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スカーレットのハグ

ヨガという言葉を聞くと、ストレッチを思い浮かべる人が大半だと思う。実は、ヨガは自分の内面を見つめていく旅で、とても哲学的だ。体を整えながら、心を掌握していく修行みたいなものだ。

サンフランシスコのヨガティーチャートレーニングでは、ヨガ哲学、呼吸法、解剖学、指導法、マッサージなどに加えて、自分の内面を見つめ、感じたことを仲間たちとシェアする時間をもっとも大切にしていたように思う。

内面を見つめてシェアをする作業、それはとっても新鮮で、大好きな時間となった。まずクッションを手に、みんなで大きな輪をつくって座る。呼吸法や瞑想、ヨガのポーズなどを行った後に、一人一人が感じたことをシェアしていく。

「大きな風船の中に包まれているような気持ちがしました。とても心地が良くて、そこから出て現実世界に戻るのが怖いです」

「いつもよりバランスのポーズが取りにくいと感じました。周りの目を気にしすぎて、自分自身にフォーカスしていなかったのだと思います。」

「力強いエネルギーを自分自身から湧き出しているようでした。腕を伸ばした時に、その先にあるゴールに手が届きそうだと感じました」

ヨガのマットの上で感じることは、人生で感じることと同じだと言われる。毎日練習するヨガのポーズの中で、優しさ、怒り、焦り、平和、喜び、悲しみ、痛み、解放、執着心、力強さ、弱さ、... いろんな感情がやってきては去っていく。それらをただ見つめながら、穏やかな呼吸を心がけ、「今、ここにいる」自分に集中していく。

ある日、わたしの中にあったぽっかりと空いた心の空虚さについて、みんなにシェアをした。大切な命を失った悲しみを伝えた。

その時、何も言わずにスカーレットがわたしをギューッと抱きしめてくれた。わたしの中の何かが溶けていくようだった。

自分を責めていた気持ち、悲しみ、孤独、後悔 ... 

スカーレットのハグは、「ありのままの自分を受け止めていいんだよ」と言ってくれているみたいだった。体と心がポカポカして、わたしは久しぶりに、あたたかな涙が頬を伝わっていくのを感じた。

〜つづく〜

《 ハグをしよう 》

ハグ(抱きしめること)は、恋人同士のものだけだと思っていませんか。わたしは、日本にいた頃、そんな風に思っていました。お母さんが赤ちゃんを抱きしめるとき、または恋人たちが愛し合う表現だけのもの。

日本では、家族や友人、ときには恋人同士でも、一定の距離を保つことが礼儀とされているような気がします。欧米諸国で日常的に行われる、握手やハグ、キスの代わりに、日本では、互いにお辞儀をします。相手との距離を保ち、相手の空気を乱さないように気をつけながら過ごしていますよね。

その日本特有の、距離感のある接し方は美しい反面、疎外感や孤独、相手との壁を生み出している原因ともなっているように思うことがあります。

西欧諸国では、挨拶や、愛情表現はもちろん、心につかえて言い表せない謝罪の気持ちや、感謝の気持ちを表したいとき、やるせない気持ちや悲しい心を癒したい時、ハグをします。

ハグは、ときに特効薬となり得ます。言葉だけでは解決できない、互いのエネルギーの交換や補充みたいなことができるような気がします。抱きしめ合うだけで、胸と胸のセンサーが触れ合って、エネルギーを調和させたり、傷を癒すような不思議な力があるのです。

好きな人の胸の中にいるとき、赤ちゃんを抱きしめている時を思い出してみてください。なんとも優しい穏やかな時が流れていきますよね。

日本でも、ハグをする習慣が、家族や友人間でも増えたら、孤独を感じる人が減るのではないかな、と思っています。

もし、あなたの大切な人が孤独を抱えていたら、ハグをしてあげてください。もし、あなたが孤独だったとしたら、親しい人にハグをもらってみましょう。相手が近くにいない時は、一人で、腕を交差させて自分自身を抱きしめるという手もありますよ!そして、ぬくもりの中に感じましょう。

「あなたは、ありのままの、あなたのままで素晴らしい」





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