カープダイアリー第8332話「死闘甲子園!延長4時間56分引き分け、スタメン・一番セカンド小園の未来」(2023年7月29日)

鳴り物なしの応援が始まって1時間近くが経とうとしていた。入場者4万2632人の公式発表があったスタンドでは何度か阪神電車の時刻案内アナウンスが流された。

ウル虎の夏に相応しい死闘。延長十二回裏、阪神の攻撃はツーアウトランナーなし、ボールカウント1-2…

マウンドには8人目の大道、高いグリップの位置でバットを構える梅野は途中からマスクをかぶりこれが2打席目。坂倉のミットがアウトローに固定され、バットに空を切らせて4時間56分ゲームにピリオドが打たれた。

右手でガッツポーズの坂倉は、小さな達成感を味わったに違いない。

右中指にできたマメの影響で5回3分の1降板した森下に始まり、ワンポイントで3分の2を投げた中崎、その後は毎回投げ手が入れ替わってターリー、島内、栗林、延長に入って矢崎、戸根、そして大道をリードした。

合計192球。全国各地で熱戦が続く夏の甲子園地方大会顔負けの熱投だ。

ピンチはいきなり初回にやってきた。近本、中野の一、二番に連打されて無死一、三塁。前夜のヒーロー森下翔太は3球三振に仕留めたが四番大山に犠飛を打たれた。

だが打線は三回にこれまた高校野球もビックリの攻撃で同点にする。

先頭の八番矢野が内野安打で出塁すると森下の初球で矢野が顔に泥を受けながら頭からセカンドベースに飛び込んだ。バントシフトの一、三塁が前進した瞬間、スタート…。この日、広島県内では広陵と広島商による県予選決勝があったが、両校が得意とする“足技”レベル!?すかさず一番小園がタイムリーを放つと、このあと二盗も決めて阪神バッテリーを揺さぶった。

六回、右手に異変を感じていたはずの森下が佐藤輝明に勝ち越しソロを許した。再び1点を追いかける展開になった。

打線は阪神先発青柳の前に七回まで4安打止まりだったが、八回、二番手加治屋から代打上本が右前打で出塁。代打磯村のバントで二塁封殺となってもその続きがあるのが新井カープだ。


代走は羽月。阪神も岩貞にスイッチ。その初球、小園の打球が左中間を破って羽月らくらくホームイン。


打席に入る前、小園は朝山打撃コーチから何事か耳打ちされていた。おそらく「真っすぐをセンターから左方向へ打ち返せ!」だったのではないか…

ゲームセットの瞬間、グラウンドに立っていたのは野間、秋山、延長十一のセカンドの守りから出場の菊池、サードからファーストに回った田中広輔、サードの上本、延長十二回に代打で中前打を放ったあとレフトに入った堂林、それにバッテリーとショート小園の9人だった。

首脳陣は5月19日の甲子園で5回8安打7点と打ち込んだ青柳との二度目の対戦でついにあの“封印”を解いた。

5月19日のスタメン
レフト中村貴浩
レフト龍馬
センター秋山
ファースト松山
キャッチャー坂倉
サード林
ショート田中広輔
セカンド韮澤
ピッチャー玉村

この日のスタメン
セカンド小園
ライト野間
センター秋山
ファースト松山
キャッチャー坂倉
サード田中広輔
レフト大盛
ショート矢野
ピッチャー森下

左打者8人はいっしょ、クリーンアップもいっしょ。そしてセカンドスタメンに“初公開”となる小園…

前夜、野間とともに敗戦の責任を背負い込むことになった小園をセカンドで試した理由はいろいろあるだろう。コンディション不良が続く菊池の後釜をどうするか?という大事な“夏休みの宿題”もともそろそろ向き合う必要がある。

大道の150キロが坂倉のミットでいい音を響かせると、帽子をかぶり直した小園は疲れた様子も見せず三塁ベンチに戻った。そこでは新井監督やコーチ陣がタッチを繰り返していた。

長いシーズン、長いプロ野球人生にはいろいろなことがある。その中で野手であれば最後までみんなとその場で戦い続ける姿勢がないとこの世界は始まらない。

7月21試合目でやっとスタメン出場の声がかかった矢野が打って、走って、守ってと再三いい動きを見せた。小園は二遊間コンビを組む相手から大事なことを感じ取る必要もありそうだ。

今後も岡田阪神とは1点を巡る攻防、ロースコアの戦いが続くだろう。

この日の阪神投手リレーは青柳以下、7人だったが青柳と加治屋に失点1がついただけで、しかもブルペン陣6人は無四球だった。延長十一回の桐敷に対しては野間、秋山の連打で一致一、三塁と唯一、勝ち越し機を作ったが松山、坂倉が封じられた。

一塁ベンチ前で虎ファンに挨拶した岡田監督も苦笑いも浮かべながらベンチ裏へと消えていった。ウル虎の夏はまだ終わらない。あす、大瀬良vs伊藤将司の予告先発による引き分け再試合プレーボール!

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