣・通貨額イコール価値」であり、3は「貨幣・通貨はイコールではなく、通貨・貨幣は価値を生み出す酵素・触媒・道具・情報となった」と言っているのです。この違いが旧来の経済学とニクソン・ショック以降の経済学の違いを生みだし、通貨と同一視されている「債務」はもはや「(マイナスの)価値」を示していないという経済理論に変わりつつあるのです。
MMTが「主流になった」大きな背景は、ニクソン・ショック後はもはや「おカネ(お札)そのものと価値はイコールではなくなったのだ」(=王様は見た通り裸じゃないか!)という事実が定着してきたからでしょう。
なぜなら、アメリカがドルをジャンジャン印刷して、社会に「供給」しているのと同様に、それを「支えている」日中の通貨だって、どんどん印刷された「紙にすぎないお札」であるのは明白で、実質的には価値を必ずしも帯同していない通貨同士の往来に過ぎず、価値つまり富の往来ではないのです。価値と通貨を同一視することは裸の王様を見て、「王様は服を着ている」と言っているようなことなのです。


第十一章 MMTは『価値イコール通貨ではない』という理論にまでは立ち至っていない

 前章にて「1(産経田村記者の記事」2(堤堯氏の御意見)は『貨幣・通貨額イコール価値』であり、3(養老孟司氏)は『貨幣・通貨はイコールではなく、通貨・貨幣は価値を生み出す酵素・触媒・道具・情報となった』と言っている。この違いが旧来の経済学とニクソン・ショック以降の経済学の違いを生みだし、通貨と同一視されている『債務』はもはや『(マイナスの)価値』を示していないという経済理論に変わりつつあるのです」と私は書きました。

 しかし誤解を招きかねないことなので補足いたします。
 それは養老孟司氏はMMTを「貨幣・通貨を情報(手段)とみなすようになった」と書いておられますものの、実際はMMTは『価値イコール通貨ではない』という理論にまでは立ち至っていないということです。

「簿記を知っている人なら(難解な?)MMTはすぐ理解できる」と今のところMMT派の学者・評論家がしばしば解説していますが、ということは、MMTは「価値イコール貨幣・通貨である」という理論であることになります。
なぜなら簿記は「価値イコール貨幣・通貨である」を前提に構築されているからです。つまり、MMTは理論的には養老孟司氏のそれは『貨幣・通貨は
イコールではなく、通貨・貨幣は価値を生み出す酵素・触媒・道具・情報となった』との見解に準拠した理論とは合致しないのです。第7章.第8章.第9章を参照いただきたいのですが、要するにMMTは今もって「価値イコール通貨・貨幣」を前提とした旧来の経済学理論を墨守しているのです。ただ私はMMTなるものは「現実経済」に近づいてきたように感じますので、旧来の経済学とこれからの経済学の「移行期」の中間に位置する理論であるような気がするのです。

 2021年6月中旬に英国のコーンウオールで開催された今回のG7は、主要国の経済政策がすっかりMMT型になってしまったことを裏書しているようです。

 合意事項は「一帯一路に対抗するインフラ支援、経済回復に向けた積極的な財政出動、ワクチン10億回分を途上国に提供」などいずれも、旧来の常識では大型資金がかかわってくる案件であり、今までの「主要国会議」の報道なら、その資金負担がどこの国にかぶさってくるかについての首脳間同士の「駆け引き」が注目の的でした。ところが今回は、どこの国もその点についてはとてもアッサリとしたものに感じました。あたかもスルーしているかのようです。なぜでしょう?

 私はその背景として、主要国の首脳たちの共通認識には、既に「お金は印刷されれば簡単に用意できる」という「MMT的財政論」がすっかり定着してしまっていたことにあるのだと思います。一方、この様子を見て中国は「G7の首脳もやっと中国の通貨・財政政策のカラクリを理解し、われわれをマネするようになったな」と受け取り、苦虫を潰していることでしょう。
なぜならば(そのカラクリを第6章)でのべましたが、「中国は『世界中の人間は、価値と通貨をイコールだと思い込んでくれている』ことに気付き、その『弱点)』を突く諸策を以って自国の経済システムの中に巧みに組み、成功させてきたから」なのです。この中国が味わってきた「うまみ」がようやく白日の下にさらされると共に、旧来の貨幣論が書き換えられたことが露呈されたことが、今回のG7の「意義」の一つだと思います。


第十二章 MMTが不完全なのは妥協の産物だから=「学問の領域」から「覇権争い」に飛び火する恐れ

 何度か「MMTは『お金は印刷されれば簡単に用意できる』という論点に立脚しているにも係わらず、『価値イコール通貨である』との簿記的構造形態から成っているのはおかしい」とその矛盾点を指摘してきました。
しかしMMTを創った人達は、実際はこの「欠陥」を認識してはいるものの、そのわけをあへて言及していないのだとおもいます。
なぜか?
 恐らく彼らは「価値イコール通貨ではない」ことを公言してしまっては、MMT全体が社会的にボツになってしまう事を恐れているはずです。
というのは、このMMTの源流は南北戦争時代のリンカーンによる法定通貨発行にあり、これが中央銀行派の支配するアメリカ金融界との覇権争いに「敗北」し続けてきた歴史を思い起こさせるからです。

そしてもしMMTの本性を、現代のグローバリスト派(=中央銀行制度維持派)の勢力が警戒しはじめれば、MMTの存在自体も覚束なると恐れていると思うのです。
つまり、渡邉惣樹氏の御著書「公文書が明かすアメリカの巨悪」や「アメリカ民主党の欺瞞2020~24」に書かれているような、ナショナリズム派の元トランプ大統領が先の選挙で受けた「不条理」な攻撃が二重写しになっているために、あえて「価値イコール通貨・貨幣」を「建前(妥協)として堅持」してゆかざるを得ないのでしょう。
要するに、今まで世界の富を支配してきた「勢力」にとっては「価値イコール通貨」を制度的に堅持することは、自分たちの既得権益や「将来権益」を守る為には扇の要なのです。
然るにMMTの理論的問題点であるこの制度に手を加えようとする主張には敏感に反応し、「歴史修正主義者」に対しては政治闘争を以ってでも押し流そうとするだろうことを、MMT考案者や推進派はよく認識していると考えられます。
                      (おわり)
             ●●●


