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公開しなかったコックピット内の「15分間」

 マスメディアを通じて流出した32分間ほどの日航123便のコックピットボイスレコーダーの音声記録はすでに編集されたものである。
 メディアが受け取った時点ですでに編集されていたのか、それともメディアによって編集されたのかは不明だ。
 この流出した音声の内容はいくつかの音源を繋ぎ合わせて作られたもので、コックピットボイスレコーダーから抽出されたそのままの記録ではない。

 コックピットボイスレコーダーとは、コックピット内につけられたマイクを通じて、コックピット内の会話を録音したものだ。

 録音されたデータは耐衝撃性、耐水性、防火性に優れた鉄の箱の中に記録される。
 これらボイスレコーダーの記録を含む事故直前までの様々な機体情報が入った磁気テープ(現在はフラッシュメモリ)を保護する箱のことを通称「ブラックボックス」と呼ぶ。
 このブラックボックスの中には、コクピットボイスレコーダー(Cockpit Voice Recorder;CVR)だけでなく、フライトデータレコーダー(Flight Data Recorder;FDR)と呼ばれる機体の飛行情報のデータも入っている。
 ブラックボックスと表現する場合は、FDRないしはCVRそれぞれ、あるいは双方をまとめてそう呼ぶ。この箱にはビーコンが取り付けられており、水没してもソナーで探すことができ、比較的破損が及びにくいとされる機体尾部に設置される。

垂直尾翼の前にDFDRの表示がある

 ブラックボックスの呼び名は内容物が隠蔽・封印されており、内部構造を知る必要はないことの比喩的形容で、事故後に発見しやすいよう、赤色やオレンジ色に塗装されている。
 事故が発生した際に乗員・乗客が全員死亡することも多い航空事故では、事故原因究明の手掛かりを得るために、飛行中のコックピット内の会話や交信内容、飛行状況を記録している。
 離陸から着陸までのすべてを記録すると記録量が膨大になるため、古いデータを上書きで消しながら直近の出来事をエンドレスに記録する。このため、一定時間以前のデータは記録に残らない。車のドライブレコーダーような仕組みだ。
 事故当時のCVRはアナログ磁気テープにて記録がされていた。多くのテープユニットでは、テープを自動的に終端部で反転させ2つのリールを用いて記録していた。また8トラックカートリッジと同じサイズのエンドレステープの単一リールを使用しているものもあった。テープが一巡すると古いオーディオ情報は30分ごとに上書きされる仕組みとなっている。

 墜落した機体にはサンドストランド社製573A型飛行記録装置(製造番号3413)及びコリンズ社製642C-1型操縦室用音声記録装置(製造番号2579)が装備されていた。
 DFDR(digital flight data recorder)は、外側ケースの一部が潰れた状態で回収され、飛行のデジタル信号を記録した磁気テープ約28メートルには破断した箇所があり、また同箇所の前後約1メートルの部分には、ねじれ又は折れ曲がり等の損傷があった。

事故調査報告書より

 CVRは外側ケースの一部が潰れた状態で回収されたが、音声を記録した磁気テープには損傷がなかった。
 これらは外側ケースの一部が潰れた状態で、スゲノ沢第3支流の残骸の中から回収されている。日本航空123便の回収されたCVRは以下の4つのトラックに区切られていた。
①コックピット内エリアマイク
②機長
③副操縦士
④航空機関士
 これらの音声記録がそれぞれの独立したトラックに分かれて記録されている。つまり、30分の音声情報が4つ存在するということだ。

3.1.10.1機体の音響伝導特性及びCVRの記録再生特性の調査
 事故機のCVRには、事故当日の18時24分12秒ごろから18時56分28秒ごろまでの間、操縦室内の音声、音響や無線交信等が記録されていた。同CVRは4本の記録トラックを有し、そのうち一つのトラックにはエリアマイクからの音声が、また他の3つのトラックには機長、副操縦士及び航空機関士がそれぞれ選択した無線交信や機内通話の音声が記録されていた。
(1)機体の音響伝送特性の調査
 エリアマイクは操縦室天井のほぼ中央に1個設置されており、操縦室から距離のある機体後部で発生し音響が同エリアマイクに到達する。

