カープダイアリー第8340話「ミステリと言う勿れ~広島編、マツダスタジアムで岡本和真3発、中田翔300号、長野御礼弾~河野佳は8・6のマウンになぜ上がったのか…」(2023年8月6日)

ミステリと言う勿れ~広島編。物語は最初と最後が肝心だ。
 
マツダスタジアムで夏休み最初の週末3連戦。2日前の初戦は4対3サヨナラ勝ちだった。九回、代打松山の打球が一、二塁間に飛び、ダイビングキャッチを試みた岡本和真はボールが手につかなかった。
 
2戦目。岡本和真が意地の27号ソロを放っても、マットと田中広輔の2ランで応戦した。三塁ベンチに広がる重苦しい空気が見て取れた。
 
迎えた8月6日の第3戦。「ピースナイター」として平和への願いをこの地から発信する。その主旨は両軍ベンチにも伝えられた。
 
試合後、インタビューを受けたのは岡本和真だった。ニコリともせずにプレーに関する質問に答えたあと「ピースナイター」について聞かれると、しっかりとした口調でこう話した。
 
「こうして野球ができてるってことが、当たり前ではないと思うので、感謝を持って1試合1試合頑張りたいと思います」
 
栗山ジャパンでWBCの死闘を経験した岡本和真は大会終了後に「野球ってこんなに楽しかったのかって…」とテレビカメラの前で真顔で話した。
 
いっそう真摯に野球と向き合っているのだろう。
 
それではカープ球団を所有する松田元オーナーはどうか?ピースナイターの主旨をどうとらえているのか?
 
この日、唐突に河野佳が出場登録され、そのまま八回のマウンドに上がった。

結果は35球5安打5失点。代打中田翔にメモリアルの通算300号3ランを献上した直後には岡本和真にこの日3本目となる30号ソロをレフトポール際に叩き込まれた。

その間、河野佳はマウンドにひとりぼっちだった。2安打されて一死一、二塁から坂本の一撃はケガを覚悟で懸命にジャンプする秋山の上を越える適時二塁打。あと一伸びでスタンドだった。

中田翔の打球はこの日、巨人打線が放った5発の中で最高の当たりだった。「うわぁ、打ったぁ、レフトだぁ…」(中継局アナ)。広島で生まれ育ったスラッガーへ野球の神様からのプレゼント…どよめきが残るレフトスタンドへ岡本和真の打球が飛び込んでも、もう誰もそこへ足を運ぼうとはしなかったのである。

二軍の河野佳は一時期、益田武尚や長谷部銀次と同じ日に投げていた。しかし8・6が近づくと登板間隔が詰んだ。7月30日の阪神戦(丸亀)で1回を投げ2安打1四球1暴投の2失点。一軍マウンドにはおよそ遠い内容だったが、8月4日のソフトバンク戦(筑後)でも1回を投げ三振3つを奪ったものの2安打された。

同時期、もうひとつ不思議なことがあった。

薮田が7月30日、8月2日、5日と異例の集中登板を命じられていた。結果、5日のソフトバンク戦(筑後)は1イニング3失点だった。

この二人を天秤にかけたのは誰なのか?新井監督にはそうする必然性がない。自身ワーストとなる被安打18で0対13の大敗を喫し「申し訳ない、私がしっかり反省して…」とコメントしたが、そうじゃないだろう。

球宴明けから大瀬良が日曜日に投げるよう調整したのは誰の考えか?

結果、ピースナイターのマウンドがよく似合う右腕は初回と四回、岡本和真にスタンドまで運ばれ二回、長野の打球もレフトコンコース手前で弾んだ。

マツダスタジアムでの5発被弾は2016年7月29日のDeNA以来だ。その前年2015年5月に松田元オーナーがビジパフォを分割したことによって生じたビジパフォの呪いではないか、という声が当時上がっていた。

ならば、ピースナイターでの5発被弾は何の呪いか?

広島は78年目の8・6を迎えたが松田元オーナーや、その下で監督に指名された面々が原爆慰霊碑に献花したり、折り鶴を平和公園献花台に持ち込んだ、という話を聞いたことがない。

その一方で広島や平和に所縁のある投手がこの日、申しわせたようにマウンドに立つ。

松田元オーナーは代行時代も含めて地元放送局や中国新聞を使い長らくプロパガンダを行ってきた。カープファンや広島県民のほとんどが“献花しないカープ”に気付いてもいないし、球団発信の平和推進活動と思われているものが、メディアやスポンサー、関係者の手で構築されていることも知らない。

先ごろ広島市が子どもたちの教材から削除してしまった「はだしのゲン」を愛する新井監督は、世界平和や広島の街に笑顔の花が咲くことへその意識を常に向けている。

そんな現場に無用な介在をしたがために、もしこれで巨人が息を吹き返したらどうなるか。

DeNAが敗れて原巨人が3位に浮上。まだゲーム差は5・5あるが二週間後にはまたマツダスタジアムでの3連戦が待っている。

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