カープダイアリー第8278話「ふたりの背番号9、打率3割6分の超スラッガーが”本拠地”マツダスタジアムで声援を浴びるパラレルワールド」(2023年6月2日)

3万470人のファンで埋まったマツダスタジアム、注目のソフトバンク初戦は1対5の完敗に終わった。
 
中16日の床田は6回91球3失点でクオリティスタート成功、七回には5月1日抹消以来のマウンドに立った栗林がスタンドからの声援を受け1安打2三振に抑えたが、ライアンのソロのみでは如何ともしがたい。
 
これで開幕からちょうど50試合を消化して25勝25敗。勝率5割は早くも11度目になる。
 
借金は開幕連敗による4が最多。貯金は3が最多。5割ラインを上下動しながらリーグ3位をキープしている。大健闘だ。
 
だが交流戦だけなら話は別。4試合1勝3敗、勝率・250で単独最下位の“定位置”になった。あとはこの位置に腰を据えてしまうのか、猛反発するのか、ふたつにひとつ…中途半端な成績などいらない。
 
京セラドームでは、投げては九里、打っては秋山の“ガッツ”で勝ちを拾うことができた。本拠地での3連戦でも先手を打たれ、残り2戦がどうなるか?
 
それにしても“広島が生んだ人材”は“戦闘能力”が高い。オリックスには水本ヘッド、梵内野守備走塁コーチ、高山投手コーチ、さらには小林二軍監督。そしてソフトバンクなら主将2年目の柳田…
 
六回、床田のツーシームをライトスタンドに一直線に運んだ9号2ランは“驚弾”と言うに相応しい一撃だった。並外れた肉体の持ち主でないとできない芸当だ。
 
「いいバッティングだったと思います、ハイ!」
 
「(マツダでは)黒田さんのホームラン(2016年6月3日)以来だと思います、格別です」
 
試合後のインタビューでそう話したヒーローに、ホークスファンが沸き返った。いや、福岡からのファンだけではない。広島生まれ、広島育ちだから友人、知人も大勢応援に駆け付けた。
 
柳田は毎年1月、多くの若手と自主トレを行う。今年も日本ハム・清宮、ロッテ・安田ら他球団選手も交えた合同トレをファンにも公開して大分県臼杵市内でスタートさせた。
 
自主トレ後半で一行は呉市内に車移動。ここでも自主トレは公開され、20歳代前半の選手といっしょにダッシュを繰り返す柳田の姿が紹介された。そして関係者に紹介された広島市内の料理店に集まり、互いの活躍を誓い合ったのである。
 
10月で35歳になる柳田は、その超人的な肉体のあちこちが悲鳴を上げているようだ。実際、オープン戦では散々な成績に終わっていた。だが開幕後は一転して打ちまくり4月の月間打率は・389。現在、リーグトップの打率・324、出塁率・433をキープしている。
 
同じ9番の秋山は現在リーグ3位の打率・348、リーグ最多の69安打。ふたりは同じ1988年生まれ。2015年、秋山が216安打のNPB記録をマークした時には打率・359をマークしたのに首位打者になれなかった。柳田が・363と打ちまくったからだ。
 
新井監督の下で”再生化“が進む秋山と柳田が、ともに赤いユニホームでグラウンドに立っていた風景を思い描いてみる。
 
広島商出身の柳田は東都リーグの強豪校を目指したがセレクションでふるい落とされ、地元の広島経済大学に進んだ。運よくまだ「枠」が残されていたからで、通常だとNGだったという。
 
当時の広経大の監督は、カープで選手、指導者として活躍した龍憲一氏。当然、カープ球団には龍氏の”推薦状“が届けられたが、球団側はそれをスルーした。松田元オーナーが一番頼りにしている山本浩二氏が、その打撃を評価しなかったから、だ。
 
交流戦4試合を戦い、新井カープのチーム打率・180は12球団最低で6得点もヤクルトの5得点(ただし3試合)に次いで低い。
 
マツダスタジアムを本拠地として新井監督の下、秋山らと共に打ちまくる。そんなパラレルワールドを、もしかしたら柳田自身が想像していたりするのではないか… 今季目標として掲げているのは「30本塁打」、広島でもう一発くらい打ちそうな予感が…

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