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月21日(月曜日)弐   通巻第6957号   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ハンガリーのオルバン首相、「チャイナ」で窮地に
  中国の欧州戦略「17+1」は、もはや失敗と言わざるを得ない
*************************************

中国は東欧諸国を抱き込むために「一帯一路」を宣伝し、東欧諸国の権力トップに積極的に接近してきた。その構想の具現化が「17+1」だった。
ところが、香港に国家安全維持法を強行導入した事態を目撃し、東欧諸国は中国を脅威と見なしたばかりか、「17+1」を「トロイの木馬」と位置づけ、二月に開催されたオンラインサミットに、リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国とルーマニアは出席しなかった。

その後、リトアニアは正式に脱退を表明した。
中欧諸国が「17+1」枠組みに疑問を抱くようになったのはモンテネグロの高速道路建設の汚職と遅延などを契機に、約束の不履行に失望したことが大きい。また中国は東欧諸国の不満解消のため「輸入展覧会」を大々的に開催したが、肝心のハンガリーのブースはがら空きだった。

17+1の加盟国はバルト三国(リトアニア脱退、ラトビア、エストニアも脱退予定)、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、セルビア、アルバニア、スロベニア、クロアチア、ボスニア、北マケドニア、モンテネグロ、ギリシア。

またハンガリーはオルバン首相が中国の復丹大学国際学部をブタペストに誘致するとしたことに国民が激怒し、反対運動が燎原の火のごとくに拡がって「オルバン=毛沢東」のプラカードを持つ若者らの抗議集会、デモが行われている。
 反米、反EU、親露、親中のウルトラナショナリストで知られるオルバンの強権政治も、中国の「一帯一路」スキャンダルに巻き込まれ、政治的に窮地に追い込まれたようだ。
      ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~((( 短期集中連載 ))) 三回にわけて連載(その2)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

『戦後支配の正体 1945~2020』から紐解く実態経済と経済学のカラクリ(2)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++
                          (SSA生) 

第四章 生命体の本質(同一化)を旧来の貨幣論に組み込むと「価値イコール貨幣・通貨」の誤りが浮上する

 『戦後支配の正体1945~2020』の第6章の「社会科学も理系の厳密さに近づける」の項目で、同書は「合理性を追求して行けば、自然科学に近づける余地がある」と述べておられますが、分子生物学者のシェーンハイマーや福岡伸一氏による学説から、レシプロシティに基づく生命体の本質を経済学に取り込んだことで貨幣論を自然科学に近づけることができたと言えるのかもしれません。
経済学に自然科学を近付けるという意味からは、行動経済学の発展もそれに似たようなものかもしれませんが、そこから私が得た「総括」は「価値イコール貨幣ではなくツール(機能・触媒・情報)である」ということでした。これは既存の経済学からすれば「想定外の姿」です。なぜそのようなことになったのでしょうか?

 繰り返しになりますが、それは根源的には価値と貨幣は別物であるにも係わらず、養老孟司氏の「動物も人間も意識を持っているが、人間だけが『同じに』する特異な機能を獲得し、その機能が貨幣と価値を同一とみなしてしまったことに端を発した」と云う事だと思います。
ところがです。養老氏は「全てまとめていって、ありとあらゆるものを同じとみなしてゆくと最後にたった一つになってしまう。これでは話にならなくなる」とも言われましたように、「同じにする・同じにみなす」を人間があまりに進めてきた結果、不換紙幣も仮想通貨はもとより、「価格が標示されている金融商品まで」もが価値そのものであるとみなす世の中になってしまったのです。そしてこれらを全て簿記に記帳することが「正しい」こととなってしまったのです。
まさに養老氏が言われたように「これでは話にならなくなってしまった」のです。換言すれば「貨幣・通貨は機能である」ことを「是」とすれば、価値そのものでない機能(ツール・触媒)の「量」が簿記の資産項目として記帳されていることになり、まさに簿記はその機能(価値の在り様と流れ)を果たさなくなってしまっています。

 人は「同じにする」を以って社会を構築してきて、その習性は留まることを知りません。その顕著な例が無形資産の出現と最近の増加です。これは限られた人しか「価値」の存在を認識することは出来ないにも係わらず、社会的authorizeを得る事なし簿記に計上されたとたんに「公的な価値」となってしまうのです。人類が社会を構築するには「同じにする」機能があってこそできたのでしょうが、この機能は反対に人類に混乱をもたらしているのです。


 第五章 選択の判断基準は等価性にあり、価値と貨幣の関係は、両者の同一性の「濃度」に左右される

 第一章で「中央銀行や貨幣の持つ怪しさ」の中身を推測で6項目提示してみましたが、「貨幣は価値そのものとは違うのだ」という第四章の見解をここに重ね、整合性を念の為、再検証して見たいと思います。
1.これまで貨幣という手段(機能)が目的(価値)に「主客混同」してしまったプロセスを以下のように考え、価値イコール貨幣ではないと記しました。
 全ての生命体はレシプロシティ運動を行う。ヒトは意識から「同じにする・同じとみなす」という特異な機能を獲得したことで、「価値ある何か」を取り
入れる際には、同じかどうかの判断で「何か」を「選択」し、依って多種類の「価値 ある何か」を取りこむことができるようになった。「選択」は「等価性」を判断基準としているのだ。ところが人は機能を発揮させる為の道具の素材自体(ゴールド・銀・貝殻・石・粘土・トークン・紙等)をいつしか価値と混同/同一視するようになり、価値そのものとは異なる物的存在に過ぎない貨幣を、価値と「同じとみなす」ようになってしまった。

