見出し画像

3. 21-22のイリアス 「抜擢」


Copa de Campeones

まずはフベニールA(U19)の昨季の結末から振り返る。

Division de Honor Juvenilグループ3(DH3)第2フェーズで、バルサは2勝1分1敗で首位エスパニョールと勝ち点で並んで最終節を迎えることとなった。

しかし、このタイミングでフベニールAをコロナが襲う。濃厚接触者も含めて14選手が欠場し、コーチ陣もベンチ入り不可になった。バルサBでの戦いを終えてオフに入っていたペケとバルデを呼び戻し、フベニールB(U18)の選手たちも加えて、6月10日セルダニョーラ戦に臨んだ。
バルサは3-1で勝利した一方、エスパニョールvsタラゴナは引き分け。危機的な状況を乗り越えて、バルサがDH3逆転優勝を達成した。


Copa de Campeones準々決勝の相手はレバンテ。6月16日、アウェイでの1stレグにイリアスはフベニールAで初の偽9番で先発出場し、同期アラルコンのクロスに合わせて先制点を決めた。

6月20日、ホームでの2ndレグではイリアスは右WGに戻り、延長戦の末2-1(合計3-2)で準決勝へ進出する。
6月24日、準決勝マラガ戦ではPKによる1点のリードをそのまま保って決勝へ駒を進めた。
6月27日、デポルティーボ・ラ・コルーニャとの決勝でも、イリアスは得点を挙げる。

しかし、バルサはデポルのカウンターに屈して3失点し、惜しくも準優勝に終わった。


“positive”

2週間のオフを経て7月10日、イリアスはトップチームの面々と共にPCRテストを受けた。代表組が不在のプレシーズン前半の間、トップチームの活動に参加する機会を与えられたのである。
しかし、テスト結果は陽性。この機会を逃すことになってしまった。

7月27日、2週間以上かかったがやっと陰性となり、バルサBのプレシーズンに合流した。
2部昇格を逃したバルサBは、前線で主力だったコジャド、コンラ、レイ・マナイが退団。セグンダB(旧3部)の再編により昨季上位陣によるRFEF1部(新3部)が創設され、レベルの上がるリーグ戦に対応するべく攻撃陣には多くの補強が行われた。WGにはザカ(昇格)、ペケ・ポロ(2年間レンタルから復帰)、アランダ、アブデ、ジュグラが加入し、ペケとニルスも含めて7人がポジション争いの相手となった。


04世代の同期、U-18代表からの旅立ち

9月上旬、スペイン、ポルトガル、スイス、フランスの4か国によるU-18の大会が開かれた。
バルサからはアルナウ・カサス、イリアス、ガビ、アルメイダ、ルッツィの5選手が選出された。
9月1日、初戦のポルトガル戦は、ファビオ・ブランコ(現バルサB)→ルッツィのラインで2ゴールを決めて、2-0で勝利。3日、スイス戦も2-1で連勝。
5日、フランス戦はまたもルッツィの2ゴール、イリアスは2点目をアシストし、2-2の引き分け。2勝1分でスペインの優勝となった。


ガビはこれを最後に、10月からは3段階飛び級でスペインA代表に招集され、早くもルイス・エンリケ監督から大きな信頼を得ている。
アルメイダはA代表の国籍でエクアドルを選び、12月5日エルサルバドル戦でデビューした。


UEFA Youth League

Ciutat Esportiva Joan Ganperの中でフベニールがホームゲームで使用するCamp 7は、芝生のコンディション悪化が目立つようになっていた。
9月11日、今季リーグ戦初出場となった第2節のダム戦で、他ならぬイリアスが被害を受ける。試合終盤、ピッチに足を取られて転倒し膝を強打したイリアスは、自力で立ち上がることすらできずに車いすで運ばれていった。

試合終了直後は重傷だと察しショックを受けていたが、幸いなことに無事であった。
結局、Camp 7の芝生は翌月張り替えられることとなる。


昨季は中止になってしまったUEFAユースリーグが、今季は9月14日に開幕した。
グループステージ第1節バイエルン戦は2-0で、結果以上に内容で差をつけて上々の滑り出しとなった。イリアスも得意のドリブル突破を見せるだけでなく、2点目のシーンではボール奪取で攻撃の起点となった。

しかし、欧州の舞台は容易ではなかった。
第2節ベンフィカ戦はGKアストララガの退場もあり、0-4の大敗。
第3節ディナモ・キーウ戦はホームながらスコアレスドローで、3位でグループステージを折り返すことになった。

11月2日、首位ディナモ・キーウとの2戦目を迎えた。先制され、同点に追いついた直後の前半40分、イリアスは2度目の警告を受けて退場してしまう…

チームも1-4で大敗。首位ディナモ・キーウは勝ち点10、2位ベンフィカが勝ち点9と、勝ち点4のバルサが逆転で決勝トーナメントに進出するのは極めて難しくなってしまった。

結局残り2試合も連敗で2大会連続のグループステージ敗退、不完全燃焼に終わった。


カペジャスの抜擢


10月27日、トップチームはラリーガで9位に沈み、クーマンが解任された。トップチームはバルサB監督セルジ・バルジュアン、バルサBはアルベルト・カペジャスが監督代行となった。

