カープダイアリー第8478話「限りなく透明に近いドジャーブルー、左並べた打線vs山本由伸…8回101球8三振の衝撃」(2023年12月30日)

山本由伸の日本国内での移籍会見が大阪市内のホテルであった。その模様はオリックス・バファローズ球団公式YouTubeでも配信された。

会見の中で、“らしい”発言がいくつもあった。

「高みを目指して、向上心をすごく大切にしています」

「ほんとにプロ1年目から取組みは変わっていないですし、やっていることは全部同じなので、そこをしっかり頑張るだけです」

「この7年間、オリックスという球団でプレーできて、ほんとに成長できた7年間でしたし、オリックスだからここまでこれた、というところもたくさん感じてますし、何より7年間どんな時も応援していただいたみなさまに本当に感謝しています」

「僕もほんとに普通の子どもだった、というか、特に昔からすごく優れていたわけでもないので、そこから少しずつがんばって、ここまで来られたので、そういった子どもたちも、本当にすべての方が、そういった方に何かいいものが届られたら、とは思います」

年明けからは、カリフォルニアの青空の下で、リアル二刀流との距離がこれまで以上に近くなる。先ごろオンエアされたNHKスペシャル「メジャーリーガー大谷翔平2023伝説と代償そして新たな章へ」で紹介された内容と、今回の会見内容はまるかぶり、だった。

同番組の中で、大谷翔平自身は長期的な計画に沿った地道な動きの繰り返しやトレーニングの大切さを強調した、と同時に、日米双方でますます注目度が高まる「ドライブライン」の活用法について触れたパートでは、関係者の口から「強い好奇心と向上心」のキーワードが漏れた。両者を有する者のみがこの世界で成功するのだ、と…

「イチロー」が大阪刷りスポーツ紙一面を連日、飾った時代があった。オリックスの年間集客数は急上昇!しかし1977年の171万2000人をピークに、2002年には109万9000人まで落ち込だ。実数発表ではない、どんぶり勘定での話だ。

2004年の球界再編を経て、ブルーウェーブからバファローズへ移行。2017年には実数値でも170万人超えを果たし、球団の足腰は強くなった。2016年ドラフト4位入団の山本由伸はこの1年目に5試合に先発して23回2/3を投げ1勝1敗、防御率5・32。確かに「すごく優れていたわけではない」プロとしての第一歩となった。

だがリーグ連覇を果たし日本一にも、世界一にもなった右腕の、NPB7シーズン目のそれは、すさまじいものになっていた。

5月30日の京セラドーム大阪、オリックス-広島1回戦。

カープ打線は…

菊池
龍馬
秋山
松山
坂倉

韮澤
田中
中村貴

…というオーダーを組んできた。右打者は菊池のみ。

初回、菊池二飛、西川二ゴロ、秋山空振り三振。わずか11球、マウンド滞在時間4分という立ち上がりになった。

二回は松山、坂倉、林を連続空振り三振に仕留めた。三回も3人で抑えた。

四回、2ボールとなった西川に右前打された、が、秋山空振り三振、松山二ゴロ。ともにフォークで料理した。

五回に2点の援護をもらい、1安打ピッチングのまま迎えた八回、一死から秋山にゴロでセンター前に弾き返された。ここでも松山を152キロで遊飛に、坂倉をフォークで空振り三振に仕留めた。

8回101球2安打無四球8三振。三塁を踏ませぬ投球を振り返ってみると、二回以降も球数は14、11、13、12、12、16、12と見事に「デザイン」されていた。

山崎颯との完封リレーを許したカープベンチからは「山本由伸はどうやっても打てない」の声が聞こえてきた。追い込まれると完全に劣勢に回る。勝負できるのは追い込まれる前。よえに積極打法で40%前後を占める真っすぐに絞ってみても、ファウルにしかならない。落差の大きいカーブをカウント球に使われてなおいっそう分が悪くなる。そしてフォークにはカスリもしない…

この日の試合時間はわずかに2時間25分だった。大瀬良を立てての完敗劇によりカープの対オリックス戦連敗は13まで伸びた。中嶋監督と、“広島育ち”の名参謀、水本ヘッドのコンビは、エースに成長した山本由伸を柱に据え、球団の存在をさらに大きなものに引き上げたのである。


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