2.「価値イコール貨幣ではない」と並び、重要なことは、「(強い)貨幣は新規の価値を創造する触媒機能を持ち合わせている」と云う事。これも「同じにする」「同じとみなす」から始まったと考えるのです。
どの位「同じにする・同じにみなす」のか?
即ち価値と貨幣の関係は、両者が100%「同じとみなされている」状態から、「同じではない」までのゼロ%状態まで、いくつか段階があり、その程度は、
時代や地域・文化・文明・政治・経済社会体制によって決定されると云う事です。商品貨幣説から信用貨幣説に至る経済学や会計学(簿記)は「価値イコール
貨幣」の度合いが高い段階から中程度の段階を前提に構築されたと考えられます。しかしニクソンショック以後に不換紙幣が世界を覆うようになってからは「価値イコール貨幣」としたのでは経済学を語れなくなったのです。端的に言えば、価値と貨幣の関係は両者をどの程度同一視してしまうかに左右され、貨幣の価値に対する「粘着度・摩擦力・磁力」(=どの程度価値を帯同しているか)の問題に移ります。
そしてこれら「摩擦力・磁力・粘着度」などが強ければ強いほど、その貨幣は、(ヒトの持って生まれた特性である「同じにする・同じとみなす」を以って)新たな価値を創造することが可能となります。
つまり面白いことに、「価値イコール貨幣」説が極端になるにつれ、逆に「価値イコール貨幣ではなく、価値を誘発する「貨幣説」が誕生するのです。ここに経済成長を生み出すための触媒機能を貨幣が有する「価値創造機能貨幣説」が生れ、これを経由して、インフレ・デフレ論・MMT・中国経済体制論などのマクロ経済論とも繋がってゆくのです。

3.それにしても、経済分野のみならず、人が「同じにする」という機能を獲得したことは大きいと思います。例えば「歴史は繰り返される」とよく言われる
が、この「繰り返し」は文字通り「同じものが何度も繰り返し起きる」のではないかと歴史研究家は考え、「同じモノ探し」するのです。又、宗教でも養老氏が言われるようにヒトはこの「同じモノ」を追求して一神教を生み出しました。「AIは全て過去のデータに基づいて予想や判断を積み重ねる事で成り立っている」(国立情報学研究所教授新井紀子氏)そうですから、AIは「同じこと」が繰り返されることを前提としているのです。


第六章 「MMTは『価値イコール通貨』を前提に組み立てられているが、これを『価値イコール通貨ではない』に入れ替えると、概ね現行の「中国経済システム」となる

 「価値イコール貨幣(通貨)」ではない。貨幣(通貨)は価値の『大きさ・交換・移動・保管』を示す道具(機能)であるが、同時に、価値に対して貨幣(通貨)がどの程度の価値を帯同できるかは、通貨の『粘着度・摩擦力・磁力』によって異なる事を忘れてはならぬと、前章で書きました。なぜならばそれらが「インフレ・デフレ」を説明するに不可欠であるばかりか、「粘着度・摩擦力・磁力」が強いほど、その貨幣は新たな価値を創造する触媒機能をより強く有しているからで、これを「価値創造機能」と呼称したいと思います。

 この『価値創造機能』は現代社会では経済成長を促す原動力になっていると考えられます。そこで上記を前提として、現在の経済・経済学と重ね合わせてみますと、徐々に以下のごとき姿が浮かび上がってきました。

1. インフレ・デフレは単に通貨量によって決まるものではなく、価値に対して通貨の持つ「粘着力・摩擦力・磁力」にも左右され、これらが計算に加味された「実質通貨量」が生産力にマッチしている限り、通貨量が増加してもインフレ─ションは起きない。

2.MMTの解説に援用される「簿記」にはインフレ・デフレのメカニズムが組み込まれていない。

3.貨幣(通貨)を『発行』しているのは国家(中央銀行)だけではない。民間銀行も融資行為に伴い「通貨を発行しており」これを正当化しているのが(トリッキーな)「内生的貨幣供給理論」と現代の会計学(簿記)である。

4.国家(中央銀行)の増発紙幣や民間銀行が融資した際生れる通貨(預金)は「価値不帯同通貨」である故、通貨量を増やすことが価値(富)を増やすことにはならない。

5.通貨増発の今日的目的は、新たな価値を創造し経済成長をもたらすためであり、通貨は魚釣りに使う「ルアー」のようなモノつまり「触媒」機能を担っている。

6.旧経済学からの脱却をめざしているMMTは、「価値イコール通貨」の枠内での理論であるがために、「説得力」のある経済学になりきっていない。

7.財政赤字問題にMMTは一定の理論を提起したが、MMTを越えて既に諸策を黙々と実行してきたのが中国である。中国は元々「価値イコール通貨」なる「文化」を持ち合わせておらず、歴史上通貨を手段・道具と当然視してきたがために、財政赤字問題に本当に痛痒を感じることはない。「価値イコール通貨ではない」を可視化したものが徳政令となる。

8.中国経済が急成長できた理由の一つは、中国「中枢」が「世界中の人間は、価値と通貨をイコールだと思い込んでくれている」ことを洞察し、その「間隙(弱点)」を突き、自国の目指す「国家資本主義」の経済システムに「賢明にそしてして巧みに」援用したからであると考えられる。

 これまで述べてきた「生命体のレシプロシティ運動から価値・貨幣の関係まで」の帰結を、上記の如く総括することに違和感を持たれる人は多いことでしょう。しかし私は昔から現代にいたる各分野の賢人達が既に述べてきたことを、ただ「コピー・アンド・ペースト」し、横糸で紡いでみたところ既存の経済学とは別の姿が見えてきたと云う事。「種々の模様の生地の切れ端でキルトのタピストリーを作ろうとしたら、全く違った模様のタピストリーが出来てしまった」と云う事なのです。


