夢の世界で肉じゃがを…

　春のせいなのだろうか、何だか憂鬱な日々が続いている。
　仕事でしょうもないミスばかりして、同じ部署の人に迷惑ばかりかけている。
　どうしようもない自分にへこんでいると、風の噂で、高校の同級生(女子)が今お医者さんとして活躍していて、最近結婚したらしいと聞いて、何だか面白くない気分になる。世界で一番不運で不幸なのは自分なんだ、って自己憐憫。そんな自分、最低だな、って思うと余計に沼に沈み込みそうだ。

　だから夢の世界に出かけることにした。
　マイスリーを飲んで寝逃げをするってワケじゃない(それもしたいけどマイスリーは断薬したので手持ちがない)。

　私は食器が好きである。唯一の趣味と言っていい。
　一人暮らしの癖に大きな食器棚に収まり切らないくらい食器を持っている上に、現在進行形で食器を買い足している。
　可愛い食器を手に入れて、それに素朴で何でもないような、でもほっこり美味しいお料理をのせて(かもめ食堂の世界観)、好きな人に食べてもらう…そんな妄想をしていたらあっという間に日が暮れる。

　実は料理の腕は大したことないし(レシピを見れば何とかなる程度)、そもそも一人で面倒なので、デパ地下に寄ったり、季節を問わずにお鍋にしちゃったり、外食したりしている。だから買った食器たちはほとんど使っていないという馬鹿げた状態である。

　まぁ、それはとりあえず、日がな一日新しい食器を買って、盛り付ける妄想をしていた(そんなことばっかりしているからミスばっかりするんだという話もあるが)。

　今、何が欲しいのか、というとアラビアのパラティッシの17cmボウル、色はブラックが良い。食器に全然興味のない人からすると暗号のような名前だが、食器好きの人からすると、北欧食器の定番中の定番で、流行ったのは何年も前のことである。今更だが、それが欲しい。
　じゃあさっさと買えよ、って話だが、このボウル、安売りになっているお店でも5000円近くするのだ。食器はペアで買うようにしているので、10000円近くの出費となる。
　夢の世界なのにやたらと出費させようとしてくるワケだ。それはディズニーでも同じか。だから、普段から夢の世界に行きっぱなしになると、カードの請求額に打ちのめされることになる(双極性障害の人は、お金の管理が苦手な人が多いらしい。私も破産するほどではないが、無駄遣いはしょっちゅうしております)。

　そのアラビアのボウルに肉じゃがをよそいたい。派手な絵柄の北欧食器に、肉じゃが、きっと似合うと思うなぁ。
　それに今気になりかけている男性は、「やっぱり女の人に作って欲しいのは肉じゃがだなぁ」なんて言っちゃう、この令和の時代において化石系の男子なのである。
　美味しいの、作ってあげたいなぁ…

＊その後目出たくボウルを2つお買い上げ。クレジットカードは怖いから、デビットカードで。まぁ、出費したことに変わりはありませんが…