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自宅を売却した話・前編~なんでせっかく建てた家を3年で売ることになっとんじゃい。~

「この家の住宅ローン連帯保証人である私からお願いです。今すぐにこの家から退去し、平等に処分してください。」

そんな手紙が読み上げられたのは、夫とお互いの母親を交えた離婚協議のクライマックスでした。


こんばんは!夜職Webライターのこはるです。
大変お待たせしておりました「自宅を売却した話・前編」やっとやっとリリースでございます。まさか1年もお待たせしてしまうとは。楽しみに待っていてくださったドクシャーのみなさん、本当にありがとう。

それでは聞いてください、アルバム「自宅を売却した話」から、「なんでせっかく建てた家を3年で売ることになっとんじゃい」です、どうぞ。

(ファン待望のファーストフルアルバムを出したシンガーソングライターの気持ちになってみたかった)



「家を処分してください」と言われても…

手紙の主は義父で、「妻(私)が再構築を拒否し、話し合いが離婚で決着したときに読み上げてほしい」と義母に託したもの。

ーーなるほど困ったな。
せっかく建てた家を処分したら、私と子2人の住むところがなくなってしまう。「平等に」というのも意味がありそうだ。おそらく子を養育するか否かに関わらず私も負債(※)を抱えるべきということか。

※築3年程度の築浅物件は、売却価格が住宅ローンの残債よりも低くなり、借金が残ってしまうケース(オーバーローン)が多い。



私にとって義父の発言は想定外でした。
夫へ離婚を申し出たとき、私は子2人と引き続き自宅で暮らしていくつもりだったから。

当時「これ以上完璧なプランはない!」とノリノリで考えていた計画がありました。

【私の計画】
・私は子2人と引き続き自宅に住む
・夫は養育費代わりに住宅ローンを支払う

【この計画のメリット】
・子のために建てた家なので、住み続けることで当初の思いを引き継げる
・養育費を現金で受け取らないので、児童扶養手当の減額対象にならない
・夫と金融機関との契約になるので、養育費の取りっぱぐれがない
・夫は住宅ローン控除を受けられる

いや完璧か??まさに新しい家族のカタチ…!!

イノベーション!!

ハートフル円満離婚!!

私のしあわせ家族計画(わかる人にはわかる)に完全に水を差した義父の発言。でもまあ連帯保証人様が言うなら、無視するわけにもいきません。

次に私がやるべきことは、義父が提示した方法(=自宅を処分する)を分析し、私の計画(=私が自宅に住み続ける)と比べてどんなメリデメがあるかを明らかにすること。

そして夫に「ほらね?私の計画の方が合理的で、お互いの理想に合うでしょう?」とごり押しして説得します。

まずは有識者の意見をきこう。

法テラスと弁護士事務所に連絡し、すぐに無料相談の予約をとりました。


弁護士の話によれば

法律事務所の無料弁護士相談にて、離婚時の自宅の取り扱いと選択肢を教えていただきました。

【離婚時の自宅の取り扱い】
・自宅は離婚時には財産分与の対象となる
・自宅をどうするか決まる前に離婚するのはおすすめしない
・売却の場合も、いくらで売れるかによって協議の内容が変わる

※あくまで私の場合※しかも無料相談の中での回答


【選択肢①】売却する
メリット:共有財産(債務)を明確に分与できる、離婚後に揉める可能性が低い
デメリット:オーバーローンとなれば、その後の生活に負担がかかってしまう

【選択肢②】夫が(1人で)住み続ける
メリット:特にないが、夫に新しい家族ができたときに家を建てなくてよい?
デメリット:妻が連帯保証人となっている場合は、外した方がよいので金融機関と要確認(多くの場合、外せない)

【選択肢③】妻が(子と一緒に)住み続ける
メリット:
妻子が住む場所に困らない
デメリット:
1.住宅ローンの支払額が、養育費として支払うべき額を上回る場合、夫がごねる可能性がある
2.夫が住宅ローンを払えなくなった場合にどうするか取り決めが必要
3.住宅ローン完済後または子どもが成人後、自宅の名義をどうするか決めておく必要がある

※家と住宅ローンの名義人が夫単独であることを想定


当然なのですが、弁護士の見解は「揉める可能性のある部分は徹底的につぶしておきましょう」というところでした。


ーーそれを決めるときに絶対揉めるだろ……。
下手すりゃ「離婚しない方がいいね!」って理由ができてしまう……。


ハートフル円満離婚を目論む私には、うまい話ではありませんでした。

ただ、将来の揉めごとをなくしたい、という気持ちは私にもあります。
これ以上、両親がいがみ合う姿を子どもに見せるわけにいきません。

ここで納得せず、違う立場の人からも意見をもらいたいところです。

「不動産売却の営業マンなら離婚周りの話に詳しそう!」と考え、冷やかし程度に自宅の査定を申し込みました。


不動産営業マンの話によれば

よくある一括見積もりは、申し込んだ瞬間から電話が鳴り止まなくなるとわかっているので使いませんでした。

不動産屋に直接連絡し、話を聞いてもらえそうなら現地査定をお願いするつもりで、地元に強い大手から電話をかけました。

1社目はマジダメ営業マンで、私が「妻子が住み続ける方向で考えている」と伝えているのに対し「まずは査定額を知ることから始めよう!」にしか着地しません。

この人からはなんの情報も出てこないだろうな、と感じてお断りしました。

2社目で良い営業マンと出会い、話し合いの末、専任媒介契約(※)を結ぶことになります。

(※専任媒介契約については「自宅を売却した話・中編~自宅売却の手順を詳しく解説!高く売るためのポイントも!~」で解説します。ざっくり言えば「家の売却、アンタに任せるよ」という契約です。)


