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黒澤重徳「自治体の企画政策担当になったら読む本」

この本を自治体の企画政策担当だけのものにしておくのは、もったいない、というのが、読みながら思ったことです。
私は企画政策担当のどまんなかにいたことはありません。せいぜい、企画政策の一分野であった公共資産マネジメントに関わっていたくらいです。なので、特にその時に感じたことを思い出しながら、共感する部分がとても多かったです。でもそれだけではありません。
今の時代、企画政策以外でも、その部署だけで完結する業務というのはあまりなく、他の部署と密接に関連していることが多いと思います。そもそも「縦割り行政」という言葉が存在して、他の部署の事業を関係ないような対応をすることへの批判があることそのものが、他の部署との横のつながりを大切にしなければいけないことを示しています。そしてそれは、企画政策担当だけが必死にがんばって、横の連携を作ろうとしても作れるものではなく、受け手である企画政策担当以外の部署においても、横の連携の必要性を考えることが必要なのだと思います。
さらに踏み込んでいえば、それぞれの部署にとっての視点で、横のつながりを見ていきたいということもあると思うのです。

例えば、私の自治体の例ですと、保健センターでは、健康増進計画として「いちはら健倖まちづくりプラン」を策定しています。この策定には、私も食育担当として農林業振興課から関わらせてもらったのですが、「いつの間にか対策」と称して、様々な事業を掲げています。

1.いつの間にか対策
 健康で倖せな生活を送るためには、個人の努力だけで実践・継続していくのは なかなか難しいものです。本計画では、健康に関心がある人もそうでない人も無意識に健康的な行動がとれるようにするため、健康の社会的決定要因(SDH) を考慮した「目標達成に向けた社会環境の整備」を明示してあります。
 特に💛マークがある事業内容は、『いつの間にか対策』です。健康を意識せず 行ったことが結果的には健康に結びつくものや、個人の行動変容を後押しする 「しかけ」が盛り込まれた事業内容に💛マークを付けました。今後さらに『いつの間にか対策』となる社会環境の整備が推進されるよう検討を重ねていきます。

いちはら健倖まちづくりプラン(2017年度~2026年度)

私も去年、いちはら障がい者福祉共生プランの策定に携わりました。その中で思ったのは、特に啓発に関することなどは、障がい者支援課だけでできるものではなく、他の部署の仕組みの中に取り込んでもらいたいものなどがあります。
例えば、障がい者雇用もその一つです。
障害福祉部門が、事業所に対して、障がい者雇用の必要性を解こうとしても限界があります。障害者雇用促進法があっても、対象となる事業所の半数以上の事業所が法定雇用を達成していないわけで、その行動変容を促すには、法律で決まっているから、ではなくて、経営の視点からのアプローチも必要だと思いますし、そもそも周知の場そのものも、障がい福祉部門で設定しても、よほど関心の高い人しか集まる見込みはありません。労政部門との連携が欠かせないものになります。

この本の中で、一番共感したのは、第2章の企画政策担当の心構えと、第4章の総合調整のテクニックという部分です。人に動いてもらうためには、力づくでできるものではありません。できたとしても、あらゆる方面にすることはできない、だからこそ、動いてもらうための心構えとテクニックが必要なのだと思います。

ノブレス・オブリージュ
「ノブレス・オブリージュ」という言葉をご存じでしょうか。フランス語で「高貴な身分には責任がある」という意味です。この言葉をよく覚えておいてください。
これから皆さんが仕事をしていくうえで、必ず「なぜ、こんなに仕事が降ってくるんだ」「どうして難しい仕事ばかり自分のところに……」「〇〇課の同期はいつも定時で帰っているのに……」といったやり場のない思いを抱く場面があります。そんなときには、「庁内でこれをこなせるのは我々「企画政策担当」しかいない」といった「ノブレス・オブリージュ」の矜持を持って取り組んでください。

本書

そして、この心構えとテクニックは、企画政策担当だけが持つべきものではないと思います。もちろん、中枢に近かったり、担当でも他の部署の課長や係長と渡り合うからこそ、プライドが行き過ぎておごりになることがあるかもしれません。だからこそ、企画政策担当は、ノブレス・オブリージュを意識しなければいけないのだと思います。
ですがその他の部署でも難しい課題を抱えながら、でも中枢からもあまり認識されず、周りからももてはやされず、すごく優秀なスタッフに囲まれているわけでもなく、それでも取り組まなければいけないという状況もあります。
そういう人にも、この言葉はしみいると思います。

他にも、総合計画の策定に関しては、個別計画でも役立ちそうですし、市民参画の手法など、計画を作成する際にはどの部署でも考えなければいけない内容です。

私も今の部署で、この本に書かれたことを意識しながら、仕事を進めてみたいと思いました。

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