相手に素直に耳を傾けてもらうために使いこなしたい「枕詞」の話
ふつうなら言いづらいことや角が立ちそうなことでも、すんなりと伝わる話し方ができる人っていますよね。
聞き手の受け取り方に影響するものとして、相手との信頼関係や話すタイミングなどもありそうですが、わたしは「枕詞」の使い方もそのひとつだと考えています。
たった一言の前置きをするだけで、同じことを言っているはずなのに、伝わり方が全然違う。そんなふしぎな力をもつ「枕詞」について考察してみました。
ちなみに、本来の枕詞とは、和歌や古典文学における表現技法ですが、本記事では「話を切り出す前に加える、ちょっとしたひとこと」の意味で枕詞と表現します。
たったひとことが、相手のガードを崩す
まったく同じことを言っているのに、あるかないかで受け取る印象がだいぶ変ってしまうのが枕詞の力ではないでしょうか。
とくに、相手の意見に批判的な見解をつたえるときや、厳しいフィードバックをするとき、ネガティブな話題を持ち出すときにその影響は大きくなると思います。
たとえば、あなたの会議での発言に対して、上司からフィードバックをされるとします。
よくある一般的なフィードバックです。
キツイいい方ではないですが、ひとの言葉のチョイスや裏にある思惑に敏感に反応してしまうタイプの人間(わたしです)は、「ああ、そうだよなあ。わかりにくくてダメだったなあ」とか思っちゃうんですね。
でもフィードバック自体は的確ですし、指摘されたことを直さなくてはという気持ちにはなります。
これはどうでしょうか?
もっとよくなるはずだと思ってくれているのが伝わってくるので、「そっか、結論がわかりくかったんだな。次はシンプルにまとめて、もっと伝わりやすくするぞ!」とポジティブに受け止めやすい気がしませんか。
このように、まったく同じことを言っていても、ちょっとした枕詞の有無でその印象は変わってきます。
この一例だけではそこまでインパクトがないように思えるかもしれません。しかし、人との関係性やチームで取り組む活動の成果は、このようなコミュニケーションの積み重ねによってつくられるため、相手が少しでも受け取りやすい伝え方を工夫する意味は大きいはずです。
今日から使えるかもしれない事例集
では具体的にどんな枕詞があるのでしょうか。
「相手に素直に受け取ってもらいやすくする」うえで使えそうな枕詞を、わたしの実体験や記憶からいくつかあげてみます。
「わたしの個人的な意見ですが」
絶対的な正解というわけではなく、議論の余地があることを示しながら自分の意見を共有したいときに使えます。
「こういう考え方もあるかもしれない」と視野を広げてくれるような印象になります。
「あなたの成長のためにあえて言うと」
文字通り、相手の成長のためにあえて厳しいことや重箱の隅をつつくような細かいことを指摘したいときに使えます。
「自分のことを棚に上げて言うのですが」
こちらも文字通り、自分もやってしまうことがあるけれど、相手に指摘をしたいときに使えます。「わたしのために言ってくれている」とはわかりつつも「自分だってよくやってるじゃん」と突っ込みたくなる聞き手の気持ちが多少和らぐ気がしています。
「○○(組織のバリュー)の観点でいうと」
所属組織に共通の行動指針や価値観が言語化されている場合、それと絡めて切りだすことでネガティブフィードバックがしやすくなります。
聞き手としても、組織の共通認識をもとに伝えてもらうほうが納得感を感じやすいのではないでしょうか。
私の一番のおすすめはこれです。
すべては実りあるコミュニケーションのために
いくつか例を書いてみましたが、「こんなに回りくどい言い方よりも、ストレートに厳しく言われたい!」という方ももちろんいると思います。
そういう方には、ストレートに厳しい表現をぶつけるほうが受け取ってもらえるでしょう。
大切なのは、なにを伝えるにしても、相手が気持ちよく受け取り、望ましい行動につなげてくれる方法を工夫するということです。
どんなコミュニケーションにも目的があるはずですから、じぶんも相手も、せっかく時間をとってコミュニケーションをする以上、その目的を果たせるほうがいいですよね。
もちろん聞き手側にも求められるマインドがあるとは思いますが、まずは伝える側ができる伝え方の工夫をすることで、実りのあるコミュニケーションに近づいていくのではないかと思います。
お読みいただきありがとうございました!
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