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【レポ】なんでもないものの変容@松濤美術館

渋谷区立松濤美術館。


HPによると結構昔、1981年から存在する。しかし自分が知ったのはかなり最近のこと。写真展が開催されてるというので、この機に覗いてきた。

※2月4日(日)まで。終了間近の投稿で、恐縮です。


初めての美術館なので、今回はミュージアムレビュー+展覧会レビュー。


さっくばらんに書いてますので、その点ご容赦ください。



アクセス

最寄り駅は渋谷から一駅の京王井の頭線神泉。しかし(沢山ある駅の出口の選択で迷わなければ)渋谷駅からでも道のりはシンプル。天気が良くて健脚な方は、渋谷駅から歩いてもいいと思う。

こういう機会でもないと普段足を運ばないエリアを練り歩き、風景を視界に収める。そこで、事前予測不可能かつ感性に響く光景に出会えることがしばしば。初めてのミュージアムを訪れる場合、むしろこの時間の方が好き/メインディッシュだったりもする。

口滑り


黄色一番左上の出口から、出たい。
ここを右にクイッと行って、大エスカレーターを降りて屋外へ。
現在のBunkamura。
道中サイン豊富なので、ご安心を。
到着。建物に差す日陰も、ムーディーさに拍車をかける。
では、中へ。



展覧会・展示内容について

今回の展覧会は、4箇所を巡った巡回展。松濤美術館はそのラスト。

※巡回データ

実はこの展覧会、千葉市美術館で開催時に知り見に行きたいと思ったもの。それは逃してしまったが、ラッキーなことに渋谷に巡回してくれた。
けっこう嬉しかったので、勝手ながら一句詠む。
~展覧会 諦めなければ まためぐる~

口滑り



今回、展示室内は撮影禁止。なのでここからしばらくは文字だけのレポート。あとの方で建物の写真を載せる。



まず展示作品に対する感想。この展覧会で特に、1枚の作品で「これだ!」というほど記憶・印象に残ったものは、ない。この展覧会はテーマ的にそれでなんらおかしくないと思っている。

厳密に言えば、「ほほぅ、こんな写真あるんだな」という点で興を覚えたものはあるが、割愛する。

沢山の写真を通して、撮影された時代を偲んだり。写真家の人物に思いを馳せたり。昔の写真運動に新しさを覚えむしろ今の芸術写真より惹かれたり。


知識という点では、写真という観点から日本におけるシュールレアリズムの展開や瀧口修造の存在感を知れたのは、良かった。たぶん大辻清司だったと思うが、写真家による「オブジェクト」の定義については、そう定義するのか、と感心した。

ちなみに、瀧口修造以外の3名、阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄はこの展覧会で初めて知った。私の知識はその程度。


時代とメディアの変遷という点では、今ではもうほとんど絶滅危惧種になってしまった感のあるカメラ雑誌が、昭和はメディアの主役(特に各家庭にテレビが普及する前)だったんだなぁと染み染み。戦前の「フォトタイムス」、戦後の「アサヒグラフ」の誌面が沢山アーカイブ展示されており、面白かった。支持体の経年劣化による雰囲気効果もあるのだろうが、どの文章・写真(まなざし)も人間味に溢れ、表現としてある種のおおらかさ、そしてそれとマッチしたバランスのよい「気概」が感じられ、独特の世界観へ自然に引き込まれる。


この展覧会の図録は制作されており、美術館現地でも、美術館公式オンラインストアからでも、その他ネット書店からでも、買える。


あと、おそらくこの展覧会と同タイミングで満を持して復刻刊行?された『大辻清司実験室』も、会場でサンプルが置かれており、手にとって読めた。



会場・建築について

展覧会の内容からは離れるが、この松濤美術館はその建築が強いウリだと理解している。公式サイト・公式SNS・ふつーの人のSNSで、ここの建築写真のいいのには無尽蔵に巡りあえるとは思うが、一応私が撮ったものをいくつか置いておく。私の記憶として。


いい建築でした。



その他

美術館HPで、「美術館年報」が毎年作成公開されている。同様の取り組みは、(少なくとも公的資金の入っている)大体どの美術館も行っているが、どこも特色があってある種「美術館の生態学的多様性」が窺え、読むと意外に面白い。ここの年報最新号(第25号・令和3年度)も読んでみたところ、「おぉっ」と思うことが書かれてたりして、面白かった。そしてその素直な記述に好感度がアップしたりもした。


今回、東京国立近代美術館から数点(展示作品リストによると2点?)出展されていた。そういえば、東京国立近代美術館でももうすぐ、写真展が始まる。「中平卓馬 火―氾濫」、2月6日から。写真つながりの勢いで、行ってこよう。


とくに今回の写真展に限ったハナシではなく、これまでのところ経験した写真展全般に対する素朴な私見。写真展を自らの意志で見に行くようになってまだ日は浅いが、1点これだけは業界的に足並み揃えて改善したらどうなの?と、日増し(というか写真展鑑賞増し)に思うことがある。キャプションやリストに表記する素材・技法「ゼラチン・シルバー・プリント」、このだらだらと長い表記をこの業界はずっとこのまま標準で続けるつもりなのだろうか?会場や書籍の冒頭凡例で、「ゼラチン・シルバー・プリント(以降「Z.S.P」と略す)」とかすればいいのでは?。面積・インク代がもったいない。カタカナで長々と「ゼラチン・シルバー・プリント」と書いて、それがカッコイイか?別にそう思わないが。具体的に展示リストを眺めてもらえれば結構多くの人にも同意してもらえる気がする。むしろ「ゼラチン・シルバー・プリント」だけ妙に長く、記号としても「見苦しい」「鬱陶しい」。控えめに言って「バランスが悪い」。



まとめ

いい展覧会、いい会場だった。

次回行く機会があれば、「建築ツアー」に参加してみたいと、思った。


近隣に住んでてもまだ行かれたことの無い方(なお、毎週金曜は「渋谷区民無料」らしい)や、何かこのエリアで用事がある際のついでなど、観に行かれてはいかがだろう。



以 上

誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。