カープダイアリー第8596話「神宮球場でヘビー級パンチ2発を浴びたことが、負の遺産にならないために」(2024年4月25日)

ものすごい打球音とともに、神宮球場が大歓声に包まれた。打たれた瞬間、右膝を地面についたまま栗林が見上げたその視線の先で、ロフテッド軌道を描いたサヨラナ弾がライトスタンドへと消えて行った。

両軍ともに柵越え2発を含む13安打の応酬となった3時間と56分の戦いは8対9という派手なスコアで決着を見た。打ったサンタナは人差し指を高く掲げてダイヤモンドを回り、ヤクルトベンチ総出のホームで手洗いシャワーの歓迎を受けた。

「頭が真っ白になって、どんなふうにして一周したか覚えていない。ただ、勝ったことを神様に感謝していました」

打たれた栗林は視線をグラウンドに落としたまま“敗戦のポーズ”でマウンドから降りた。今季10試合目で初めての屈辱。防御率も0・00だった。

数字で言えば守護神はこれでちょうど9回を投げて自責1、与死四球ゼロ、被安打2、そして奪った三振の数15。

そう、力対力の勝負で相手のバットに空を切らせる術に長けた投球ができていた。先頭の村上には真っすぐ2球かすらせもしなかった。だからサンタナに対しても初球外角のフォークでストライクを取り、カットボールで空振りを取り2球で追い込んだあと、外角へのフォークを見せ球にして、4球目は坂倉の構えたアウトローへ真っすぐを投げ込んだ。

だが、それが高く入った。腕の長いサンタナはホームベースから離れて立っているが、強振するにはちょうどいい距離ができたことになる。

そんなこんなで一発を狙っていたサンタナが「神様に感謝」したのには理由がある。

ヤクルト2点リードの四回に、照明と重なった黒原の打球を後ろに逸らして三塁打にしてしまい、結果、試合は振り出しに戻った。

確かにこの日は何が起こっても不思議ではない空気がグラウンドには漂っていた。そんな流れを作ったのは来日3度目の先発マウンドに上がったハッチだった。二回、やはり力勝負を挑んだオスナに5号満塁弾を許すなど、1イニング6失点で2回KOされたのである。

一方、脆弱さが指摘されてきた打線は、二回にプロ初スタメンの二股がカープファンの待つレフトスタンドにプロ1号ソロ、三回には菊池も1号2ランを放ってヤクルト先発・高橋奎を3回2/3降板へと追い込んだ。

六回、ヤクルト三番手の清水から代打秋山と野間のタイムリーで8対6と勝ち越した時点では乱打戦での主導権を握りかけていた。

だがその裏の中崎がオスナを迎えて低目を意識するがあまりのタイムリー暴投。七回の矢崎は村上・空振り三振、サンタナ・右飛、山田・遊ゴロと1点のリードを守る投球を貫徹したが、八回の島内は代打川端に真っすぐを3球続けたのが運の尽き、技ありの同点打をレフト前に弾き返された。

新井監督の同郷の先輩でもある高津監督にも意地がある。この試合、今後の両者の戦いに何らかの影響を及ぼすようなことにならないか?

最初から最後までマスクをかぶっていた坂倉にも、いろいろ反省すべき点が残されたはずだ。4月12日の巨人1回戦(東京ドーム)で、九里が9失点して大敗した際のキャッチャーも坂倉…。打たれだしたら止まらなくなる、そんな流れを断ち切るタフさも、扇の要には必要になってくる。


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