カープダイアリー第8417話「新井監督ファイトイッパーツ!常廣羽也斗交渉権ゲット返す刀で青学キャンパスへ…4年後広陵ボンズとの2ショットを夢見るファンも」(2023年10月26日)

2023年プロ野球ドラフト会議supported byリポビタンD。抽選販売で貴重な席をゲットしたおよそ700人のファンも見守る中、会場に新井監督の雄叫びが響いた。
 
「よっし!!!」
 
さらにCS決戦時のベンチ内と同じように、抽選用紙を持った右手を突き上げた。もうちょっとでスーツの上のボタンが千切れそうだった。そんなことになれば縁起は悪いが鍛えた肉体のおかげでスリムさキープ?
 
隣では、先に外れクジを引いた楽天・今江監督が残念そうに抽選用紙に視線を落としていた。
 
1巡目指名が終わると新井貴浩監督がXのトレンドランキングで1位の「ドラフト」に次ぐ2位に「新井さん」でランクインした。そういう波及力は大事だ。スポンサードするリポビタンDのイメージとも完全にシンクロしている。
 
 
カープ球団は10月13日のスカウト会議後、青学大・常廣羽也斗投手の1位指名を他球団先んじて公表した。前日までは日本ハム、阪神など最大4球団との競合が予想されていたが、結果的には1/2確率になった。
 
「ほんとに緊張しました、クライマックス・シリーズで菊池にスクイズのサインを出した時以上に緊張しました」

抽選後、生放送用に行われた場内インタビューで、新井監督はギャクから入ることを忘れなかった。だが、興奮のあまりその後は珍しく噛みかけた。

「…何年か…後か、にはチームの核となる素晴らしい素質を持った投手だと思います。(常に広島だから)名前からして、ご縁を感じていました。同郷の森下投手もいますので、安心してきてください」

都内渋谷区にある青山学院大学キャンパス内、総研ビル大会議室には午後5時前から3人のドラフト指名候補選手がメディアの前でその時を待っていた。

中島大輔外野手(総合文化政策学部4年)、下村海翔投手(コミュニティ人間科学部4年)、そして常廣羽也斗投手(法学部4年)。
 
下村海翔は1巡目入札で阪神から単独指名を受けた。続いて吉報が届いた常廣羽也斗はテレビカメラの前で多弁に応答した。
 
「カープが最初に1位を公言してくれた時から、一番自分を評価してくれた球団に入りたいという思いがありました。カープで野球がしたいと思ったので、嬉しいです」

「一軍の舞台で投げられる選手になれるようがんばりたい。2年後、3年後にチームの核になれるよう、1年目から体作りをしてレベルアップしたい」

「カープはファンの熱量がすごくあるチーム。現役時代から豪快なフルスイングと本塁打が好きだった、新井監督もすごくステキな人で、人間性のある監督なのでとても楽しみです。希望としては先発投手でやりたいです」

指名あいさつでもカープは先陣を切った。ドラフト会場の港区のグランドプリンスホテル高輪からタクシーを飛ばして青学キャンパスへ。そしてともに拳を肩の高さに掲げて2ショットの撮影に応じた。不思議なもので初めて出逢ったようには見えない。
 
県立大分舞鶴高時代を知る関係者はその人となりについて「学力優秀校だし、文武両道、まだ線は細いが、自分で考え工夫してどんどん成長していくのでは?」と話す。白武スカウト部長も「まだ伸びしろがある」と同じ見立てをしている。
 
新井監督と常廣羽也斗の記念撮影が続くそのタイミングで、中島大輔が楽天からの6位指名を受けた。
 
先に2人が指名され同じ会場内で会見と撮影が行われる中、その片隅にいた中島大輔とチームメートの中から喜びの声が上がった。
 
新井監督はここでも右手を突き上げて「中島君、楽天指名おめでとう、頑張ってね」とエールを送った。この日がかけがえなのない記念日となった3選手にとってはいっそう思い出深い時間になった。
 
一方、広島市安佐南区にある広陵高の会見ルーム。午後5時前、席についた真鍋慧内野手の表情は硬く、中井哲之監督が「歌でも歌ったらどうか?」と一瞬笑いを取ったものの、またその場はすぐに重たい空気に包まれ時間だけが過ぎて行った。
 
メディアの前に真鍋慧が姿を見せてからおよそ1時間半が経過したころ、広陵高から大商大に進んだ左腕、高太一投手がカープからドラフト2位指名された。
 
その後、ドラフト会議はドラフト3巡目指名が終わり、真鍋慧の名前が呼ばれることはなかった。
 
高校通算62本塁打を放ち、1年時から常に注目されてきたボンズこと真鍋慧は、4位以下指名なら進学する意向を表明していた。これでプロ入りが実現するのは最短で4年先となった。

プロのスカウトはどこを見ているのか?例えば常廣羽也斗で言われた「伸びしろ」は判断材料の中でも重要度大だ。

もちろん「伸びしろ」を高く評価されながら、プロ生活が短命に終わった選手は星の数ほどいる。それでもスカウトは母親の身長や骨格などの体型、中学、高校、大学、社会人とステップアップする中での成長曲線や現時点での肩やリストの強さ、脚力などを総合的に勘案してスカウト会議でほれ込んだ選手をプッシュする。

カープスカウト陣には苦い経験がある。6年目のきょう、同じ広陵校舎内会見場でドラフト会議の行方を見守った中村奨成は今やプロ野球人生、風前の灯という状況にある。

当時、松田元オーナーは当初の方針を変更して、夏の甲子園6本塁打の右のスラッガーなら…と1位指名に踏み切った。マツダスタジアムに客を呼べるスター選手への道が期待されたことになる。

だが、それは金属バットによる恩恵が多分に含まれた「データ」であって、すでに高校野球レベルでその力量は頂点に達していたのかもしれない。言い換えれば「伸びしろ」が極めて少なかったことになる。もちろん坂倉との一騎打ちに身を置きながら女性にうつつを抜かしたメンタル面も含めての話だ。そこもスカウティングの対象…

189センチ90キロ越えのフィジカルが武器の真鍋慧は、今夏の広島大会と甲子園大会を通じて最後まで「ボンズ」の呼び名に相応しい打球を放つことはできなかった。木製バットならなおさら苦しい。しかも高校3年間はほぼファーストに固定されていたが、プロで試合に出ようと思えばサードか外野手。ファーストは外国人枠だ。

広島生まれ広島育ちの真鍋慧が大学野球で多くを学び、ドラフト会議でカープ球団に指名される、という逆転のストーリーを夢見るファンは多い。長期政権の新井監督は4年後も、今と変わらぬスタンスでドラフト会場でもキャンパスでもきっと右手を突き上げているだろう。

そして198センチ同サイズのふたりが記念撮影でガッツポーズ…???ドラフト6位指名から新井監督が誕生したように、未来のことは誰にも分からない。

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