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黒人差別の歴史を学べる映画を紹介します

無抵抗のGeorge Floyd氏が複数人の白人警官に殺害され、全米中や欧米で大規模なデモが起きています。

デモは暴力的なものから平和なものまで、大企業を巻き込んだ運動にまで発展をし、ついにはトランプ大統領による連邦軍の要請まで起きてしまいました。

それほど有色人種に対する人種差別は根深く、今回の事件はコロナウイルスによる自粛のストレスも相まって多くの人の怒りと悲しみを爆発させました。

しかし、日本のツイッターを開くと悲しい言葉が並んでいるのがショックでした。

「黒人が殺されただけでなんでこんなに騒ぐの?」
「人種差別とかどうでもよくない?」
「そもそもなんで黒人だけ優遇されるんだ!」

こういった意見が出るのはいくつか理由があると推測:
①遠い外国の話なので現実味がない
②黒人や外国人と接点がない
③そもそも黒人とか差別とかの知識がない

この中で一番大切なのは③を解決することだと個人的には思います。

③さえクリアにできれば具体的な接点がなくともおのずと①、②への理解が深まるので、人々がなぜ怒っているのかがある程度わかるかと思います。

わからないのならすぐに反対をせず、また見て見ぬふりもせず、とにかく学ぶことが大事。

ではこんな時、自分にできることは何だろう?

自分には映画の知識、歴史の知識、英語の知識がある。

なので、アメリカにおける黒人が歩んできた負の歴史を、楽しくわかりやすく勉強ができるようにオススメの映画を紹介していきます!
(古い映画ではなく、最近のを中心に紹介)

映画を観れば楽しみながら知識が得られ、興味が沸き、ハッキリとした自分の意見を持つことができるので一石四鳥!

【1800年代】黒人の奴隷時代

そもそもなんでアフリカ系の黒人がアメリカにいるの?

ヨーロッパからアメリカ大陸へ入植し始めた白人たちには労働力が必要でした。

特にアメリカ南部の労働力として、多くの黒人たちが奴隷貿易によってアフリカから連れ去られて来ました。
(南北戦争前の時点で南部の4家族に1軒が奴隷を所有しており、黒人の95%は南部在住だったとのこと。)

そんな黒人の人権がガン無視されていた時代を描いた映画をご紹介。
『それでも夜は明ける(12 Years a Slave)』(2013年の映画)

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1841年にワシントンで誘拐され、奴隷として売られた自由黒人「ソロモン・ノーサップ」の地獄のような12年間を描いた伝記映画。

それまで自由を謳歌していた人間がある日突然、家畜以下の扱いを受ける人生に転落。

堂々と人間を売買する様は、自由とは何か?という問いを突き付けられます。

作品の完成度と重要性から第86回アカデミー賞の作品賞をはじめ、様々な映画賞を受賞しました。

ブラッド・ピットも出てるよ!

【1860年代】アメリカ南北戦争

奴隷ってやっぱやりすぎじゃない?
そんな議論が1800年代から徐々に台頭を始めました。

そしてアメリカは1862年に大規模な南北戦争へと突入。
開戦には多くの要因があるものの、南部が保持する強力な奴隷制問題が大きな理由の一つでした。

奴隷制廃止の中心人物は大統領であるエイブラハム・リンカーン。

その大統領に焦点を当てた映画が
『リンカーン(Lincoln)』(2012年の映画)

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「すべての人間は自由であるべき」と信じるリンカーンは奴隷を永久に解放するため、アメリカ合衆国憲法修正第13条を議会で可決させることを決意するお話。

奴隷を開放させる憲法修正案を通すためにつき動く様子と、様々な苦悩が色濃く描かれています。

【1900年代】公民権運動以前

南北戦争は北軍の勝利で終わり、奴隷制度は終焉を迎えました。

しかし、奴隷時代が制度的に終了しても白人による黒人への差別は消えません。

20世紀になっても、黒人はまっとうな人権を与えられず、不当な扱いを受けながら過ごしていました。

大きな理由の一つが悪名高き「ジム・クロウ法」。
この制度により、南部では白人による黒人の人種分離が合法的に推進されていました。


教育の制限、投票の制限、飲食の制限、移動の制限、結婚の制限、司法の制限。

ありとあらゆる制限が黒人には課せられていました。

1944年には黒人少年のジョージ・スティニー(14才)が証拠もないのに殺人容疑で起訴され、公平な裁判が開かれないまま電気椅子で処刑されました。
(これはアメリカ史上、最年少の死刑判決)

