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藤山浩「田園回帰1%戦略 地元に人と仕事を取り戻す」

田舎の田舎に若い夫婦が来る、というと、にわかには信じがたいけれど、確かに新しい働き方をしている知り合いで、不便な田舎に引っ越した人を知らないわけではない。それでもやはり、夫は会社勤め、妻は会社勤めかパートか、融通のきく仕事、という家族の形を思い浮かべてしまう。いや、田舎の田舎に住むなんて、やっぱりリタイアした人間じゃないか。そんな風におもい込んでいた。

島根県の中山間地域では、4歳未満が、30代が増えているという。しかも、増えている地区は、交通の便が良かったり、役所があったりするところではなく、田舎の田舎なのだ。そこでは、人と人のつながりが、ある。地域おこし協力隊の人たちからの人間関係のヒアリングや、移住者の話からも窺える。

ではどうすればいいのか? まずは人口分析をして、人口の1%を取り戻すことを目指す。人口分析の方法は、難しいやり方ではなく、5歳ごとの男女別年齢別人口の現在のデータと5年前のデータがあれば、今後の人口が予測できるという。具体的にそのやり方を書いてある。それを、町の人たち自身が分析して、あと何組移住してくればよいのかということを実感させることに意味があるという。

取り戻すべきは人口だけではない。所得も1%取り戻さなくてはいけない。仕事がなければ定住できない。仕事ができるようにするのだ。そして得られたお金が全て外に行ってしまうようでは意味がない。できるだけ、地域の中で事業者どうしがつながって、循環できるような経済になっていなければいけない。

以前、私は地産地消の推進の仕事に携わっていて、地域への愛が芽生えるとか、地元の事業者に地元の農産物のおいしさを伝えてもらい、地元の農業を知ってもらう、魅力を知ってもらうとか、新鮮な野菜のおいしさを実感してもらうとか、地球温暖化対策に役立つとか(もちろん旬産旬消が条件だけど)考えていた。でもそんな、メンタルな話にとどまるようなことではないのだ。

東京に近いところに住んで、東京まで通ってという生活より、職住近接の方が、人間らしい生活ができることが分かっているけれど、そうはいっても簡単じゃないような気がしていた。でも、ここに書かれていることは、明るくて、代々受け継がれてきた社会がつながっていくような、でも一方で新しいやり方をたくさん取り込んで、まちが大きく呼吸するような感じで、とてもワクワクしてくるものだった。

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