「日本航空123便の御巣鷹山墜落事故調査報告書」より

 ということは、本来30分×4本のトラック=合計120分の音声情報が記録されているはずだ。
 さらにJAL123便に搭載されていたボイスレコーダーは規格より少しだけ録音時間が長く、32分ほど録音できていた。
 そのため、偶然にも緊急事態が発生してから墜落までの全ての音声情報(18時24分35秒から18時56分26秒)を記録できていた。しかし、流出したCVRの音声記録は空白となっている時間帯が多く歯抜け状態である。しかも、わざわざ時間を合わせたのか編集テープも32分で作成されており、意図的だ。
 フライトデータから大月旋回の解析をした後に、流出CVR中にこの区間の記録が殆ど欠落していることも疑問視された。
 マスコミにリークされた流出CVRはオリジナルではない。事故調の文字起こしの順と時刻に合わせてマスコミもしくは「誰か」によりACC(Area Control Center:航空交通管制部)録音分等も追加して再編集されたものである。
さらに収録されている日本標準時の音声案内は、ACCの録音用磁気テープに記録された報時信号に沿って後から挿入されたものであることがわかっている。となると、4トラック+ACC録音分で5つの音声データが実在するはずである。しかし、流出した音声はどう考えてもそれだけの情報量を持っていない。この流出テープは5つの音声情報をつぎはぎにコラージュしたものだ。
 これら流出テープは事故から15年後の2000年8月に運輸省が10年の保存期間を過ぎた1トンに及ぶ事故調査資料の廃棄の際に流出されたと考えられている。
 なぜ、運輸省から流出することとなったのだろうか?誰が流出させたのか、ではなくどのような意図で流出させたのか、を考える必要がある。隠されたものを公表することは、自己の危険を顧ない意思があるからだ。
 流出記録の廃棄の際に記録が消失するという危機感によるものだとすれば、消失する記録の中にはいったいどのような不都合が隠れていたのだろうか。

 これらを踏まえて、未公表の音声部分について考えていきたい。
 失われた記録を操縦室内音声収録用マイクの流出音声のみから考察してみる。以下は実際の音声部分を大まかにまとめたものであり、一言一句会話の内容を記載はしていない。また、流出テープの中に実際の音声が無いが、事故調査報告書に何らかの記録があったとしてもそれは記載していない。また、他のトラックに収録されている重要な情報は括弧書きとしている。

飛行ルートと高度

18時24分12秒 録音開始
客室乗務員からコックピットへ問い合わせ「〜したいとおっしゃる方がいらっしゃるんですがよろしいでしょうか?」
18時24分15秒 副機長「気をつけて」
18時24分20秒〜24分34秒(14秒間)空白
 衝撃音の直前の音声情報が14秒間に渡って消されている。この行為は事故原因が何らかの陰謀により引き起こされたのではないかという疑問を助長する行為である。

18時24分35秒  ドーンという衝撃音 客室高度警報音もしくは離陸警報音が5回鳴り、停止する。
(バラバラバラバラという引き戸を引いたような音:これは機長席、つまり副操縦士が座っていた席に収録されていると事故報告書ではされている。
18時24分44秒 客室乗務員「酸素マスクを付けてください・・・・」)

18時24分42秒 機長「スコーク77」
18時24分43秒 副操縦士「ギアドア」機長「ギア見て、ギア」
18時24分44秒 航空機関士「えっ」
18時24分47秒 副操縦士「スコーク77」
18時24分48秒 航空機関士「オレンジギア」(これは筆者の説です)
18時24分51秒 副操縦士「これ見てくださいよ」
18時24分57秒 副機長「ハイドロプレッシャーみませんか?」
18時24分59秒 機長「なんか爆発したよ」
18時25分04秒 航空機関士「ギアファイブオフ」
        客室高度警報が鳴る

18時25分06秒〜25分13秒(7秒間) 空白 
 「はいはいラジャー」から始まっており、その前に誰かと何かを話している。機長や副操縦士に対して言ったのであろうか、もしくは客室乗務員との会話に対してであろうか。おそらく機体の状況を調査していたはずである。
18時25分14秒 航空機関士「はいはいラジャー」
18時25分16秒 機長「ライトターン」
18時25分21秒 機長「Ah,TOKYO,JAPAN AIR123 request from immediate trouble request return back to HANEDA decend and maintain 220 over.」機長より東京管制へ緊急事態宣言を宣言、羽田に戻りたい旨を伝える。24000ftより22000ftに降下する旨を伝える。東京管制は承諾。
18時25分37秒〜25分38秒(1秒間) 空白
18時25分40秒 機長「Rader vector to OSHIMA,please.」
大島までのレーダー誘導を要求し方位90度の回答。
18時25分41秒〜25分43秒(2秒間) 空白
18時25分47秒〜25分51秒(4秒間)空白

