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工業地域の荒れ果てた崖線林に、サンプルガーデンを作った話①

上記の写真を見て、ここがどんな場所か想像がつくだろうか。おそらく第一印象は高原別荘のウッドデッキやリゾート地の森の中・・・という感じであろうか。実は、ここへ来るほとんどの人から「もっと山の中かと思った」「本当にあるのか不安になった」と言われるくらい、想像とは違う場所にある。

はじめは、人を寄せ付けない「ヤブ」だった

タイトルが答えになってしまっているが、ここは神奈川県厚木市の「内陸工業団地」の中にある。私たちが運営する「景色工房サフラン」のサンプルガーデン(通称モリニワ)であり、顧客との打ち合わせ用の店舗である。用途地域は「工業地域」。「マキノ製作所」「ニッキ」「電気興業」など、知る人ぞ知る大きな工場が林立している。どこからどう見ても立派な工業団地の中にこの場所があると言っても、なかなか信じてもらえないかもしれない。

実のところ、私も4~5年ほどでこんな感じになるとは思っていなかった。そう、2014年ごろまでは、この場所は工業団地の端にある住宅街の、荒れ果てた崖線林の「ヤブ」だった。2013年当時の様子はこんな感じである。


景色工房サフラン 上依知購入後3

景色工房サフラン 上依知購入後2

上記2枚は、崖線林の一部であるこの場所を、下から写した写真である。隣接するアパートの駐車場内にまで、ササ類やツル類が繁茂している。中をうかがい知ることができないぐらい密集しており、不気味である。


景色工房サフラン 上依知購入後4

景色工房サフラン 上依知購入後5

景色工房サフラン 上依知購入後6

次の3枚は崖線林の上部にあたる場所、つまり最初の写真の場所、今は「高原別荘」のようになっている店舗やウッドデッキがある場所である。見るからに恐ろしく、いろんな生き物がいそう(実際に蝙蝠はいたし、へビやタヌキは今でもいるようだ)…。この状態から、我ながら「よくぞここまで…」という感になる。ただ、少しだけ声を大にして言いたいことがある。それはこの景色が

もともと生えていた樹を残して(選別して)つくられた景色

である、ということだ。もちろん新たに植えた樹もあるが、それは店舗の建物まわりのごく一部だけだ。最初の写真に写っている樹のほとんどは、択伐して残したヤブの樹が成長した状態なのである。にわかには信じがたいかもしれないが、生えている樹木の種類、その植生(生育する環境や性質)を見極めれば可能なのだ。

以前の店舗は、コンビニ跡

プロフィールに記載の通り、私はガーデンプランナーであり、ガーデン・エクステリア(家の外まわりの車庫、門柱などのこと)を設計施工する「景色工房サフラン」を運営している。2010年に今の店舗からほど近い神奈川県愛川町のコンビニ跡をリノベーションして、ガーデン・エクステリアの来店型・デザイン重視提案型の店舗を始めた。

そのコンビニ跡の大家さんから「店舗改造?、駐車場のアスファルトをはがしたい? 何やってもいいですよ!」とお墨付きをいただき、徹底的にリノベーションを行った。ただし「5年契約」で…。

実はこのコンビニ跡、家賃が13万円だった。近隣の相場(30~40万円)からすると破格だ。しかし5年後に取り壊し、近くのお寺の「お墓の販売センター」にするという計画が決まっていた(そのお寺とリノベーションの最中、少々もめることになる)。このコンビニ跡がいわくつきで、土地はR寺と檀家の共同所有、上物の建物が今回の大家さんの名義になっていた。もうこの計画は変えようがない、ということだ。

多少悩んだが、5年間で名前を売り成長するつもりで借りることに決めた。家賃+リノベーションでも、通常のコンビニ跡の家賃よりも総金額が抑えられると踏んで、思い切って投資した。

景色工房サフラン 旧店舗 改装前

ビフォー


景色工房サフラン 旧店舗 改装後

アフター

途中いろいろ危ない時もあったが、この店舗とホームページ、アドバイスいただいた方のお陰でなんとか集客、受注できるようになった。2014年には、なんとリクシル エクステリアコンテストで大賞(日本一!)を受賞することができた。目論見通り(?)成長することができたのだ。

実はこの受賞の報告は新店舗、つまりヤブを開拓したモリニワで聞いた。2014年の11月がコンビニ跡の契約期日で、受賞の発表は同年の12月だったのである。


この場所を選んだ理由は、迫りくる期日と「直感」

2012年ごろから新店舗を探し始めていた。安いとは言っても毎月かかる家賃負担、またR寺とのトラブルなどから「次は絶対に自社名義(購入)の店舗にしよう」と思っていた。圏央道が開通し相模原愛川インターができ、よく利用するようになった。現場と店の行き帰りに緑いっぱいの(ただしヤブの)斜面を目にして、なんとなく「いいなー」とぼんやり眺めていた。

ある日、この土地が売りに出されていることを知った。直感で「ここだ!」と思い、即決した。傾斜部分70%の難度の高い土地でなかなか売れず、近隣相場よりも安かったことも決め手になった。「擁壁を作ろうとしても費用がかかりすぎて、なかなか決まらなかったんですよねー」と不動産屋の担当者は言っていた。だが擁壁を作って平らにするつもりはさらさらなかった。「今、生えている樹を活かして、感じのいい森ができる」という自信があった。根拠はあったが実践は初めてなので、多少の不安はもちろんあった。しかし迫りくる期日を考えると、迷っている暇はなかった。

土地の契約をしたのが2013年8月。契約が2014年11月までなので、あと1年ちょっと。それまでに建物を建て、引っ越ししなければならない。逆算するとギリギリだ。いや、間に合うかどうか…。もう他に選択肢はなかった。というよりは、今となっては運命的な出会いだった、とも思う。(②に続きます)

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