第七章 中国の貨幣論の実像

 前章で「価値イコール貨幣(通貨)」ではない。「MMTは『価値イコール通貨』を前提に組み立てられているが、これを「価値イコール通貨ではない」に入れ替えると、概ね現行の『中国経済システム』となる」と記し、その大枠を8項目にて記しました。ここでもう少し具体例を以って「中国の貨幣論」を考えてみます。

 アジア・アフリカのインフラ・プロジェクへの巨額の財政支援を中国は数多く実践しているようです。返済が出来なくなると長期にわたる港湾使用権などを「担保」としているので、麻生財務大臣は「サラ金」と同じだと評しました。
いずれにせよ、マスコミも含め世界中の人は「中国は巨額の借款を実行できるほど、豊かな国になった」と思い込んでいます。
しかし中国は「通貨」を手渡してはいても、「価値」は与えていないのです。中国はほとんどコストゼロで「元」と印刷した「紙」を「支援金」と称し相手国に手渡すのです。この時点から「支援」金が使われ費用が発生するまでは、それは「中国商品や労働力を買わせる」ための「撒き餌さ」つまり「機能」なのです。
繰り返しますが、中国は「価値」を供与しているのではなく、金額が一応表示された「素材に過ぎない紙」を相手国に渡しているだけであり、そこに価値の移動はありません。

 マイナスの価値である借金を、アジア・アフリカの国々は、本当は背負っていないのに、背負っていると思い込んでいるのです。
従い例えプロジェクトが頓挫しても(実際に費用が発生してしまいその部分が返済不能となっても)ほとんど中国は痛痒を感じるはずがないのです。むしろ大喜びでしょう。なぜなら単なる「素材にすぎない紙」の見返りに、相手国の長期にわたる港湾湾使用権などを獲得できるのですから。

 以上を整理していえば、中国のアジア・アフリカ諸国への「財政支援」の結末は「価値の供与・貸与」ではなく「相手国の重要なインフラ使用権」と「素材としての紙」を「交換」しているのです。
それ故中国は「プロジェクトが頓挫するよう種々工夫を凝らしている」ことは明白です。ハーグ国際裁判所による、「フィリピンの南沙諸島の領有権は中国にあらずとの判決文」を、中国は「単なる紙屑」と言いましたが、対外的には「財政支援金」といかにも「価値」を供与したように称しますが、実は自国にとっては「紙屑」にすぎないのです。
なぜこのようなことが中国にはできるのか?

それは第六章に書きましたが、中国という国家が増発する不換紙幣は、それが経済活動に組み込まれるまでは、価値不帯同であるにも係わらず、「中国中枢は世界中の人間は、価値と通貨をイコールだと思い込んでくれていることを「利用」し、それを自国の目指す「国家資本主義」の経済システムに援用している」からなのです。
 かようなカラクリをこれからも中国は駆使し、元の国際基軸通貨化に邁進する(できる)と思います。なぜなら現在世界の金融を支配している「勢力」にとっては「価値イコール通貨」を堅持することが絶対に必要であることを中国は熟知しているからです。


第八章 「人が求めるモノは事実ではなく価値である。より正確には事実らしく見える価値を求めている」

 京都大学名誉教授 佐伯啓思氏の著した「近代の虚妄─現代文明論序説」(東洋経済)では、ギリシャ哲学から「ニヒリズムの近代」を経由した現代文明の様相を、トランプ現象にまで重ねて述べておられます。
同書からは教えられることが山ほどあるのですが、その一つに「人々が求めるモノは『事実』ではなく『価値』なのである。
より正確に言えば『事実らしく見える価値』なのである。或は『事実』を『価値』として求めている」という記述があります。私はこの御意見から、「これほど人は価値を強烈に求めているが故にヒトは何でも価値をえようとし、それが高じて現代が『価値イコール通貨』の世の中になってしまった」のではないかと思いました。

 前章では「価値イコール通貨」という現代人の思い込みを利用して、増発したばかりの「価値不帯同通貨」を中国は「価値の供与」と首尾よく思い込ませることで、「タダの紙屑」と「低開発国の港湾などの重要インフラの使用権」の交換を実現させることができたと書きました。
しかしこの形態と似た取組みは日本もアジア諸国に「円借款」という形で(中国のようなインフラの使用権のような不条理な担保は設定せず)実施してきたのですが、コロナ禍に巻き込まれた世界は、外国向けではなく自国向けに上記のメカニズムを適用する方法をアッと言う間に一般化させてしまいました。
嘗ての財政論議では政府支出とその財源問題が常に中心にありました。
しかしコロナ禍になってからは、例えば観光・飲食業界への多額の財政支出に対する財源問題がなぜか突如消えてしまっています。
これも上記のメカニズムと同じ文脈にあるのです。

 最も重要なことは、このメカニズムについて現行経済学は「スルー」している事や、(中国中枢を除き)誰もがここに大きな間違いが隠されていることを認識していないという事だと思います。
念の為に上記のメカニズムを再度記せば・・・増刷されたばかりの通貨は、既存の経済社会に組み込まれ、「希釈」され「価値帯同通貨に変化するまで」はただの「素材にすぎない紙」であり、「価値」を「帯同」していないのです。もっと平易に言えば、「ヒトの心の中には価値が存在し、それを可視化すれば交換・移動・在庫できることにヒトは気が付き貨幣を生み出した。価値があってこそ貨幣があるのだ。ところがいつしかヒトは貨幣をつくれば(印刷すれば)価値がその貨幣(紙)に宿っていると思い込むようになってしまった」のです。
これら不換紙幣の増刷は、それが新しい価値を創造できず、経済成長を生み出さない場合は「計算上、インフレによる貨幣価値の減少という『目に見えない増税』による財政赤字の解消策と同じ」であるのです。