18時26分00秒 航空機関士「ハイドロプレッシャーが落っこちていますハイドロが」
18時26分03秒 機長「バンクを取るなマニュアルだから」
18時26分11秒 機長「戻せ」
18時26分12秒 機長「戻らない」
18時26分27秒 機長「ハイドロ全部ダメ?」
18時26分28秒 航空機関士「はい」
18時26分31秒 機長「ディセント」(降下)
18時26分46秒 機長「ライトターン」
18時26分50秒〜27分46秒(56秒間)空白(以下太字は空白部分中の管制と機長間のやりとりは残っているが、操縦室内マイクの記録はなし。
管制「JAPAN AIR 123 confirm you are declare emergency that's right?」
   緊急事態ということでよろしいか?
機長「That's affirmative」
   その通りです。
管制「123,roger and request your nature of emergency」
   どのような緊急事態なのか?
事故調査報告書では機長からの回答なし。管制からの異常事態の問いかけに対し、急降下中でもないのに答えないなどということはありうるのだろうか)
 確実に緊急事態の内容について触れているだろう。管制は緊急事態の詳細について質問しており、現場で判明していることを語っているはずだが、意図的に削除されている。
18時27分47秒航空機関士「ハイドロプレッシャーオールロス」
18時27分57秒 副操縦士「カンパニーにリクエストして下さい」
18時28分00秒 機長「なんで騒いでんの?」
18時28分06秒〜29分00秒(54秒間)空白(以下太字は空白中であり、管制と機長間のやりとりは残っているが、操縦室内のマイクの記録はなし。
管制「JAPAN AIR 124 fly heading 090 rader vector to OSHIMA」
   大島までは方位90で飛行せよ
機長「But now uncontrol」
   現在操縦不能
管制「Uncontrol,roger understood」
   操縦不能、了解)
 なんで騒いでるの?に対しての回答が入っているはずである。さらに機体の制御のための技術的なやりとりが入っていないとおかしい。
18時29分00秒機長「気合を入れろ」
18時29分05秒 機長「ストール(失速)するぞ本当に」
18時29分09秒 機長「ディセント」
18時29分31秒〜30分28秒(57秒間)空白
 空白後に航空機関士と客室の会話の途中から始まっている。おそらく客室の状況報告を受けているのだろうが、削除されている。

18時30分28秒 航空機関士「オキシジェンプレッシャーどうですか?オキシジェンマスクおっこってますか?」
(18時31分00秒 管制「can you  descent?」降下できますか?
 18時31分07秒 機長「Ah,roger now descending」現在降下中
ここで管制から「72マイルで名古屋ですが、名古屋に行きますか?」と問う)
18時31分21秒 機長「Ah,negativee request back to HANEDA」
(18時31分28秒 管制「これから日本語で話していただいて結構ですから」
緊急事態であれば母国語での会話が可能となる。)
18時31分33秒〜31分34秒(1秒間)空白  24900ft
18時32分11秒 航空機関士「荷物のいちばん後ろですね?荷物の収納スペースのところがおっこてますね、これは降りた方がいいと思います」
18時32分40秒〜33分13秒(33秒間)空白
 引き続き空白の前後の会話はトラブル箇所についての会話だ。エマージェンシーディセントが必要かどうかだが、話してるのはなぜか航空機関士だけである。

18時33分37秒 航空機関士「R5のマスクがストップですから、エマージェンシーディセンドやったほうがいいと思いますね」
※緊急降下:Emergency Descent マニュアルに従った緊急降下のこと
18時33分46秒 航空機関士「マスク我々もかけますか?」
18時33分48秒 機長「はい」
18時33分49秒 副操縦士「かけたほうがいい」
18時33分57秒〜35分34秒(97秒間)空白
 マスクに関しての話をしているが、結局マスクを装着している痕跡がない。ここまで話しておいてなぜ辞めたのか。そのやりとりも録音されていたはずである。

JALからのコンタクトに対応
18時35分34秒 航空機関士「ええとですね、今あのR5のドアがブロークンしました。それで今ディセントしております」「今エマージェンシーディセントしていますのでもう少ししたらコンタクトしますので」「このままモニターしておいてください」
18時36分22秒〜38分31秒(130秒間)空白 22000ft
 どうやって降下するかについてがぽっかりと抜けている。2分にも渡って録音がない。空白後はギアダウンの提言から突然始まっている。

