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演出されるという体験

Chère Musique


演奏するということは声や楽器の音を奏でること。
どんな音をどんなふうに奏でるか。

でも実は、演奏の中にはそれ以外にもすることがあります。
「歌ったり楽器を奏でたりすることだけでも大変なのに!」という方が多いかもしれませんが、私はこの「それ以外のこと」も、少しだけでもいいので大切にしていただきたい。
そうれけるようなレッスンをしたいと心掛けています。


私の企画するイベントで演奏する時には、衣装の相談がご本人達との間で繰り広げられます。
もちろんその方のお気持ちやいろいろなご都合で決めるのですが、私からもたくさんのアドバイスがあります。
そしてその音楽と衣装に合った身のこなし、”態度”も音楽表現の中のひとつ。
演奏中も、奏者の顔つきやオーラが、お客様の心に大きな影響を与えます。
歌の場合、中にはちょっとした演技までもした方が良い作品もあるのです。


そして例えば、生徒さんが私から演出をつけられるということがあります。
おもしろい具体例をひとつ書きましょう。

シニアの方々のためのいろいろな音楽講座をいくつかの市区で行なっています。
その中のひとつでは、歌を歌うことをメインメニューとしている講座で、毎回ジャンルの違う歌を約六曲ほど歌います。
そのひとつに歌謡曲やフォークソングや演歌などの中から選んでいるコーナーがあります。
そこでは毎回いろいろなスタイルの演出体験をしていただいているのです。


いくつかその例を書くと、、

全体を二つのグループに分けて、一番はAグループ二番はBグループが歌うというふうに、お互いにお客さんになって聴き合いましょう。
これは、目の前でじっくり鑑賞する、人に見つめられて歌う、ということ。
そうするとどんな気持ちになるか、の体験です。

二人組になって、お互いの声をよく聴きながらひとつに溶け合う歌になるようにしてみましょう。

AメロBメロサビ、、一曲の中でノリが変化したら、身体の動きの方向や雰囲気を変えてみましょう。

歌詞のここはこのグループ,ここは全員で、、、自分が担当する部分はどこなのかを覚えましょう。

イントロで立ち上がってここまで歩き、間奏ではこういうことをして、、、歌の中の歌わない間に、演じるということをしてみましょう。


などなど、毎回違う歌で違うやり方で、いろいろなことを体験していただきます。
皆さんとても楽しそうに盛り上がってくださいます。


もちろん、おひとりおひとりをある程度理解した上で行ないます。
例えば、見られると緊張してしまう方もいらっしゃるので、どのグループの時にも先生が一緒に寄り添って大きな声で歌う。
歩くのが大変な方が移動しなくても大丈夫なように、全体の動きを決める。
などの配慮ですね。


そしてこのレッスンで出来るようになっていただきたいことがいくつか。

初めのうちは私が何も言わないと、自分が歌う時も人が歌っている時もずっと歌詞カードや歌詞を映した画面を見つめている方がほとんどです。
それがだんだん、一緒に歌う仲間と微笑み交わしたり、歌っている人たちを応援の気持ちを込めて見つめたり、というふうになってくるのです。

そして、歌わないはずの部分もつい声を出してしまう方もいます。
ひとつの歌をみんなで歌うわけですから、歌わない時も流れの中に乗っていなくてはならないので、心の中ではずっと歌い続けることは必要です。
心の中で歌うことと仲間の歌をきちんと聴いてあげることを、両立出来ることが大切です。

せっかく大勢で一緒に音楽体験をしているのですから、こういうことは音楽を楽しむことの中でも特に大切なことですね。

個人レッスンやアンサンブルレッスンでも、このような音楽講座でも、声や楽器の音を奏でること以外の部分でどういう意識を持っていると良いかを、皆さんに学んでほしいと思っています。

Musique, Elle a des ailes.

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