 逆に言えば、通貨増発が経済成長を促し、それにより増刷貨幣量と等しい価値をうみだすことができれば、通貨増発策も理屈が通るのです。
 ところが、経済成長はそれほど簡単には生まれません。そこで中国はイノヴェーションに不可欠な知的財産の海外からの「収集(収奪?)」とその応用基盤となる軍事増強に、当初は「韜光養晦」の衣をまといつつも、その後は衣も脱ぎ棄て手段を選ばず力を投入しているのです。                       
(次号完結)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ●読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声●
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪
(読者の声1)梅雨入り後の鬱陶しい日々を、どなたかが宮崎先生の生番組の事を投稿しておられましたので、探して拝見しました。
 ゲストが高山正之さん、加瀬英明さん、乾正人さん、渡辺偬樹さん、許世楷さん、近藤大介さん、中村彰彦さん、廣瀬陽子さん、三浦小太郎さん、そして十回目のゲストが門田隆将さんでした。
 皆さん個性的な方々、言論人、丁々発止のトークは笑いあり、哲学あり、時事問題、様々な今を紐解いて下さる。鬱陶しい空気が快い風に運ばれて、爽やかな高原での読書後の様ないい気分に変えてくれる、今後のゲストはどなたかしらと、楽しみがひとつ増えました。
   (深澤文子)

(宮崎正弘のコメント)御感想を有り難う御座います。おかげさまで好評のようで、次回ゲストは芥川賞作家の楊逸女史(日本大学教授)。
7月5日午後四時を予定しております。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)6月21日(月曜日)壱   通巻第6956号   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(本号はニュース解説がありません)
*************************************
経済論文ダイジェストがあります。
     ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜((( 短期集中連載 ))) 三回にわけて連載です
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

『戦後支配の正体 1945〜2020』から紐解く実態経済と経済学のカラクリ(1)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++(SSA生)     第一章「貨幣の持つ怪しさ」とは何か

 『戦後支配の正体 1945〜2020』(宮崎正弘/渡邉惣樹著、ビジネス社)は、「やはり今の経済学者に欠けている議論は中央銀行とは何か、貨幣とは何かの議論です。これらの持つ怪しさについて一切触れない・・・貨幣とは何かについてはいまだにわからないことがある」と繰り返し強調しておられます。
私は「それは今の経済学では説明できない何かワケがあるためであり、それを解明するためには経済学分野でも『歴史修正主義』が求められているのではないかと感じています。
そこで本稿ではまず同書が何を以って「中央銀行や貨幣の持つ怪しさ」と言っておられるのかを推察することから始めようと思います。

 1.「(イングランド銀行の説明によれば)銀行は、預金という貨幣を元手に貸出しを行うのではない。貸出しによって預金という貨幣が創出されるのである。
銀行による貸出しは、本源的預金による制約を受けずに、借り手の需要に応じて行う。銀行は、企業家に対して、理論的にはいくらでも資金を貸出すことができる。銀行の融資活動によって、貨幣が新たに創造されるのである。」と「富国と強兵」(中野剛志著、東洋経済新報社)に書かれている。
即ちこれは民間銀行 が中央銀行はおろか、誰とも無関係にマネーを創造し、「勝手」に社会に放出している実態を述べているのです。
なぜ民間銀行はこのような「好き勝手な事」ができるのだろう?
国家が民間銀行に本来は「私的貨幣」であるマネーを「公的貨幣」にauthorize なしに転換することを放任しているのは「通貨偽造」を認めているのではないか?

2.更に恐慌時になると、流動性支援はまだしも信用性支援を民間銀行にたいして国家が税金で救済していることを容認しているのは、おかしいのではないのか。

3.歴史的経緯を斟酌すれば、民間銀行が自行名義の通貨を発行し、融資することは今でも認められるかもしれない。しかし通貨単位は大きなブランド力(信用力)を保持していることを誰もが認識しているがため、通貨はそれなりの信用力を有することができたのである。
それにも拘わらず民間銀行は円という通貨のブランド料を払わずに、自行が融資したマネーに自国の通貨名を”自由に“使っているのである。それは近代社会の一般的倫理観からすれば不条理といえよう。

4.歴史的経緯は誰でも書籍にて知ることができる。しかし今に至っても誰もが公的機関と了解している中央銀行がアメリカのように民間資本から成っていることをなぜ放置しているか?

5.民間銀行は融資の際、その金額のままで資産として簿記上記帳しているが、これは会計学上の大きな誤り(トリック?)ではないか?

6.コロナ危機以後、あれほど「姦しかった」財政規律派と積極財政派による議論は突然消え、いままでの金融分野に「限って」(?)いた支援を観光・外食産業など純粋な民間分野にまで「アッと言う間に」広げ、世界中が巨額の財政出動を開始した。
財政規律派はひと段落過ぎたら極端な大増税の波が押し寄せてくると思いつつダンマリを決め込んでいるのか?それとも全く新しい「経済理論」が生れたというのか?