そんな黒人の悲惨な時代を描いた伝説的な映画が
『アラバマ物語(To Kill a Mockingbird)』(1962年の映画)
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大ベストセラー小説の映画版。

1930年代のアメリカ南部で、白人女性への性的暴行容疑で逮捕された黒人青年の事件を担当する白人弁護士アティカス・フィンチの物語。

確実な証拠もないのに黒人ということで起訴され、黒人ということで有罪判決を受ける時代。

そんな黒人を弁護することで迫害を受けることを承知の上で、フィンチ弁護士は人間の正義のために闘います。

2003年には、アメリカ映画協会が選んだ「映画の登場人物ヒーローベスト50」の第1位にこのフィンチ弁護士が、インディ・ジョーンズやジェームズ・ボンドを抑えて選ばれております。

【1950年代】公民権運動

1955年、かの有名な「ローザ・パークス事件」が起きます。
市営バスに乗車し、黒人席に座っていたローザ・パークスは、運転手によって後から乗車した白人のために席を空けるように指示されたがこれ拒否。

彼女は人種分離法違反の容疑で逮捕されました。

この事件が火種となり、キング牧師などが率いる、法律上平等な地位を獲得することを目的とし公民権運動が始まったのです。

そんなキング牧師と公民権運動を描いた映画がこちら
『グローリー/明日への行進(Selma)』(2014年の映画)

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1965年の南部アラバマ州セルマで実際に起こった『血の日曜日事件』を題材にした内容であり、公民権を求める人たちの苦悩や戦いをリアルに描いています。

この時点で奴隷解放から100年経っているのですが、いかに黒人差別が根深い問題かがわかります。

映画そのものの完成度も高いのですが、主題歌の「Glory」に対する評価がよく、第87回アカデミー賞では主題歌賞を受賞。

【2000年代】現代でも残る差別

キング牧師やマルコムX、そして多くの黒人たちが闘って亡くなった結果、彼らは人権を得ることができました。

ですがいまだに差別は残り、George Floydの事件が2020年になってもまだ起きてしまいます。

George Floyd事件のような、警察による黒人青年の殺害を描いた映画が
『フルートベール駅で(Fruitvale Station)』(2013年の映画)

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2009年1月1日にカリフォルニア州で発生した「オスカー・グラント三世射殺事件」を題材にした映画。

駅で言い争いをしていたグラントの元へ警察がかけつけ、その場で射殺してしまうお話。

主人公の生活が鮮明に描かれ、現代を舞台にしているので一番共感を得やすい映画かなと思います。

監督は『ブラック・パンサー』のライアン・クーグラー。
彼の初監督作にして、あとのキャリアに続く大出世作です。

まとめ

以上が、個人的な独断と偏見で選んだ、この200年におよぶ最低最悪な黒人差別の歴史を、ある程度知るのに最適な映画かと思います。

どれも素晴らしい評価を得ており、受賞もしているので万人に観やすい映画かなと思います。

今回のGeorge Floydの事件をきっかけに、今一度こういった映画を鑑賞し、「人権」「自由」「差別」などについてじっくりと考えてみていかがでしょうか?

そうすれば、おのずとなぜ全米が怒りで沸いているのかがちょっぴり見えてくるかと思います。

その他の黒人差別を題材にした映画

もちろん、紹介しきれなかった名作も数多くありますので羅列。

『マルコムX(Malcolm X)』(1992年の映画)

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『42 〜世界を変えた男〜(42)』(2013年の映画)

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『ラビング 愛という名前のふたり(Loving)』(2016年の映画)

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『マーシャル 法廷を変えた男(Marshall)』(2017年の映画)

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『デトロイト(Detroit)』(2017年の映画)

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『LA 92』(2017年の映画)

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『ブラック・クランズマン(BlacKkKlansman)』(2018年の映画)

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『グリーンブック(Green Book)』(2018年の映画)

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『黒い司法 0%からの奇跡(Just Mercy)』(2019年の映画)

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『ハリエット(Harriet)』(2020年の映画)

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