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音になる


前回は、先日の週末講座で、音楽の力を借りたストレッチなど、寒さで固まった心と身体を解放することをやりました、というご報告から、音楽と人間の関係を考えてみるような話題でした。

「音になる」

このような、音楽に心身を動かされる体験を、受講者の方々は他に言葉が思いつかないので「音楽に合わせて動く」と言いますが、厳密にいうとそれは言い方が違うと思います。
音が鳴るということと体や心の中で何かが起こるということが一つになっている、という状態になるようにしているのです。
“どんな音がどんなふうに鳴っているか”と“心身がどんな状態になるか”が同化している。

本来はどんな音楽も音も、人間に対して何かを起こす力を持っていますが、人間の方がそれを心身に取り入れる状態になっていない場合は、そのまま通り過ぎてしまったり、表面的な浅いものしか受け取らなかったりします。
ですから、音楽や音の持つ本当の力を体験するために、その力を体のすべてで受け取ることが出来るように、自分を変えてゆく。
私が学んでいるのはダルクローズ・リトミックの中のそんな分野です。


とにかく、音楽に「合わせて動く」という考えをやめて、音楽と同化する、と思うようにすると、健康に役立つ音楽活動ができるのだと思います。
私がいつも言っているキーワード、「音になる」です。

「合わせて動く」の方だと、見た目のかっこよさの方が気になってしまうかもしれませんしね。

筋肉と呼吸と皮膚と骨と

今回の講座で、というより私の長年のレッスンの中で、では体はいったいどんなふうに音を受け取って音の力で変化しているのでしょうか。

まず一番わかりやすいのは、筋肉の状態です。
筋肉は音によって緊張したり弛緩したりしているので、それを自覚できるようになると、自分からそうなろうとしてみることができます。
そこまでできると、音の変化と自分の中の体の変化を同じにすることができるので、音はそれまでよりも深く感じたり、心に染み渡ったりします。

そして呼吸。
よく受ける質問は「ビートに合わせて吸ったりはいたりするのですか?」また「いつ吸っていつはくのですか?」。
確かに、歌を歌う人だといつの間にか自然とその音を心で歌っていて、歌えるように呼吸したりしていることもあります。
ですが私のおすすめは、いつ吸っていつはいたのか自覚がないくらい無意識の呼吸。
音の波を自分の呼吸の波にすれば、いつの間にかその深さやタイミングも同じになってきます。

そして人間は皮膚感覚でも音を感じています。
このことは皆さん納得できると思います。音というのは空気の振動ですからね。
音と体の関係を、一番わかりやすく物理的に感じられる部分かもしれません。
そのようなことを入り口とした「ユトニー」という研究があり、私も何度かその道の先生のレッスンを受けたことがありますが、とてもわかりやすくて楽しい分野です。

そして骨。骨伝導で音を感じるということもあります。
音というのは何かに跳ね返って聴こえるもので、その一番身近な跳ね返る素材は自分の骨です。
この「オステオフォニー」の面から音楽と人間の関係を研究する分野もあります。

まとめ

なんだか難しい話になりましたが、このようなことは先生の側がわかっていれば良いことですよね。
無心に音楽になっていただければ、健康に良い音楽のレッスンを受けて、音楽を深く味わうことが出来ると思います。
それで「なんだか分からないけど自分の状態が良くなった」と思えるといいですよね。

次には、このような講座で使う舞曲という音楽のお話も書いてみたいと思います。
私がこのような体と音楽といった講座で使う曲の中には、実はとってもステキな秘密があるのです。

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