 以上に関し、同書が述べているように、今の経済学には「経緯説明」はあっても「現代的」な「理屈や正統性」が語られていないように見受けられます。
もし実相を語る人が現れたらその人物はきっと「歴史修正主義者」と呼ばれてしまう事でしょう。我々はどうやら「経済」に関し思考停止状態にいるようです。


第二章 法律も貨幣もレシプロシティ(代謝)の姿をしている

 『戦後支配の正体 1945〜2020』の第4章「戦後経済の正体」の中で、宮崎・渡邉両氏は「ケインズ理論に困惑している・・・貨幣論に問題がある」と疑問を呈しておられます。私も既存の「貨幣論」には問題があるとは思いつつも、第6章についての「復讐権」の記述を読んだ際は、同書の著者が「復讐権を歴史のメカニズムに組み込もうとお考えになっているに違いない」と拝察し、そうであれば私の考える「貨幣論」もこれと同様の考え方ではないかという気がいたしました。
なぜならば同書で「弁護士が復讐権を考えたこともない」と発言した弁護士がいたと驚かれていますが、そもそも「ハムラビ法典」を持ちだすまでもなく、法律の起源は「やられたらそれと同程度やり返す」というレシプロシティの「借方と貸方」を等しくすることにあるはずですから。復讐権も貨幣論も等しく生命(運動)体の本質的な形であるレシプロシティ(代謝)から誕生していると思うからです。

 レシプロシティについては後程詳しく述べようと思います。しかし、
1.「生物と無生物の間」(福岡伸一著 講談社)からは生命体の本質を発見した分子生物学者のシェーンハイマーのレシプロシティを前提とする「動的平衡論」を知ることができますし、

2. 古代から現代社会迄、この世がレシプロシティが深く関与し機能している実態を「ソクラテスはネットの無料に抗議する」(ルディー・和子著 日本プレミアシリーズ)で気づかされます。また、

3.「贈与の系譜學」(湯浅博雄著 講談社)を読めば、ヒトなる生命体はレシプロシティに則った動的存在であり、それは交換行為にてなされること。等価性を規定するために法律が生まれ、等価性を知覚するために貨幣が生れ、古代ギリシャでは正義とは「均等である」ことだったと書かれています。更に、

4.マッキンダーは人間が創ったあらゆる組織体は生命体と同様のものとみなすこと
ができる、と「富国と強兵(中野剛志著 東洋経済新報社)」に書かれていると云う
事は組織体にもレシプロシティが機能していることになります。

5.そして「歴史の真贋」(西尾幹二著 新潮社)を読めば、レシプロシティが「この世」の中核的存在であることをニーチェ思想から感得できましょう。

 なかでもこれら「レシプロシティ論」から貨幣に至る「系譜」について私がとても刺激を受けたのは「遺言」(養老孟司著。新潮社)という書籍です。
同書は「感覚と意識」や「ヒトだけが何かと何かを同じにみなすという特別な機能を獲得した」との養老氏のご見解からスタートし、レシプロシティが「同じにする」を経由して「交換」に繋がり「言語や貨幣をはじめ様々な社会的システム(脳化社会)を生んだ」のだと書かれています。

 他にも細胞レベルから貨幣論を述べた書籍として、「貨幣の新世界史」(カピール・セガール著 早川書房)があります。同書は「全ての生物が何らかのエネルギー交換作用を以って生きている。ヒトの場合は貨幣は、比喩ではなくツールとして出現した」と詳細に解説した上で、「私は、お金は価値のシンボルだとする定義にたどり着いた。シンボルとはほかのものの象徴であり、抽象的な形で表現される。
一方、価値とは何かの重要性や値打ちを意味する。この二つを纏めれば、お金は何か価値あるものや大切なものの象徴と云う事になる」とセガールは言っていて、これを私の言葉で要約すれば、「貨幣は価値そのものでは決してない」と結んでいます。ただ惜しいことに、この本はレシプロシティと貨幣論を連結する肝心な等価性の追求や養老氏の論じている「同じにする」に言及しておりません。

第三章 レシプロシティは「等価性」を目指し、これが貨幣の本質に繋がる

 「レシプロシティなるモノがこの世のあらゆる生命体の姿であり、等価性を追求する運動体である」と考えられ、それはシェーンハイマー、福岡伸一氏
等の分子生物学者、解剖学の養老孟司氏からアリストテレス・ニーチェなどの哲学者までが同じ考えでいるようです。植物はCO2を取り込み、それに見合った(等しい)酸素量を放出します。等価性を語るためにはレシプロシティの姿がまずあり、レシプロシティの貸方と借方を同じにすることで等価性が成立します。世の中をまだ知らぬ幼児でさえ「It is not fair! =ズルい!」と等しさを「本能的」に主張し、この言葉を盛んに連発します。

 どうやら等価性を規定するために法律が生れ、等価性を知覚するために貨幣が生れたようです。
以上述べてきたことから、貨幣は商品価値や信用(負債)そのものではなく社会的等価性を認識する道具(機能・触媒)であると総括できると思います。
しかし、だからと言って商品貨幣説や信用(負債)貨幣説を一概に否定することは出来ません。なぜならかような理論が生れた原因は、養老氏が指摘されている「ヒトは他の動物と異なり、何かと何かを同じものとみなすという特異な機能を持ち合わせている」にあるからです。
つまり人間は価値そのものと貨幣・通貨を「同じモノ」とみなしてしまう動物であるからです。商品貨幣説は価値と貨幣がほとんど一体化されている「経済圏」で生まれた理論であり、信用貨幣説は通貨量が大幅に増え、貸し借りの関係が顕著になった時代に生まれたと考えられます。ところがいよいよ不換紙幣が一般化したニクソンショック以後は、価値イコール通貨としては説明がつかない金融環境に陥り、その意味から貨幣の原点、即ち「価値イコール貨幣ではなく道具であるである事」に立ちかえらざるをえなくなったのです。

 これらからすると、貨幣の本質の原点はレシプロシティから敷衍される等価性(同じにする)にあり、その下の各論として商品貨幣論時代や信用(負債)貨幣論時代が経済学史に登場した、と位置付けることができましょう。
ただ上述の「人間は価値と貨幣を同じものとみなす習性」は単に『ああそうなの』というだけではすまず、これが経済・経済学を混乱させている理由の一つとなるのです。養老氏は「全てまとめていって、ありとあらゆるものを同じとみなしてゆくと最後にたった一つになってしまう。これでは話にならなくなる」と「警告」しておられます。

