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おばあちゃんの知恵袋でメンタルが強くなる?

 ここ数年、大体12月の後半あたりから2,3ヶ月、断続的に熱を出すようになった。36.8から上がる時は37.8くらいまでになる。「心因性」発熱と診断されている。その時期に特別にストレスがかかるような仕事をしているワケでもないので、「心因性」とはいかに、と思う。本人的にはストレスより寒さやら寒波やらに原因があるような気がしているのだが、内科的な問題がなければ、心の問題、ということのようだ。安易なものである。とはいえ、内科の先生=東大出、精神科の主治医=京大出、精神科のもう一人の先生=阪大出(阪大医学部、と聞くと、白い巨塔を思い出してしまいます)という日本の叡智を集めたような面々がそういうのだから言い返せない。学歴に弱い私である。自律神経を調える薬を勧められたのだが、ベンゾジアゼピン系の薬を増やしたくなくて、飲んでいない。

 今年は例年より遅く、2月に発熱が始まった。毎日職場に行くと「コロナかインフルに違いない」と思うくらいにしんどくなる。人によって症状は様々らしいが、私は「これからどんどん熱が上がるぞー」というゾクゾク感と全身の痛みを感じる。発熱するメカニズムが違うため、心因性発熱に解熱剤は効かないらしい。それでも気休めにロキソニンを飲んでしまうこともある。何だかフラッシュバックも頻繁に起こるようになって、人生からEXITしたくなる辛さだった。何にも出来ず、ボーッとしていても辛いので、後ろの席に座っているイケメンな同僚にやたらと話しかけて、大変甘やかしてもらった。

 そんなこんなで2週間を過ごして精神科へ行った。
 前述の京大出は「へぇ、そんなに辛いの」とカルテをめくり、「ちょっと待ってね」と言いながら、いかにも賢そうなちょっとSっぽい顔をしかめている。きっと先生が助けてくれる、と思って日々をやり過ごしていた私は期待に胸を膨らませる。すると、先生は真顔でこう言った。

「市販でさぁ、葛根湯とかそんなんあるやろ?あんなん買って飲んで」

 はい、と答えたものの、私の目は点になった。葛根湯?しかも市販の?それ、風邪の引き始めに効くやつじゃないの?おばあちゃんの知恵袋じゃあるまいし…(とはいえ、素直な性格なので、内科でもらって飲んでいなかった葛根湯を毎日飲んでいる)。

 ストレスと言えば、職場でこんなことがあった。
 お昼にコンビニで買って来たものをレンジに入れて、チンと鳴るのを近くにいた同僚と話しながら待っていた。すると、ジイ様がやって来て、まだ回っているレンジを開け、中の物を出して自分のお弁当を温め始めた。我が儘もここまで行けば老害である。口をきくのも嫌だったので本人に抗議はしなかった。
 部長が、とある部屋の床が汚いと言うので、行って、掃き掃除と水拭き、乾拭きをして帰って来た。「掃除して来ました」と報告したら、部屋を見もしないで「嘘つけ、ちゃんとやったんか!?」と言う。なんと失礼なのだろう。
 アシスタント職の人がやって来て、印刷を手伝って欲しいと言う。別の専門職の人に頼まれたのだが、自分では上手く出来ないらしい。冊子に印刷するのが混乱するとか、写真が真っ黒になるとか言っている。専門職からアシスタントが頼まれた仕事を別の専門職に孫受けに出すと言うのも妙な構造に思えるが、まぁ暇なので行ってみたら、その人はどっかり座って動かない。私が一人で印刷して、折り込んで冊子を作った。その冊子を見た部長が「何か色が薄いな(写真は薄めに印刷しないと真っ黒になる)」とまた嫌味を言う(ちなみに今年度で退職のこの部長は私のことが嫌いでいじめているワケではなく、最後に私と働けて本当に楽しかった、とこの間言っていた。嫌味を言うのが趣味なのだ)。

 そんなこんなをもちろん言って回った。それを聞いた一人がこう言った。
「あのな、みんなお前のことヨイショし過ぎなんだよ。寄ってたかって甘やかして。どんどん心が弱くなるぞ。そんな優しくされてて転勤でもしてみろ。また会社休むことになるぞ。ちょっと厳しいことも言われて心を鍛えろ!」
 ははは。これは牛乳アレルギーは牛乳毎日飲んでいたら治る的な暴露療法であろうか。またしてもおばあちゃんの知恵袋的な話である。そういえば彼もどっかの国立大学を出ていたような…

  コロナもインフルも流行っている昨今、調剤薬局では葛根湯や麻黄湯が足りなくなり、「1ヶ月分の処方ですが、2週間分しかお渡し出来ません」と言われることもあるほどだ。コロナやインフルに葛根湯…最後に勝つのは日本の叡智や最新の科学よりもおばあちゃんの知恵袋なのかも知れない。


 

 

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