岸見一郎「泣きたい日の人生相談」
小6の次男にスマホを与えました。良かったのかどうか、分かりません。休みの日にはLINEの音が次々と鳴り、次男は常に持ち歩いています。これは交換条件でした。私の職場の小学校に通っていたのを、自宅の近くに入学させるための。
「泣きたい日の人生相談」の中の「友達」に関する岸見氏の答えを読んだ時、私はいつか次男に読んでもらえたら、と思いました。
義務教育では、子どもに教育を受けさせる義務があります。でも、それは、必ずしも子どもの望む学校に入れなければいけないわけではありません。だから私は、中学をどこにするかは、自宅近くに通うように理解してもらうだけで十分だと思いました。
でも彼は納得しなかった。友達のたくさんいる学校に通いたいと言ったのです。でも私は認めませんでした。
まず朝、起きるのが遅く、やはり職場近くの小学校に通う娘をこれ以上兄のせいで遅刻させたくなかった。私自身もイライラして運転したくなかった。学童がないので、私の仕事が終わるまでのことを考えなければいけない。それに仮に電車で自分で通わせるにしても、通学時間がもったいないと思った。
次男は何かあればこのことを持ち出し、一度は納得したもののまた蒸し返し、小6らしい反抗心をむき出しにして、私を責めました。そもそもなぜ普通に自宅近くでなく、親の都合で職場近くに通わせたのか。それをなぜまた親の都合で自宅近くに戻すのかと。どうせ友達はいない陰キャには分からないだろうと。
彼に辛い思いをさせることは詫びつつ、義務教育の義務はそこまで求めていない、と私も考えを変えませんでした。
なぜなら、今の学校では友達ができたのに、新しい学校では友達ができるはずがない、学校に行けなくなるかもしれない、と言い出したからです。それを話した時の次男はとても不安そうでした。
そんなに心配ならまた頑張って朝起こして、車で一緒に行くよ、と言いたい気持ちにもなりました。自分の都合で子どもに辛い思いをさせるなんて、悪い親なのかな。
でも何か違う気がしました。
近くの中学校でも友達ができるよ。必ず気の合う人が見つかるよ。
いや、できない。
でも高校はみんな違うところに行くんだよ。
その時はみんなも違うところだし、大丈夫。
じゃあ、もしできなくて学校に行くのが辛くなったら、今の学区の中学校に戻すから。
結局そんな約束をして、納得してもらいました。とはいえ、万が一、今の学区に戻ったら、ブランクで少しずつ変わるかもしれない関係を埋めることができるのか、と思うと不安でたまらなくなったりします。
でも次男の人間関係をつくる力を信じたいのです。
岸見氏は、こんな風に言っています。
友だちと言うのは「増やす」ものでも「作る」ものでもありません。孤独を誰かに癒されたいと思う人は、他者に依存しているのです。
随分と厳しいな、とも思います。
でも次男のLINEのやりとりが絶え間なく続くのを聞いていると、寂しい人が集まっているのかな、と思います。別に本当に孤独と感じているのとは違って、例えば親から離れることに一抹の不安を感じているとか。
人との関わり方は大きく二つに分かれます。一つは他者を支配すること、もう一つは他者に依存することです。今の文脈でいえば、コミュニティーに参加して、知り合いを振り増やしたいと思う人は、他者を何らかの手段のために利用し、支配しようとしているのです。一人ではいられない、孤独を誰かに癒されたいと思う人は、他者に依存しているのです。何らかのコミュニティーに属さないで一人でいると、自分が仲間外れにされていると思う人も同じです。友達(おそらく、相談者の場合は知り合い)を増やしたいけれど億劫だ、と言う人は誰も近づいてこないでしょう。自分からは何も与えず与えられることばかり考えているからです。
今の彼にこれを話しても伝わらない気がします。というか、徐々に彼の人間関係が分からなくなってきたりもします。誰と遊ぶか、くらいは教えてくれるけど、どんなことがあったとかは、あまり話してくれないし。
何かうまくいかないことがあったら、学区を変えたことを言われるのだろうな、とも思います。でもきっと、次男は新しい友達ができるはず、と思います。
と書きながら、ふと思いかえせば、自分に友達といえる人がいるかどうか、分からない気もします。次男から見て陰キャと言われるのも仕方がないかも。学生時代にはいたつもりでしたけど、徐々に離れて、子育て開始あたりから何となくやりとりが減り、ついに年賀状もやめてしまいました。
年末年始のあいさつはメッセンジャーやLINE、Facebookの投稿でするかな……。
でも、大切に思っている人はたくさんいるし、困った時に声をかけて助けてくれた人のことも忘れていません。友達だよね?と確認することはありませんが。
※サムネ写真はMozuミニチュア展で撮影したものです。
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