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最近のマイベスト

執筆 : 矢野瑛彦


最近のマイベストをテーマに書いているのですが、何も出てこず、頭を抱えながらこの文章を書いています。

たぶん、最近のマイベストとは、一般的に趣味や娯楽、仕事、個人のこだわりやハマっていることから連想されるものではないでしょうか。
無趣味なんです。僕。

一応、腰痛を緩和させるために始めた筋トレはずっと続けていて、筋肉にはちょっとだけ自信あります。
ただ、筋トレ(筋肉)の話をここでしてもなんだかなぁ、って思うんですよね。どう思いますか?僕のマイベストはこの大胸筋です!とかいう映画監督。「ん?」みたいになりませんか?
しかも僕が撮る映画って、筋肉の話も屈強な人間も一切出てこないんです。一番最近の作品なんて「死」を基盤に家族の崩壊と再生を描いた作品ですよ?プロテインすら出てこないです。

すみません、話が脱線してしまいました。

昔から無趣味なのかと聞かれればそうではなくて、学生時代にはサッカーやボクシング、DJなどやっていました(20代半ばの頃に、映画制作資金が底をつき、ターンテーブルとレコードを全て手放しましたが、、、)。スポーツや音楽を通じてたくさんの人たちとも交流を深めてきました。そんな交流の中で、本当に、本当にたくさんの、さまざまな人間模様を見れたし、良い思い出も苦い思い出も自分の中に確実に蓄積されていて、そんな経験が今現在の映画活動の礎(キャラクターを描くときの)になっています。これには、本当感謝。ストリートカルチャーで人間関係や社会性という人生のABCを学ばせていただきました。

が、しかし!大人になってから運動することはなくなりましたし(筋トレを除いて)、ターンテーブルを手放してから、音楽の追求・探究心みたいなものが消えてしまいました、、。最近の曲全然知りません。

食やお酒には関心があるのかどうか考えてみたのですが、僕の好きな食べ物とか、梅干しとヨーグルトですからね。なんか、もうちょっと、こう、肉とか入ってる料理を好物って言いたいんですけど。お酒は家では全く飲まないですし。

そもそも趣味や娯楽とは何なのか?
定義づけて、枠内に納めるのもなんだか堅苦しいのですが、ざっくりいうと心の拠りどころで、心の避難場所だと思うんです。
個人個人、考え方や感じ方は違うから、いろんな趣味がある。
それは街中に溢れる商業施設や飲食店。人工物だけでなく、自然も。世の中の全てがその対象であって、世の中の全てに「人」の関心があり、そして創られている。 この世に存在する全てに誰かの関心があり、誰かの心の拠りどころや避難場所になっている。

そう考えると、本当に世界にはたくさんの人々がいて、それぞれに自由を持っているのだなぁと。 私も、もっと積極的に世の中に目を向けて関心を持たなければいけないと、反省してい ます。趣味や娯楽をたくさん持ちたい。 そして、様々な人間模様を描けるようにならなければいけないと、無駄にしてきた時間に対して反省しております。

長々と書いてしまいましたが、私の趣味で、娯楽で、心の拠りどころで、心の避難場所は 結局のところ「映画」でした。ずうーーーっと、僕にとって「最近のマイベスト」 は「映画」なんだと思います。 本当にいろいろと考えに考え(書き始めて今日で四日目です)散々引っ張っておい て、結局そこなのかと思われるかもしれませんが、どう考えてもこれしかないんで す。 マイベストな映画監督(もしくは作品)でも書きたいのですが、ミヒャエル・ハネケ、ミケランジェロ・アントニオーニ、フェデリコ・フェリー二、ダルデンヌ兄弟、 テオ・アンゲロプロス、北野武、マーティン・スコセッシ、ジャ・ジャンクーetc..。 好きな監督がいすぎて、好きな作品がありすぎて、それこそ何から書けばよいのか分かりません。

映画。 何を観ようかと映画を選ぶ時間、映画を観ている時間、映画を観終わった時間。 過去現在全てが「最近のマイベスト」です。

自分の撮った作品を自己採点するとまだまだ低いですが、前述した監督たちの名前に自分の名前が並ぶように、追求していければ(趣味も)。
欲を言えば、いつか自分が監督した作品が誰かのマイベストになる、そんな未来を想像しながら。
作品を観てくれた誰かに、「この作品が最近のマイベスト!」と言ってもらえるようになればいいなぁ。


執筆者:矢野瑛彦
ENBU ゼミナール卒業後、テレビドラマの美術スタッフとして勤務する。退社後に制作した映画『pinto』が新人監督映画祭長編部門でグランプリを獲得。その後制作した映画『yes,yes,yes』が大阪アジアン映画祭・インディフォーラム部門に入選し、ドイツNipponnConnectionに正式招待される。
2022年に「yes,yes,yes」、「pinto」、「賑やか」の過去作含めた三本で「矢野瑛彦監督作品選」として特集上映で全国劇場公開を果たす。

【IKURA公式サイト】矢野瑛彦監督ページ
https://www.ikura-vipo.jp/director/23.html