『戦後支配の正体1945〜2020』を読めば、一貫としてレシプロシティが地下水脈の如く流れていることが感じられます。
例えば第4章の中で渡辺氏は「復讐権を固有の権利だと認めたうえで法律を作ってゆくのと、復讐権がないのだという前提で法律を構築してゆくのとでは全然違う」と主張しておられるが如くです。前者はレシプロシティの存在を認め後者は否定する事であり、復讐権と同じく、前者でなければ歴史と同様に経済も語ることは困難だと私は考えるのです。
                           (つづく)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  ☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆ ☆⌒☆⌒☆  ⌒☆⌒☆     
 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1)松田学対談シリーズに宮崎正弘氏が登場。
 テーマは「バイデンの中国政策は競合的共存だ」
https://www.youtube.com/watch?v=X8s174vGaYg
 大きな反響がありました。是非ご覧下さい
   (松田学研究所)

   ♪
(読者の声2)愛知トリエンナーレで反日展示を主導した大村愛知県知事を許すことができません。やまと新聞にその思いを書きました。
 よろしければ下記をクリックしてみて下さい。
https://www.yamatopress.com/archives/36227
   (松木國俊)

(宮崎正弘のコメント)静岡県のカワカツ知事も同罪ですね。今週の『週刊新潮』、高山正之氏のコラムは、「上品」にこの知事のバカさ加減を揶揄しています。しかし昨日の選挙で、四回目の当選です!

  ♪
(読者の声3)現代演劇協会(劇団雲・欅・昴)の50年の活動の記録を資料として、デジタル空間に浮遊させます。詳細な記録とともに、デジタルの強みを活かして画像をふんだんに掲載しました。
 昔ご覧になった舞台を懐かしむよすがとして頂くとともに、演劇研究者の方の研究に資するものとなれば幸いです。
 現代演劇協会 デジタルアーカイヴ(Institute of Dramatic Arts Digital Archives )https://onceuponatimedarts.com/

 (読者の声4)先日の未来ネット「宮崎正弘の生インタビュー」という番組で、宮崎先生と門田隆将さんとでメディアの偏向の話をされて、話題は「女系天皇」に及び、典型の事例として挙げられたのが継体天皇の皇位継承問題でした。
五代遡って、応神天皇の五代孫が継体天皇ですが、この議論、耳で聞いていたのですが、やはり咀嚼が難しいと思いました。
 そのあたりのこと、わかりやすく説明していただく番組を作ってほしいと思います。
   (FH子、藤沢) 

(宮崎正弘のコメント)某誌に準備中の拙論の一部を下記に掲げます。
「戦後の歴史論壇は共産主義に毒された左翼が破壊的言論を撒き散らす場と化して、網野善彦とか家永三郎とか、騎馬民族説を唱えた面妖なガクシャが「活躍」した。その後、多少の反省と客観的考察をする学者は増えたが、いずれもが戦前までの皇国史観否定が「進歩的」と錯覚した人々であり、平泉澄、田中卓らは孤立を余儀なくされた。長野朗、大川周明らの著作は発禁処分だった。
 過渡期において出てきたのが河内王朝から継体王朝への変遷は新王朝とする説が拡がった。直木孝次郎らが、こうした立場を取った。
 仁賢天皇の皇子、武烈天皇の崩御後、五代溯って応神天皇の五代末裔のオホドが越前にいることを見つけ出し、皇位につかせたというのは、血統的にすこぶるあやしいとする説である。
しかし直木孝次郎は、そうは言いながらも「継体こそは二十年に及ぶ動乱期を統一し、新王朝を創始した英雄」であり、「風を望んで北方より立った豪傑の一人」と評価した。
 応神天皇の母は神功皇后であり、実名は息長足姫(おきながたらしひめ)である。継体天皇は越前ではなく近江の坂田郡は本拠だったという説があり、となると息長氏の拠点である。そのうえ、継体天皇の后のひとりは息長真若中比売(おきながまわかなかつひめ)であることから、継体は天皇家の皇女を妻として一種入り婿のかたちで皇位を継承したことになるとする説が有力になった。
 オホドはなかなか越前から腰を上げようとはなさらず、近江の代理人を通じて情報を集めた。
というのも雄略天皇の子、白髪の清寧天皇がお隠れになった後に皇統を継ぐ皇子が不在となった折は、とりあえずイチヘノオシハ(履中天皇の皇子)の妹(オシスミノイラツメ)が飯豊天皇として「称制」となった故事を引いたという。
なぜなら飯豊天皇は葛城の麓、忍海に角刺宮を建てたが、近畿豪族から軽視された。播磨の石室に隠れていたイチヘノオシハの皇子兄弟が名乗り出て、至急、都へ呼び戻され、弟(顕宗天皇)が先に、兄(仁賢天皇)がそのあとに即位した。
 豪族某は、まったく馬鹿にして態度をとったので顕宗天皇はまつろわぬ部下を誅した。そのうえで、仁賢天皇(履中天皇の孫)は雄略天皇の皇女の春日太郎姫を娶って、大和王朝の混乱をまとめた。(飯豊天皇は大正時代になって皇統譜から削除された(神功皇后も削除された)。それまでは慈円の「愚管抄」ばかりか、「扶桑略記」「後胤紹運禄」などは「飯豊天皇」と銘記していた)。
 継体天皇は、この二の舞を恐れて、政治の混乱を助長させてしまうよりしばし郊外に留まって奈良へすぐに入らなかったのだと、まことしやかな解釈もある。
 だが、筆者の解釈するところ、旧都には守旧派が盤踞しても、実質的に政を決定する求心力を持った豪族は不在であり、時間を稼げば、反対派は自滅すると読んだのだろう。
 豪族の内訌を待ち、その間、継体天皇は樟葉宮で執務し、国際情勢に敏感で、また交易の振興を奨励し、西国の剣呑な動きに備えたのである。まさにこの予測は的中し、筑紫君磐井の反乱がおきた。新羅に通じていた磐井は、百済と親しい継体朝に盾突いていた。
 歴史学者の考察が足りないのは、第一に軍の掌握を誰がしていたのか、軍事戦略上、地政学上の要素である。第二に海上ルートの拠点は何処か、というやはり地政学の視点が欠けていることだ。
 樟葉宮は物資の運搬、軍団の輸送に欠かせない拠点、とくに高志国(古志、越)から琵琶湖を経て、淀川水系ルートの要衝である。継体天皇はまず、この軍事戦略上に欠かせない要衝を抑えたのである。
 ついで越前で培った国際感覚とは、当時は日本海沿岸が日本の表玄関であり、諸外国(と言っても朝鮮とシナ大陸と沿海州)との交易、使節の往来、外交上のもてなしと送迎の拠点は越の敦賀と能登の福良港だった。継体天皇は、この土地を背景に、重い腰を上げてきたのだった」。
 この続きは冬ごろに上梓予定の拙著で詳述予定です。
     ◎◎☆◎□☆◎◎☆◎□◎☆◎◎   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  +++++++++++++++++++
◆宮崎正弘の新刊! ◆宮崎正弘の新刊!  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  ♪
新刊予告(7月8日発売!)
宮崎正弘 v 石平(激辛対談シリーズ第12弾)
『中国が台湾を侵略する日  ──習近平は21世紀のヒトラーだ!』(ワック)
   ●英語世界では習近平は「XITLER」と呼ばれ始めた●
   (6月25日頃から予約受付となります)

