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日本理学療法士協会の新生涯学習制度について⑨ ~新制度における専門理学療法士について~

 こんにちは、理学療法士いくちゃんです。

 前回は新制度における認定理学療法士についてまとめてみました。
 今回は新制度における専門理学療法士についてまとめてみようと思います。

 お時間があれば最後まで読んでいただけると幸いです。

新生涯学習制度イメージ図

1、専門理学療法士制度とは


 専門理学療法士は、認定理学療法士と同様に、登録理学療法士を取得し、自らの専門性をさらに高めたい理学療法士に対する動機づけとして位置づけられている制度のことです。


 登録理学療法士が「ジェネラリスト」を目指すプログラムなのに対して、専門理学療法士制度は、より高い専門性を有する「スペシャリスト」、いわば個性の育成プラグラムのようです。


 分野は、「基礎理学療法」「神経理学療法」「運動器理学療法」「地域理学療法」「理学療法教育」など全部で13分野あります。


 専門理学療法士は、登録理学療法士取得後1年以上かけて必要要件を満たしたうえで口頭試問に合格することで取得できます。


 もちろん専門理学療法士は、認定理学療法士や登録理学療法士と同様に5年ごとの更新制です。

 ちなみに、旧制度における専門理学療法士取得者数は、2021年度末時点で全領域合わせて延べ1,700人程度になる見込みのようです。
(2021年3月時点での専門理学療法士取得者と2021年度専門理学療法士新規合格者を合わせた推計)。


 専門理学療法士取得者は認定理学療法士取得者の10分の1程度の人数であり、日本理学療法士協会会員のうち約1.5%といったところでしょうか。

2、専門理学療法士に期待される役割


 専門理学療法士は、認定理学療法士と同様に高い専門性を有する「スペシャリスト」として位置づけられているため、それ相応に期待される役割というものがあります。


 下記の3つの役割の一部として挙げられています。

・それぞれの専門分野において、ピュアサイエンスとしての理学療法学の確立に貢献する

・自施設や教育機関等において、質の高い理学療法学を教育することができる

・先駆的な取り組みその成果など、診療報酬や政策提言に結び付くエビデンスを蓄積する


 つまり、「学術的に理学療法学という学問を確立していくとともに、自分自身だけができるのではなく、周囲のスタッフ等も高い水準の理学療法学を教育し、さらに政策提言できるくらいの取り組みも含めて頑張りなさい」ということなのかもしれません。


 認定理学療法士が臨床や教育の現場レベルでの質を高くしようとすることに比べると、専門理学療法士は理学療法学という学問の質を高めていこうとする役割があることが読み取れますね。

3、専門理学療法士取得のための要件


 専門理学療法士を取得するためには、登録理学療法士を取得して以降に下記のカリキュラムを修了し、2~3人の面接官による口頭試問に合格する必要があります。


 指定研修については認定理学療法士と同様にシラバスについては日本理学療法協会のホームページに掲載されています。


 ちなみに受講料等は現在のところ未定のようです。

新生涯学習制度その3-2

 このカリキュラムで注目すべきは、カリキュラムそのものというよりもカリキュラム修了後に面接官による口頭試問が組み込まれているところです。


 旧制度では査読付き学術論文業績や学術ポイントや取得し専門理学療法士を申請するために多くの活動が必要でしたが、申請後に認定理学療法士のような認定試験はありませんでした。


 それが新制度において口頭試問が組み込まれた意図としては、申請者の業績だけでなく専門分野に関する資質を確認したいというのが含まれているのではないかと考えられます。

4、旧制度との比較


 新制度における専門理学療法士制度ですが、私個人としては旧制度と比較すると、運営サイドの負担はやや増加するが、試験の難易度と受験者の負担はやや減少するのではないかなと感じています。


 旧制度では、専門理学療法士取得のための申請をするためには学術ポイントや教育ポイントなど合計560ポイントを取得する必要がありました

(旧制度の認定理学療法士申請に必要なポイントは180ポイント)。


 さらに査読付き学術論文業績にあたる雑誌の基準が、日本理学療法士協会が発行している「理学療法学」や世界基準の学会が発行している英文雑誌および和文雑誌のみであり、査読付きとはいえ都道府県士会発行の学術誌は基準を満たさないとの判断がなされていました。


 これが新制度では、査読付き学術論文業績はあるものの、それ以外の要件は学会参加と学会発表、それにeラーニングでの研修のみです。


 旧制度での活動量に比べると受験者の負担は少ないと思われます。


 しかし、受験者の負担は少ないとはいえ、取得の難易度については査読付き学術論文業績にあたる雑誌の基準や口頭試問の難易度に左右されると思われます。


 特に口頭試問については、今までの試験では行われなかったことであるため、どのような形で行われ、どんなことを聞かれるのか、合否の判断基準は何なのかが今のところ全くの不明です。


 2023年度の第1回の試験がどのように行われるのかを注視する必要がありそうです。


 さらに、査読付き学術論文業績についても、当初は都道府県士会発行の学術誌も基準に入っていたようですが、最近の資料からはその文言が削除されており、詳細は後日発表すると記載されています。


 都道府県士会発行の学術誌も対象となれば難易度は下がるのですが、こちらも今後の日本理学療法士協会の発表を注視する必要があるようです。


 とはいえ、運営側も申請者1人1人を10~15分かけて口頭試問するわけなので負担は増加します


 負担が増加したとしても専門理学療法士取得要件に口頭試問を組み込んだということに、日本理学療法士協会の本気を感じます。


 ちなみに旧制度における専門理学療法士の合格率は50~60%程度とのことなので、これが新制度になることでどういう風に推移するのかは注目ですね。

5、まとめ


 今回は新制度における専門理学療法士制度について説明しました。


 旧制度と比べて大きく変わっており、新制度が始まってしばらくの間は、運営サイドも受験者サイドも様子を見ながら対応することになりそうですね。


 ちなみに新制度における専門理学療法士制度のもとになっているのはリハビリテーション医学会等の専門医制度の仕組みだそうです。


 日本理学療法士協会としては、専門理学療法士は学問指向性の高い理学療法士であるとみなしているようです。


 私個人的には医療分野における大先輩である医師の学術面でのあり方を取り入れつつ、理学療法士独自の進化を遂げていく一助に新制度がなればいいなと感じています。


 皆さんはどのように感じましたか。


 今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。