「ハムレット」2019年5月29日
しばらくサボってましたが、また再会しようと思います。
ひかえめに言って、とても良かった!
初日に観に行ったんですが、今日は大分こなれてきた感じで、全体的に安定した感じ。
主演の岡田将生君ののどがちょっと心配だったけど、いやあー、なんだろう、めちゃくちゃ造形が良くできてるなと(笑)まさに王子様www
で、今回のハムレット、ここ最近のトレンドらしく、とても現代的な解釈になっておりました。
まず、俳優陣に女性が増えてる。
ハムレットって、ガートルートとオフィーリア以外女性が出てこない上に、ガートルートは悪女、オフィーリアは添え物みたいな扱いがほとんどじゃないですか(笑)
今回は衛兵と、ギルデンスターンが女性という設定で、ローゼンクランツとギルデンスターンが結婚しています。
しかも、この二人がイギリスで殺されると言う設定が消されていました。
割りと今までのハムレットの解釈って、ハムレットの若さ故の苦悩と暴走という部分は変わらないのですが、ハムレットとオフィーリア、ホレイショー、殺された先王以外の人物は、何かしら欲望がある、悪人として描かれてきたように思います。
善良だった王の復讐をする、ある意味勧善懲悪、でいて、復讐を成し遂げたが、人を呪わば穴二つ、ハムレット自身も復讐の代償を払うことになった、という解釈が多かったんじゃないでしょうか。
今回は、もっと政治的な解釈が強い演出になっていました。
冒頭、ノルウェー王を討ち滅ぼし、その甥である同じ名前のフォーティンブラスが、復讐を誓って仲間を集めている、という噂話から始まります。
そもそも殺された先王を善良だったと言っているのはハムレットだけで、そのほかの人たちは口ではそう言ってるけど、本当に善良な王だったのか怪しいという印象を持つんですよね。
先王は戦に強い王ではあったかもしれないけど、王を殺した弟のクローディアスの方が、イギリスやフランスと外交関係を保つ、現代的な良き為政者なんじゃないかという印象を持ちます。
ガートルートとの結婚も、フォーティンブラスの動きなどを予見し、国内の安定を図るという意味では理にかなってるんですよね。
さらに、オフィーリア、レアティーズの父、大臣であるポローニアスですが、こちらも比較的善良な大臣だったのではないかという印象です。
むしろ、オフィーリアに対し、レアティーズ、ポローニアス二人がかりで、位の高い人間の気まぐれに惑わされてはならない、絶対に本気にするなと忠告するのも、まっとうな家族の主張です。
そんななか、思い込みで突っ走るハムレット……本人は狂気を演じていると言ってますが、だんだんと、彼の狂気はホンモノなんじゃないかという気がしてきます。
そしてラスト、惨劇の後へフォーティンブラスが乗り込んできて、デンマーク王朝の最後を告げます。
要するに、若きハムレットの復讐譚ではなく、かつては栄華を誇ったデンマーク王室滅亡の話として描かれていたんじゃないかと。
その辺がかなり斬新で、現代的だなあとしみじみ。
シェイクスピア作品はやはり、その時代その時代で演じられる意味が求められるので、演出家はやりがいがあるだろうなあ。
オフィーリアもかつては、ただただ周りに流されるだけの意思のない添え物扱いのような印象だったんですが(笑)今回は、ハムレットの狂気に翻弄されてしまった悲しい少女という印象でした。
あと、ガートルート。これも今までは女のエゴ丸出しの悪女という印象だったんですが、かなり冷静な人というイメージでしたね。ハムレットが悪く言ってるだけって感じに見えるのがすごいなと。
全体的に、ハムレット以外の人はみんなまともで、クローディアスだけが、強硬な手段を執ってしまった、みたいな。
それも、デンマークを守る為という大義があるように見えたので、おもしろいなあと。
そんなわけで、かなりおもしろかったです。
※訂正 ローゼンクランツとギルデンスターンはハムレットが殺した、的な台詞があったようです。私は聞き逃してましたwww
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