前置きが長くなってしまいました。
不動産営業マンに私の現状を伝え、得た意見や情報をまとめます。

※あくまで私と夫の状況(雇用形態とか貯金とか)や収入をもとに提案いただいたものです。すべての人に当てはまるわけではありません。


【妻の連帯保証を外す方法はあるか】
結論:基本無理。
理由:配偶者を連帯保証人にしないと借りられない額だったということ。同等の連帯保証人を立てても、金融機関は了承しない可能性が高い。
代案:住宅ローンの借り換えをする。その際、連帯保証人なしで借りられる金融機関を探す必要あり。

【妻子が住み、夫がローンを支払う計画は妥当か】
結論:おすすめしない。
理由:いくつかのパターンで揉める
住宅ローン以外の諸経費が発生したとき(固定資産税、外壁塗装費、設備が壊れた場合の修理費)
夫に新しい家族ができたとき(退去を要請される可能性、ローンが支払われなくなる可能性)
妻子が引っ越したくなったとき(子がアイドルになるため家族で上京する可能性)(新しい家族ができる可能性)
代案:住宅ローンと自宅の名義を妻に変える(住む人が所有権をもつ)。

【住宅ローンと自宅の名義を妻に変えるのがベストか?】
結論:借り換え可能なら、権利関係はすっきりする。代わりに妻の負担が大きくなる恐れ。
理由:夫から養育費をもらい、住宅ローン返済に充てられるが、養育費が途絶えた場合に払えるかの問題が大きい。
上記理由で、妻単独では住宅ローンの借り換えができない可能性が高い。
代案:自宅を売ればすっきりするよ!

【自宅を売却する場合どんな未来になるか】
結論:売却価格と、もっている資産による。
パターン①:売却価格>残債
 
売却価格が住宅ローン残債を上回り、売却益を夫婦で分ける
パターン②:売却価格=残債+手持ちの現金
 
売却価格が住宅ローン残債を下回るが、手持ちの現金で清算できる
パターン③:売却価格<残債
 
売却価格が住宅ローン残債を下回り、手持ちの現金でも足りず、オーバーローンとなる


以上を踏まえ、不動産営業マンから提案されたプランが以下。

①妻単独名義で借り換え可能な金融機関を探す
②自宅を査定し、住宅ローン残債との差額を確認

①②を同時進行し、その結果によって以下の2パターンから選択
1.妻の収入だけで払える返済計画で住宅ローンを借り換え。妻子で住み続ける
2.自宅を売却、妻子は妻実家かアパートに転居する

当初の私が希望していた「住み続けるパターン」も最善策をとって進めつつ、売却した場合のエンドもあわせて検討できるとのこと。

いい提案だと思いました。

権利関係についても、弁護士の見解と相違ないように感じます。

この営業マンに査定をお願いすることにしました。

こちらの営業マンさん、自宅売却だけでなく、妻単独名義で借り換え可能な金融機関をさがすのも手伝うと言ってくれました。不動産売買に長年関わっているので、住宅ローン担当者とのつながりがあるのだとか。
実際いくつかの金融機関担当者を紹介してもらっています。しかし、私の収入が低く、単独名義での借り換えは難しいとのことでした。


有識者の意見を聞いて、再考

弁護士と不動産営業マンから得た意見をもとに、もう一度、離婚後に自宅をどうしたいか考えてみます。


権利のねじれ

これが本当に想定外でした。(離婚って感情的に言い出すもんだからね…権利まで考えが及ばなかったよね…)

私と夫の場合、離婚後も自宅を所有し続けると、具体的に以下の問題があります。


【債務者と所有者が夫のまま、妻子が住み続けると、お互いに身動きがとれない】

  • 夫に新しい家族ができたとき、住宅ローンが負担になる(養育費の減額請求が難しい)

  • 私に新しい家族ができたとき、自宅をどうするかで話し合わなければならない(新しい家族ができたので…から始まる話し合いが地獄)

  • 転職や子の進学など、引っ越したいときに引っ越せない

  • 養育費の支払い期間が終わったあとの自宅の取り扱いを決めにくい(残債は?所有権は?その後は誰が住む?)


と、まあこんなんは序の口で、ありとあらゆるパターンで揉めることが想像できます。

せっかく離婚したのに、夫と揉め続ける人生なんてイヤすぎます。


持ち家は必要か

持ち家か賃貸か、一生語れるテーマ!そして一生答え出ないやつ!!

