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「移動する子ども」学と私ープロフィール

2024年4月、フリーランスになったので、noteを始めました。

複数言語環境で成長する子どもの研究を行なっています。そのきっかけは大学院生の頃、ベトナム難民家族の調査で出会った子どもに、習いたてのベトナム語で話しかけたところ、「そんな言葉、知らない」と言われたことだった。その子の両親も、家庭内ではベトナム語を使っているのに、なぜ知らないと言ったのか。そのことも、その時の少女の気持ちも、理解できなかった。30年以上前のことだった。

その後、オーストラリアの大学へ留学し、さらに、クィーンズランド州教育省に勤務することなった。その時は家族で滞在していたので、小1の娘は、英語がほとんどわからないまま、地元の小学校に入学した。娘は、週1回、英語を母語としない子どもに英語を教えるESL(English as a Second Language)の先生が学校に来て、「取り出し指導」を受けた。土曜日には、日本語補習授業校で、日本の教科書を使って学んだ。2年後、任期が終わり、家族とともに帰国した。娘は、地元の小学校に編入学すると、「帰国子女」と呼ばれた。

娘はオーストラリアでは「ESLの子ども」「日本語で学ぶ補習校の子ども(継承日本語学習者)」、日本では「帰国子女」など、大人の作った呼び名で呼ばれたが、本人は何も変わっていない。親の移動に伴い、母語とは異なる言語で学び、成長する子どもたちがたくさんいることに気づいた。

日本に帰国した私は、日本に来る外国籍の子どもの日本語教育に関わるようになった。様々な理由で来日する外国籍の親のもと、日本語を第二言語として学ぶ子どもの数が増加する頃だった。これらの子どもたちも含めて、「移動」「ことば」「アイデンティティ」を視野に、幼少期より複数言語環境で成長する子どもの生と人生全体を考える「移動する子ども」学を構想するようになった。

今後、「移動する子ども」学に関して考えたことや、これから考えたいことを、少しずつ、紹介していきたいと思う。「移動する子ども」学は、日本語教育、文化人類学、社会学、心理学、脳科学などと密接に関わりながらも、独自の学問領域として成長していくだろう。乞うご期待!

まずは、これまで刊行した書籍をレビューしながら、「移動する子ども」学への道をどのように進んできたのかを述べてみたい。
➡︎MY BOOK REVIEWS シリーズへ続く。


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