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キャリア形成に悩んだら

こんにちは、医局にっぽんです!
最近現地開催のイベントも増えてきており、顔を合わせる機会も少しずつ増えてきている空気を感じます。
とはいえ物理的な距離を解決できるオンラインは相変わらず便利なもので、私たちは引き続きオンラインメンタリングに取り組んでいる最中です。

さて、今回のメンタリングで話題になったのは「キャリアもままならないよね問題」についてです。
専門医を取得するには一定の経験を積む必要があり、総合診療・家庭医療専門医に関してはある程度決められた研修施設で半年〜数年の勤務が求められています。ストレートにこの研修を進められる人もいれば、中には様々な理由で時間のかかる方もいます。その理由としてライフイベントや健康問題が想像しやすいかと思います。

その理由の一つである義務年限についてご存知ですか?
地域枠や幾つかの大学(自治医科大学や東北医科薬科大学など)の卒業生に課せられる勤務年限のことを指します。義務年限中は都道府県の指定する医療機関で勤務する必要があり、自分の志望する専門科目に寄らない勤務が求められることもあります。
今回のメンティーはその派遣先指定によって研修修了を遅らせざるを得なくなったとのことでした。

各都道府県ごとにできるだけ卒業医師のキャリアを踏まえて派遣先を決めようとしていることは聞いていますが、何十人もいる医師の希望を全て叶える難しさは想像に難くありません。
一方で、自分の目指しているキャリアが外的な影響で中断せざるを得ない切なさも非常に共感します。
自分のキャリアがままならない時、私たちはどうすればいいのでしょうか?
その時のメンタリングで伝えきれなかった内容も含めて、私たちなりの回答を述べてみたいと思います。

一つとして「専門医取得=キャリア、ではない」という考えを持つことです。
医師の世界では専門医を取る・博士号を取る・サブスペシャリティを持つ、といった文脈でキャリアが語られることが多いように感じます。
決して間違っていないとは思いますが、一方でこれはキャリアの一部分に過ぎないとも思っています。
キャリアとは職業遍歴としての側面(履歴書に書く内容)と職業アイデンティティとしての側面(仕事に対する自己イメージ)があるとされています(1)。専門医を取ることは履歴書に厚みを持たせるためには重要ですが、それ以外にも様々な方法で自分のキャリアを高めていけるはずです。
専門医取得が遅れた1年で取り組んだ活動が、自分の仕事を更に面白く感じるきっかけになったり。
産休・育休で休んだ分だけ家族や地域を見る考え方が深くなって、ますます臨床での言葉に厚みが出るようになったり。
「キャリア(職業アイデンティティ)が深まるきっかけは資格取得だけではないんだよ、だからストレートに専門医が取れないことを卑下する必要はないんだよ」
こんなことを知っておくだけで、少しだけ肩の力が抜ける感じがしませんか?

もう1つが「クラムボルツの計画的偶発性理論」です。
この理論(2)で重要視されているのは以下の点です。


 1. 予定外の出来事がキャリアに影響を及ぼすことは、正常であり、必然的であり、望ましいことであると認める
 2. 優柔不断は改善すべき問題ではなく、それぞれが将来の予期せぬ出来事を活用することを可能にする、計画的でオープンな心の状態であると考える
 3. 予期せぬ出来事を、新しい活動に挑戦し、新しい興味を持ち、古い信念に挑戦し、生涯学習を続ける機会として活用する
 4. 将来有益な予期せぬ出来事に遭遇する可能性を高めるために、行動を開始する
 5. キャリアを通じて継続的に学習する


変動の激しい現代において、この世は予定外だらけです。専門医取得だって予定調和通りにうまくいかないこともしばしばです。
だからこそ、その”予定外”をチャンスと捉えて利用する・より有益な”予定外”に出会えるように日頃から研鑽を積むといった心がけをこの理論は私達に求めています。そして、求める未来に努力を重ねることが結果として望ましい未来を引き寄せるきっかけになりうることも示唆してくれています。
義務年限のように私達でコントロールできない未来に一喜一憂するよりも、その予期せぬ出来事を最大限活用できるように準備しておくことでどんな変化にも波乗りして進んでいけるのではないでしょうか。

つらつらと書いてみましたがいかがだったでしょうか。
私達医局にっぽんのメンバーもまた、昔はキャリアに悩める子羊でした。今も悩みは形を変えて続いてはいますが、それでもキャリアの波を少しだけ先に進んだ者として相談に乗れることもあるかもしれません。
そんなキャリアの相談をしたい方もぜひ連絡をお待ちしています。

私たちの活動に興味を持って頂いた方や詳しく話を聞いてみたい方は、ぜひご一報ください!
 ikyoku.nippon★gmail.com ★→@

参考文献
1. キャリアデザイン入門Ⅰ;大久保幸夫;日本経済新聞出版社
2. Planned Happenstance: Constructing Unexpected Career Opportunities:https://canvas.wisc.edu/files/42959/download?download_frd=1&verifier=caP62PzAqk5QStLMj6KrA2onMByNOjgvvItndNeU

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