そもそもなんで家を建てたんだっけ?に戻ると、「いい環境で子どもを育てたい」と思ったからです。


【持ち家で子育てするメリット】

  • 高い機能性(広い、あったかい、防音、庭でプールできる)

  • 生命保険代わり(親が死んだらローンがチャラになり、家は資産として残る)

  • 帰れる実家がある安心感(アパートだと駐車スペースも限られるので帰省しづらい)


わかる…!わかるなぁ。
子どものことを考えてこだわりの注文住宅を建てた私(と夫)の気持ち、今でもよくわかります。


一方で、離婚を考えてからは以下のようにも思うのです。

  • 高い機能性 ⇒最近の賃貸は注文住宅並みに機能性が高い。

  • 生命保険代わり ⇒家の価値は下がり続けるので、子どもに残すというより、処分を押し付けてしまう恐れがある。

  • 帰れる実家がある安心感 ⇒アパートだろうがマンションだろうが帰ってきたけりゃ帰ってくるでしょ。安心感を語るならほかにもっとやることがあるのでは。


いやわからない…!わからないなぁ。
正解がないので、自信をもって「これだ!」という選択は難しいと思います。

ただ、有識者の意見を聞いて初めて、離婚後の権利のねじれや、持ち家でなくても子どもを育てられるか、を深く考えることができました。


査定結果

結果はっぴょ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~う!!!
(情緒不安定なので突然浜ちゃんになる)


査定価格:3,250万円
住宅ローン残債:3,750万円
----------------------------------------------
売却後の残債務:500万円

(ティラリ~~鼻から牛乳~~~~~~~~~~♪)


先述のとおり、築3年程度の築浅物件は売却価格が住宅ローン残債に届かないケースがほとんどです。

理由としては、建物は人が住み始めた瞬間から大きく価値が下がるのに対し、ローンの残債は3年程度では大して減っていないことが多いためです。頭金ドカンと入れていれば違う結果になるんでしょうけど。

例にもれず、私たちの自宅の査定価格も住宅ローン残債を上回ることはありませんでした。


……あ、待って、そういや現金あるわ。



10年後に繰り上げ返済するため、新築祝いやら補助金やらを現金で貯めていたのです。天才か。
(住宅ローン控除を受けられる10年間は繰り上げ返済しない方が得です。詳しくはググるか私にDMくれたら適当に答えます。)

貯めていた繰り上げ返済資金は250万円。


私は不動産営業マンに詰め寄り、人生で1番艶っぽい声で言いました。

「この家、3,500万円なら売りまぁす」

こはる は つやっぽいこえ でとなえた!
しかし なにも おこらなかった!


勢いでした。
というかもう、楽しくなってきました。

離婚と自宅の処分とオーバーローンをどう攻略するか、ゆるくないどう〇つの森みたいで楽しいんです。


自宅を売却すると決めたあとのことは別記事で詳しく紹介するので、ざっくり結果だけ書きますね。

  • 不動産営業マンから夫に説明、同意を得る

  • 3,500万円で買い手が見つかる

  • 無事に売却、妻子でアパートに引っ越し完了


子どもの気持ちが置いてけぼりじゃないか、と言われたら、正直あまり反論できません。決まったことはその都度伝え、言える範囲で理由を説明して、一緒に悲しんだり、今後の楽しみを語ったりするくらいで、特別な配慮はできなかった。親に頼らずには生きられない子どもの生活を、私の都合で変えてしまったことは深く反省しています。まあでも、タラとかレバとか考えるのが人生ですから。子から「タラ!」「レバ!」と責められたときには、素直に「ごめん!!」と謝る準備はしています。


義父よ

そしてこの自宅売却話にはオチ中のオチがあって、実は義父、連帯保証人でも何でもなかったんですよ。

こわくないですか?

自分が連帯保証人だと勘違いして「今すぐにこの家から退去し…」ってドヤでお手紙をしたためちゃったようなんです。
私も手紙が読み上げられたシーンでは雰囲気に押されて全く気が付かなかったのですが、住宅ローンの書類を見返すと、義父の名前はどこにもなく……。

不動産会社の営業マンに聞けば、いまどきは連帯保証人になりたがる人もいないので、保証人ではなく保証会社をつけることがほとんどだそうです。

このときばかりはウッキウキで夫に連絡しました。
「住宅ローンの書類にお義父さんの名前が一切載ってないんだけど、銀行に連絡した方がいい?連帯保証人の債務が抹消されなかったら困るよね?(すっとぼけ)」

確認する、という夫からの連絡を最後に、義父は会話の端にも登場しなくなりました(めでたし)。

とはいえ、義父の勘違いと私への意地悪がなければ、権利のねじれに気付けなかった可能性も大いにあります。

だから義父、まじ、サンキューな。


次回予告

自宅を売却した話・前編~なんでせっかく建てた家を3年で売ることになっとんじゃい。~ のお話は以上になります。

次回は、自宅売却の具体的な手順をただただ解説するだけの記事をお届けする予定です。刺さる人にはぶっ刺さる内容だと思います(ハヤクコッチニオイデヨ…)。

ではまた1年後にお会いしましょう。


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