精臭の木の話。
梅雨の時期が嫌いだ。
雨で足元が悪い上、湿気でジメジメする毎日は誰もが不快に思っていることだろう。
だが、私には他にも梅雨を嫌う理由がある。
栗の花が咲く時期だからである。
私自身、街中で栗の木を見かけたという記憶がないのだが、読者は栗の花を見た事はあるだろうか。
20cm程の長さの房状のフワフワが
一箇所から四方八方へ広がるように束になって咲く。
それは決して美しいとは言えない奇妙な形をしている。
そしてその奇妙な形は独特の臭いを放つ。
とんでもなく強烈な悪臭、例えるなら精臭をあたり一帯へ漂わせるのである。
私はその栗の花粉にどうも弱いらしく
精臭だけでなく目の痒みやくしゃみにも悩まされるのだ。
更に、私はこの栗の開花時期に誕生日を迎えるので、それはもう酷い状態で齢を重ねる。心底辛い。
これらの数々の理由により、私の人権を奪う梅雨の時期が嫌いなのである。
しかしこの精臭の木だが、何処にでも生えているような木ではないと思う。
私は山を切り拓いた住宅地に居を構えているのだが、所々に天然林が残されていて、自宅の門前と裏側、あと山の坂の脇に栗林がある。
つまり、梅雨の時期は自宅近辺が地獄と化すのだ。
毎朝その栗花粉を浴びながら自転車で坂を下る訳だが、その精臭は髪やら衣服に付着し、帰宅してシャワーを浴びるまで不快感が続くことになる。
まあシャワーでそれらを洗い落としたところで
浴室から出るとやはり強烈な精臭に冒された空気の中に身を置くしかなく、一時の気休めにしかならないのだが。
この栗の花粉を嗅いだ事のない人がいたら
一度何かの機会があれば是非とも嗅いでいただきたい。
大袈裟ではなく、本気で、精臭なのだ。
香りを共有できるアプリとか、そういう技術が発展していたのなら間違いなくnoteに添付していただろう。
とりあえず花粉で目が痒く開けているのが辛いのでこの辺りで締めということで。
時節柄ご自愛ください。
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