18時38分32秒 航空機関士「ギアダウンしたらどうですか?」
18時38分45秒 機長「出せない、ギア降りない」
18時39分13秒 航空機関士「オルタネートでゆっくり出しましょうか?」
18時40分22秒 航空機関士「ギアダウンしました」
18時40分26秒〜46分02秒(336秒間)空白 
(ギアダウンし大月を右旋回しながら22400ftから13500ftまで降下

管制より全航空機に向け緊急事態のため周波数を切り替えるように指示。横田基地より連絡が入っているがコックピットマイクの音声はなし。
18時45分37秒横田基地「JAPAN AIR ONE TWENTY THREE YOKOTA APPROACH on guard.If you hear me,Contact YOKOTA 129.4」
18時45分46秒 機長「but now uncontrol」)
 5分間にも渡って削除されている。降下を開始して大月を旋回する間が全て削除されている。横田基地からのコンタクトもあり、空白後の会話から急に着陸地点についての会話が始まっている。着陸地点についての相談がされたに違いないのであるが、編集されている。この部分が最も長い削除部分である。
18時46分09秒管制「JAPAN AIR123、羽田にコンタクトしますか?」
18時46分16秒 機長「このままでお願いします」
18時46分20秒 管制「コンタクトしますか?」
18時46分21秒 機長「このままでお願いします」
18時46分33秒 機長「これはだめかもわからんね」
18時47分17秒 管制「現在コントロールできますか?」
18時47分19秒 機長「アンコントローラブルです」
18時47分22秒〜47分34秒(12秒間)空白 
 8000ftまで降下、客室高度警報が一旦停まる。客室内の気圧がアラーム範囲内に入ったと考えられる。

18時47分39秒 機長「おい山だぞ」
18時47分44秒 機長「コントロールとれ右」
18時47分53秒 機長「山にぶつかるぞ」
18時48分00秒 副操縦士「マックパワー」
18時48分23秒 機長「頭下げろ」
18時48分25秒 副操縦士「今舵いっぱい」
18時48分40秒 機長「山行くぞ」
18時49分18秒〜49分19秒(1秒間)空白
 高度が下がりすぎた(6000ft)ため再上昇を試みる。その後失速警報が鳴る。

18時49分39秒 機長「あーだめだ」
18時49分41秒 機長「ストール」
18時49分42秒 機長「マックパワー、マックパワー、マックパワー」
18時49分45秒 機長「ストール」
18時49分47秒 機長「はい高度落ちた」
18時50分06秒 副操縦士「スピードが出てます」
18時50分09秒 機長「ドーンと行こうや」
18時50分27秒 機長「がんばれ」
18時50分50秒 機長「パワーでピッチはコントロールしないと駄目」
18時50分53秒 航空機関士「パワーコントロールさしてください」
18時51分08秒 副機長「フラップは?」
18時51分10秒 機長「降りない」
18時51分11秒 航空機関士「オルタネートで」
18時51分38秒 航空機関士「フラップ出てますから」
18時51分41秒〜53分31秒(110秒間)空白 高度9800ft〜13000ft
 操縦者たちの悲痛な叫びがこの辺りから入っている。強い語気や操縦に関する奮闘が収録されていると思われる。何かプライバシーに関わることが収録されていたのだろうか、2分近い時間が削除されている。

18時53分31秒 機長「えーアンコントロール、ジャパンエア123アンコントロール」
18時54分22秒 機長「リクエストポジション」
18時54分56秒 航空機関士「熊谷から25マイルウェストだそうです」
18時55分15秒 機長「頭上げろ」
18時55分34秒 副操縦士「ずっと前から支えています」
18時55分47秒 機長「パワー、みんなでくっついてちゃ駄目だ」
18時55分49秒 副操縦士「フラップアップ、フラップアップ、フラップアップ、フラップアップ」
18時55分58秒 機長「フラップ」
18時55分59秒 航空機関士「上げてます」
18時56分04秒 機長「パワー」 
18時56分16秒「PULL UP PULL UP PULL UP」GPWS(対地近接警報)
18時56分28秒 衝撃音と共に録音終了。 

 合計915秒間、コックピット内の15分15秒ものデータが公開されていない。噂では未公開部分にはプライバシーに関わることが収録されているために流出されなかった、というのを聞いたことがある。だが、前後の会話から考えるとそれだけが理由ではなさそうだ。機体の損害状況について、着陸について、横田との会話についてが意図的に消されてるとしか思えないのだ。

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