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発売から13年目のいま、初代iPhoneをレビューしてみる(2020/6)

初代iPhoneは2007年1月10日(日本時間)に行われたMacworld Expo 2007で発表、同年6月29日(日本時間)に発売された。今年で13年が経過した初代モデルを久しぶりに取り出してみたので、この記念すべき初代モデルを現在の目線で紹介する。なお日本で最初に発売されたモデルはiPhone 3Gで、このiPhone発売の1年後にあたる2008年7月11日に発売された。

美しいアルミ筐体とクロームメッキのメタルフレーム

外観は背面がつや消し仕上げかつ曲線を多用したアルミボディで、当時世界初ともいえるマルチタッチスクリーンの周りは、クロームメッキで仕上げられている。背面下部は黒いプラスティック製で、iPhone内部にある各種アンテナはここから通信を行っている。本体の重量は135gだ。

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物理ボタンは当時としては画期的に少なく、前面にホームボタン、上部にロックボタン、左側にボリュームボタンとミュートボタンが存在するのみだ。現在まで続くiPhoneシリーズではついにホームボタンすら排され、よりシンプルになった。

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なお次の写真の右側にあるのがイヤホンジャックだが、3.5mmという標準的なものを採用しているにも関わらず開口部が細く、そして奥深いため、小型かつ長めのものでないと利用できないというストイックな仕様だった。

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コネクタは30ピン、いまでも美しい液晶パネル

下部にはマイクとスピーカーがあり、中央には現在では大きく感じる「USB ドックコネクタケーブル(30ピン)」と呼ばれるコネクタが存在している。これは当時のiPodが採用していたものと同一で、当然互換性があった。

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なお、現在のiPhoneに備わるライトニングケーブルと比較するとその大きさに改めて驚くことだろう。ちなみにこの30ピンドックコネクタケーブルは、左右にボタンがあり、両方を押すことでiPhoneから抜ける。逆に言えばケーブルはしっかりとiPhoneに固定されるため、これを利用したサードパーティ製ストラップも存在した。

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3.5インチという当時、大型の液晶パネルは解像度320 x 480ピクセルというサイズで、現在ではとても解像度が低く感じるもののその美しさは健在だ。もちろんRetinaディスプレイほどではないが、初めてみたときの筆者の感想は「写真がガラスに張り付いている!」と感じたほど。当時、他の液晶は美しくなかったのでなおさらだ。

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なおタッチパネルは前述のように、画期的なマルチタッチスクリーンを採用している。多くのデバイスが全画面表示に対応している現在、画面上下の液晶ではない今で言う「ベゼル部」が広く感じてしまうことは否めない。

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画期的であった各種標準ソフトウェア

iPhoneのロックを解除するには、ホームボタンかロックボタンを押したあと、画面下部に表示されるロック解除ボタンを右に「スワイプ」すると可能だ。これはその後登場するAndroidなどでも採用されることとなった解除方法である。

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こちらは初代iPhone(通称 iPhone GSM)のロック画面のスクリーンショット。筆者が壁紙に設定している「クマノミ」は、Macworld Expo 2007でスティーブ・ジョブズがiPhoneをデモンストレーションしていたときの壁紙のオマージュで、実際にクマノミの壁紙が初代iPhoneをはじめ、歴代iPhoneに実装されたことはない。当時のMacに採用されていた壁紙をAppleが(あるいはジョブズが)使用しただけのことである。ときどき「公式壁紙」などと風潮しているサイトもあるが、それは嘘だ。初代iPhoneのデフォルト壁紙は「地球」である。

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各種アプリアイコンの並ぶホーム画面は、最初から多くの標準アプリが並ぶ。筆者のiPhoneは最終版のiOS(なお当初はOS X iPhoneと呼ばれていた)3.1.3にアップデートしているが、購入当時はApp Storeなどが存在しなかった。現在では考えられないことであるが、AppleはiPhone向けのアプリ開発をサードパーティに開放していなかったのである。

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MapsアプリはGoogle Mapsを利用していて、アプリは現在でも利用可能だ。しかし初代iPhoneには残念ながらGPSが内蔵されておらず、どこでも現在位置を確認するといった使い方はできなかった。当時この地図アプリは2本の指で画面をなぞることで地図を拡大縮小できるという「初めての地図体験」だったため、実に衝撃的だったことを覚えている。

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Webからデータを取得していた株価や天気予報、YouTubeといったアプリは、現在では利用できなくなっている。

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進化するiPhone、コピーアンドペーストも可能に

物理ボタンがないiPhoneでは、マルチタッチスクリーンを利用したソフトウェアキーボードを使って文字を入力する。なんと現在では当然のソフトウェアキーボードも当時は「入力しにくい」といった意見も多かったのである。そして当初は日本語入力やコピーアンドペーストといった機能はなかった。そういえば、アップデートによってそうした機能が加わるまでは、JavaScriptなどを駆使して作り込んでいたなと、そんな記憶が蘇ってくる。

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アップデートによって標準ブラウザSafariも進化し、初代iPhoneの最終版である3.1.3ではかなり現在に近い使い勝手を実現していた。しかし、現在のWebサイトの画像は解像度が大きく、また多く利用されているため、高速な回線を利用したとしても、キャッシュメモリの限界かApple公式サイトすら読み込みに時間がかかった。さらにHTML5などが駆使されたGoogleは、ついに検索結果が返ってくることがなかった。

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しかし、世界最高のWebサイト(いや、あえてホームページと呼称したい)である「阿部寛」氏のホームページは違った。初代iPhoneでも一瞬で表示でき、さらに操作性も抜群だ。

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もちろんiPhoneを横向きにすると画面が回転し、横に広い画面でブラウジングが楽しめる。阿部寛氏のホームページもご覧の通り。まるでiPhoneから阿部寛氏が飛び出てくるかのような錯覚すら覚える迫力がある。

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カメラは背面にひとつ。使い方にはコツが必要

カメラは背面にひとつ装備され、その解像度は2.0メガピクセルだ。オートフォーカス機能はなく、固定焦点のため、近くを撮影しようとするとピントがあわない。写真はテーブルに置いたiPhone 4を40cm程度の距離で撮影したものだ。

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また、青空を撮影すると、明るすぎるのかさまざまな色が出現してしまううえ、ピントもあってくれない。パンフォーカスに頼りたくてもレンズの絞りがf2.8であるため、それも難しいのだ。

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実はこのカメラ、テーブルで正面に座った人物を撮影するために最適化されていたためで、1m弱の位置にピントが固定されているのである。したがって、遠すぎず近すぎないものを撮影するといったコツが必要なのだ。写真は80cm程度離れて室内で撮った写真。初代iPhoneでの撮影は、カメラの能力に頼らずに、撮影者が必要な工夫するというアナログチックな考え方が、むしろ魅力的に感じるほどだ。

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まとめ:現在まで続くiPhoneシリーズの「最初」に感動

当時感動した外観や触り心地、動作は現在でも健在だ。少ないボタンや大画面といった現在まで続くiPhoneの特徴はこのとき既に完成していたのである。カメラや画面、CPUといった進化は著しく、初代iPhoneが本来の意味で実用に耐える場面はないかも知れない(※筆者は2018年ごろまでオーディオ専用に利用)。しかし、当時の最新技術に思いを馳せたり、阿部寛氏のホームページを閲覧するなど、最新モデルにはない、大きな魅力とオーラが初代iPhoneに存在することは間違いないのである。



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