バルジュアンがアブデをトップチームに招集し、バルサBのWGが1枠空いた。9節終了時で招集3試合・出場時間55分に留まり、フベニールAを主戦場にしていたイリアスを、カペジャスはアブデの代役に抜擢する。

バルサBデビューからちょうど1年となった11月6日、セビージャ・アトレティコ(セビージャのBチーム)戦でイリアスが期待に応える。前半6分に先制点となるバルサBでの初ゴール、14分後の前半20分に2得点目を決めた。


その活躍を、監督就任を公式発表されたばかりのこの男が見ていた。


チャビの大抜擢

監督としてバルサに帰ってくることは決まっている。決まっていないのは、それがいつになるのか。バルサの監督人事の切り札がついに切られた。

11月20日、カンプノウでのバルセロナダービー。チャビは監督としてのバルサデビュー戦で、もう1人一緒にトップチームデビューさせることを決断する。

最大の見せ場は前半13分、ゴール前に入り込んでガビのグラウンダークロスに合わせるも、シュートは枠を大きく超えてしまった。

右WGのイリアスがボールを持つと、マッチアップの相手左SBペドロサだけでなく左SHプアドもヘルプに来て、1対2を作られることが多かった。得意のドリブルを仕掛けるべきではない数的劣位の局面ばかりのまま、前半のみで交代となってしまった。


後半3分、バルサがメンフィスのPKで先制し、エスパニョールは前に出ざるを得なくなる。後半から登場したアブデは、スペースが空いてドリブルを仕掛けやすくなった状況を活かし、大いにアピールすることとなった。


生き残るために必要なもの

12月14日、マラドーナ・カップのボカ・ジュニオルス戦。メッシやアグエロが背負った19番を与えられ、後半から出場した。

クリスマス休暇明けにトップチームでコロナ陽性者が大量発生してしまい、1月2日マジョルカ戦と、5日コパデルレイのリナレス戦で先発出場した。

リーグ戦ではバルサBと同じグループに所属しているリナレス相手には、本来の実力を示したいところだった。しかし、自らが決定機を逃した直後のプレーで先制を許し、前半のみで交代となってしまった。


トップチームでの4度の出場機会で惜しいシーンは何度か迎えたものの、結果を残すことはできずアピール不足に終わった。

バルサのFWとして世界中の一流アタッカーを相手に生き残るためには、ゴールやアシストをコンスタントに記録し、目に見える形で存在価値を証明し続けなければならない。ドリブルで相手の守備を崩すだけでなく、その先でちゃんとゴールに絡めるようになることを、下のカテゴリーで高めていく必要がある。


勝利が遠いバルサB

12月19日第16節コルネジャ戦から3月5日第27節タラゴナ戦まで、イリアスはバルサBで10試合連続出場を果たす。

トップチームで1部のレベルを体感したことで、3部相手には積極的に思い切りよくプレーすることができるようになった。ドリブルで相手の守備を切り裂きゴールへ迫る形を、より高頻度で作れるようになっていた。

しかし、この10試合の成績は1勝5分4敗で、チームの勝利に結びつかない。順位も7位から13位まで落ち、残留争いに巻き込まれつつあった。


冬の移籍市場では、トップチームの補強に伴ってアブデとジュグラがバルサBへ戻り、それぞれ左WGとCFで固定されるようになった。さらに、バレンシアのカンテラーノであり半年でフランクフルトから母国への復帰を選んだ、同い年のファビオ・ブランコが加入した。
シーズン中盤からインテリオール起用が主となったアランダを除いて、FWの残り1枠をWG5人+CF2人の計7人と争うようになり、イリアスは2月以降出場時間を減らされていった。


代表活動の間に…

3月12日のアンドラ戦は先発予定だったが、ウォーミングアップ中の負傷で連続出場が止まる。19日のコルネジャ戦は負傷明けで招集外、27日のベティス・デポルティーボ(ベティスのBチーム)戦は世代別代表への参加などで、バルサBでは欠場が5試合続いている。
その間に、チームはコルネジャ戦から4連勝で復調し、3得点で大きく貢献したファビオ・ブランコが右WGのスタメン争いを制しつつある。

一方、世代別代表では1月の練習からU-19へ飛び級し、3月23日のオーストリア戦では自らのチャンスメイクからの流れでゴールを決めた。

3月4日に来季からのバルサ加入が発表されたパブロ・トーレと、早速仲良くなっているようである。


4月16日

バルサBは勝ち点45で12位。4位サバデル(勝ち点49)から17位コルネジャ(37)までの14チームが勝ち点差12の僅差でひしめき合っている中で、定まってきたチーム内での序列を残り7節で覆すのは困難だろう。イリアスにとっては厳しい状況を迎えてしまった。

フベニールAは勝ち点72で、5試合残しながら2位エスパニョールと勝ち点差12で首位を快走している。次節は4月21日のミニデルビ、この直接対決で勝利すればDH3優勝が決まる。
おそらく、今季終盤は主戦場がフベニールAに逆戻りすることになるだろう。Copa de Campeonesでリベンジを果たし、今季こそスペイン王者になることができるのか?チームを勝利に導く働きに期待したい。

そして、来季こそはバルサBの主力に定着したいところである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?