見出し画像

【小説】狐と僕の自殺

僕は今、牧場から盗んできたお気に入りのキツネと橋に来ている。
キタキツネとギンギツネを連れて。

「一人では無理だけど、この子達となら…。」
そう思い、僕はギンギツネを橋の手すりに乗せた。
キタキツネはそれを不思議そうに見ている。

突然強い風が吹き出す。
僕の帽子が飛ばされるのと同時に、何かが強く地面に叩きつけられるような音がした。
「ボトッ」。

手すりに乗せたギンギツネがいなくなっている。
僕は恐る恐る橋の下を覗いてみる。
体のパーツがバラバラになったギンギツネが、血だらけで落ちている。

僕は怖くなり、キタキツネを抱きしめ帰ろうとした。
歩き始めたそのとき、親しい女の子が橋の向こうから僕を見ている。

僕が女の子の方へ歩こうとすると、
「来ないでっ!!」と、女の子は僕に怒鳴った。

女の子は泣いている。
彼女はキツネが大好きだったのだ。

「最低…。せめてギンギツネにお墓を作ってあげなさいよ!!」と、
女の子が泣きながら必死に僕に訴える。

僕は女の子と一緒に橋の下へ降りて、ギンギツネを回収することになった。

橋の下までつながる梯子を使い、二人で降りていく。

橋の下は薄暗く、肌寒い。
僕は身震いしながら下へと降りていく。

一番下へと降りて、ギンギツネを探しに歩き出す。

「いたわ…」女の子がそう呟く。
僕たちの目の前には、手と体が分離した血だらけのギンギツネが落ちていた。

僕がお墓を作ろうとしたとき、後ろから変な音がした。

「ボトッ」。
振り返ると、橋の上で待たせていたキタキツネが、見るに耐えない姿になっていた。

僕が上を見上げると、橋には無数の首吊り縄が下がっていた。
空は赤く染まり、血のようだった。

女の子はキタキツネのことで気を失い、僕はその場に一人になった。

周りを見渡せば、ギンギツネやキタキツネ、自殺者たちが僕を見ている。

目から血を流し、腕がなくなっている。

僕は怖くなり水に飛び込んで命を絶った。

女の子が目を冷ましたときは、空は青く、花がいっぱい咲いた橋の下であった。

その後、女の子の姿を見た人はいなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?