学校におけるICT導入について、情報担当者の持つべき考え方


 今回は、私が情報係の担当者として、普段から意識していることを紹介します。それは、たった2つのことです。

・誰でも気軽に使えること
・教員や生徒にとって効果の有るものであること

ということ。とても当たり前のことなのかもしれませんが、私の知っている中でも、これを意識しない担当者が何人もいるのです。20年近く教員をしていますが、最初からこの2つを意識していたわけではありません。ここ数年、総合教育センターで講師をさせていただいているのですが、そこで話をするにあたって、自分のスタンスというか、考え方を整理したらこの2点にまとまった、というだけのことですが。

誰でも気軽に使えること

 例えば、「こんなスゴいことが出来る機材なんです!」というものがあって購入しても、説明書を何度も読みながらでなければ使えないものって、身の回りにありませんか?

 例えば、「学校の放送室の放送機材の使い方」って分かりますか?私の知っている限り、簡単な操作手順書が置いてあったり、シールで電源を入れる順が貼ってあったり、担当者しか使い方を知らなかったりと、面倒なものが多いように思います。でも、例えば、買い換えたばかりのエアコンや冷蔵庫、コピー機の使い方って、何となく分かりますよね。説明書を読まなくても、最低限の使い方が分かることって大事だと思うんです。

 もちろん、それらのモノには多くの機能があるはずで、使えれば便利な機能もたくさんあるのかもしれません。でも、メインとなる機能を使うのに他人に聞かなければ使えないのでは意味がありません。ICTスキルや興味関心の差に関わらずに「使い始められるもの」を選定・導入することが担当者の役目だと思っています。もっと便利になる機能は、後日みんなが慣れてきたところで紹介すれば十分なのです。

 私が過去に導入した製品と同じ機能を持った別の製品を、上部組織から一斉配布されたことがあります。配布にあたって、「どうせ配布してもらえるなら、こちらに変更出来ませんか?」と申し入れをしたのですが、残念ながら既に選定は終わっていたようで、私の申し入れた製品は採用されませんでした。やはり、配られた機材は初心者には使いにくく、私が勧めた商品の方が価格も安く、名も通っているのに、なぜ?と言いたくなります。現場を知らない人が、業者に言われるがままに選定してしまったのではないかと疑いたくなります。

教員や生徒にとって効果の有るものであること

 こちらはもう言うまでも無い話ですが、予算は誰のために付いているか考えれば、生徒のためであり、先生方の業務が円滑に進むためです。たまに、担当者が個人の趣味で購入をお願いしたとしか考えられないものが学校に有ることもあります。「これは何のためにあるんですか?」と聞いても、「異動した○○先生が買ってもらったらしいけど、誰も使ってないよ。何のための物かも良くわからない。」という返答。こういった話は他校でも良く聞きます。むしろ、なぜ稟議が通ったのか分かりません。
 教育委員会から配布されるものも同様です。現場の声を聞かずに導入を決めたり、配布したけど使い方の講習会も開かれない、といった話も良く聞きます。そんなものは使われずに倉庫の隅で埃をかぶってしまうことになってしまいます。

 私は新製品が好きです。恐らくアーリーアダプターなのでしょう。お金が無いので欲しいもの全部を買うわけではありませんが、アンテナは常に高くはっています。でもそれは個人の私物での話であり、学校での物品購入は別です。新製品でも枯れた技術の上にあるものであれば話は別ですが、全くの新ジャンルのものは学校には向かないと思っています。公立学校での勤務ですので、物品購入は税金の利用なのです。校内での先生方の話を聞き、困っていることがあり、物品購入により改善ができるものを購入すべきだと思っています。

 現在の教育のICT化は、生徒の学びの向上と、先生方の業務改善のために進んでいるものです。これまで教科書、黒板、チョークだけで授業をしていた先生方に、これを使ったら何がどう改善されるのかを正しく伝えることが、担当者に求められています。そのためには、まずは情報収集を行い、可能であれば購入前に業者から貸与をお願いし、自校での有用性を確認しなければ購入には踏み切れませんし、稟議も通せません。

最後に

 学校の情報担当者が1人だけ、という学校も少なくないと思います。そういった人が陥る典型的な悪いスタイルは2つ。個人の趣味に走ってしまうパターンと、困って何もしないパターン。そういった担当者にならないためには、校外にアドバイスを求めることが出来る人を見つけることと、複数の業者と仲良くなること、そして何よりも、校内で自分の意見を相談できる仲間を見つけることだと思います。
 新しい技術を導入するには校内での反対意見も出てくる場合もあるでしょう。そんな時に、校内での声をあらかじめ拾っておくことで稟議も通りやすくなるはずです。そして、実際に導入がされた後も一緒に活用していってくれるはずです。

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