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duft
好きって言わなかった
気になる子と飲んだ。
思いがけず、喋りすぎてしまったし、必要のないくらい深い絶望も喋ってしまった。
何をしても満たされないこと、どっか遠くに消えてしまいたいこと、死にそうになるけど死にたくないこと、過去に殺されそうになること。
彼女は戸惑いながらも受け止めて聞いてくれた。
共感してほしいわけじゃなく、聞いてほしかったことだった。
しかも、彼女にしか言えない気がしてた。
でも、話したら、すっきりするでもなく、疲れがどっときた。ネガティブな言葉は、吐き出すにもエネルギーがいるようだった。
それに、気持ちよくもなかった。吐き出したら楽になるかと思った気持ちは、吐き出したら「言葉」という形になって、より具体的に嫌な気分になった。
それでも彼女は話を聞いてくれた。
本音は嫌だったかもしれないし、単純に俺の話に興味がなくて、ただやり過ごしたのかもしれない。
別にいいけど、そばで話を聞いてくれた。
彼女がもっと好きになった。もう帰りたくなかったけど、家にいる妻を悲しませることもできなくて、帰った。
帰り道に一緒に写真を撮った。
彼女は俺のこと嫌いではないと思うけど、ただの既婚者の友達と思ってるはず。
きっとずっとこのままがいいんだ。
なんとなく居心地がよくて、でも近づきすぎなくて、たまに話して、ぎこちなく家路につく。
俺はあの子が好きなんだと思う。
でも、好きって言わない、言えない。
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