  ♪
新刊予告(7月27日発売)
 ●宮崎正弘『日本人が知らない 本当の路地裏中国──乗って歩いた! 全33省旅遊記』
  (啓文社書房)
   中国全33省を何回にも分けて旅し、新幹線を乗り継ぎ、ローカル線や長距離バスにも揺られ、ほっつき歩きながら、いったい日本と中国は一衣帯水ではなく、全く異なった文明であることに改めて気がついたのだった(序章、第一章より抜粋)
  予価1760円
https://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%8C%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84-%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AE%E8%B7%AF%E5%9C%B0%E8%A3%8F%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E2%80%95%E2%80%95%E4%B9%97%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%AD%A9%E3%81%84%E3%81%9F-%E5%85%A833%E7%9C%81%E6%97%85%E9%81%8A%E8%A8%98-%E5%AE%AE%E5%B4%8E-%E6%AD%A3%E5%BC%98/dp/4899920768/ref=sr_1_4?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E8%B7%AF%E5%9C%B0%E8%A3%8F%E4%B8%AD%E5%9B%BD&qid=1624100500&sr=8-4

  ♪
文部省『復刻版] 初等科地理』(ハート出版)
7月5日発売
解説 宮崎正弘
●戦前戦中、いかに正しい地理教科書で地政学のイロハを教えていたか!

  ♪
 絶賛発売中!
宮崎正弘最新刊『WORLD RESET 2021』(ビジネス社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4828422838/

  ♪♪♪
宮崎正弘『真説・歴史紀行 日本のパワー・スポットを往く』(海竜社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/475931752X/
──知られていない、都会から離れた、淋しく忘れ去られた現場を廻ってみた。
        
  ♪♪
<宮崎正弘の単行本 ロングセラー>
『バイデン大統領が世界を破滅させる』(徳間書店)
https://www.amazon.co.jp/dp/4198652554/
「コロナ以後」中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する』(徳間書店)
『中国解体 2021』(徳間書店) 
『WHAT NEXT(コロナ以後大予測)』(ハート出版)

  ▲
<歴史シリーズ>
『こう読み直せ! 日本の歴史」(ワック)
https://www.amazon.co.jp/dp/4898314988/
『一万年の平和、日本の代償』(育鵬社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4594086195/
『神武天皇以前(縄文中期に天皇制の原型が誕生した)』(育鵬社)
https://www.amazon.co.jp/dp/459408270X/
『明智光秀 五百年の孤独』(徳間書店)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07PWLGXRS/

♪♪♪
■宮崎正弘の対談シリーズ■ 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
宮崎正弘 v 渡邊哲也 『迫り来るアメリカ 悪夢の選択』(ビジネス社)他四冊。
宮崎正弘 v 渡邊惣樹 『戦後支配の正体 1945−2020』(ビジネス社)他一冊。
宮崎正弘 v 石 平  『ならず者国家・習近平中国の自滅が始まった!』(ワック)
宮崎正弘 v 西部 邁 『アクティブ・ニヒリズムを超えて』(文藝社文庫)  
宮崎正弘 v 田村秀男 『中国発の金融恐慌に備えよ!』(徳間書店。韓国語版あり)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ、中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 高山正之 『世界を震撼させた歴史の国 日本』(徳間書店)他一冊。 
宮崎正弘 v 河添恵子 『中国、中国人の品性』(ワック)  
宮崎正弘 v 宮脇淳子 『本当は異民族がつくった虚構国家 中国の真実』(ビジネス社) 
宮崎正弘 v 藤井厳喜 『米日露協調で、韓国消滅! 中国没落!』(海竜社)他一冊。
宮崎正弘 v 室谷克実 『米朝急転で始まる中国・韓国の悪夢』(徳間書店)他三冊。
宮崎正弘 v 福島香織 『世界の中国化をくい止めろ』(ビジネス社)他三冊。
宮崎正弘 v 馬渕睦夫 『世界戦争をしかける市場の正体』(ビジネス社)
宮崎正弘 v 小川栄太郎『保守の原点』(海竜社)
宮崎正弘 v 佐藤 優 『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)

◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆    
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   (休刊予告)小誌は6月26日から30日まで休刊となります!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?