カープダイアリー第8575話「代打松山「オレやったよ!」、中村奨成や久保修が「やったよ!」となるために大事なこと」(2024年4月4日)

マツダスタジアムにチャンステーマが鳴り響く中、藤井ヘッドの右隣で新井監督の目が“勝負師”になっていた。八回、上本のライト線適時打で3対3同点に追いつき、なおも一死一三塁。ヤクルトベンチが清水から嘉弥真にスイッチしても代打松山!シュート2球でボールカウント1-1のあとのスライダーファウルで4球目…

スライダーの連投を松山は読んでいたのか、どうなのか?逃げていく軌道に右手1本でヘッドをぶつけると、打球はライトへ…途中出場の丸山和、ダイビングキャッチ…のわずか手前で弾んだ白球はそのまま抜けて堂林に続いて上本もホームに還ってきた。

続く矢野もこの日の初打席でライト前タイムリー。会心の逆転勝利で開幕2連敗からの3連勝となった。

「去年、得点圏で、ゼロ割3分で終わったんで、今年は何としても2割台にと思っていたので、打ててよかったです。前のバッターの松山さんが回してくれたので、本当にありがとうございます。レギュラーが取れたら一番いいんですけど、今は与えられたところで必死に食らいついていきたいと思います」

お立ち台でそう話した矢野はキャンプ途中から打撃力向上が顕著になり、オープン戦でも限られた打席の中で磨きをかけてきた。開幕から5戦を消化してスタメンなし。だが、種の陣はその努力を高く評価しているに違いない。そして、とうとう嘉弥真という難敵から引っ張って打点をもぎ取った。

矢野に続いてマイクを向けられた松山もベテランらしからぬことを口にした。

「ここ3試合、チャンスで打ててなかったんですけど、きょう出てホントに良かったです。17年目ですけど、すごく緊張して、きょうのヒットは最高に嬉しかったです」

もちろん、そのあとにはインタビュアーに促されてキッチリ締めた。

「一発目!鹿児島にいるばあちゃん、天国にいるじいちゃん、きょうオレやったよ!

開幕投手から外れた大瀬良と、ヤクルト先発高橋奎二の投げ合いは、五回を終わって0対0。しかし六回、先頭の塩見にぶつけた大瀬良が先に崩れて、許したヒット1本なのに結果的には3失点となった。

それでも七回、相手のミスでもらったチャンスに曾澤が2点タイムリー。1点差に詰め寄ると、八回にも清水の代わりバナを野間が叩いて二塁打で出塁。そのあと二死一、二塁と場面は変わって打席には上本。この時、ベンチには松山以外にも、田中広輔、秋山、田村俊介がそろい踏みしていた。

だが試合前練習でいい打球を飛ばしていた上本はそのまま打席へ。そして自分の役割を全うするために右打ちで決めた。

松山も打撃練習ではセンター中心に打ち返しながらミートポイントを確認した。遠くに飛ばそうなどという気はさらさらない。チームの勝利に貢献するために必要なことと理想のバッティングは別ものだ。

新井監督は秋山や田中広輔に“リフレッシュ休養”を与えながら長いペナントレースを乗り切ろうとしている。と同時に、若手の育成も進められる。

よって、この日のスタメンは…

ライト野間
セカンド菊池
ショート小園
ファースト堂林
サード上本
レフト中村奨成
キャッチャー曾澤
センター久保修

…だった。

高橋奎二の武器は力のある真っすぐと、スライダー、カットボール、チェンジアップ、カーブ…。この日は初球からどんどんゾーンに投げ込んでくるスタイルが徹底されており「若い選手は受け身にならないように」(試合前の朝山打撃コーチ)という思いも”空振り”に終わった。

中村奨成はフライアウト3つ、久保修は空振り三振、三ゴロと死球。ふたりとも打撃練習では満振りして快音を響かせていたが、大事なのは相手バッテリーが嫌がるようなスイングやコンタクト力だ。

上本も、松山も、そして矢野も、それがしっかりできていた。

そして今、チームの誰よりもその打撃を実践しているのが野間、ということになる。

開幕第2戦から一番に固定されて打率・375は、同1割にも満たなかったオープン戦時とは別人のようだ。しかも連勝中、七回以降にことごとくつながる打線の中で大事な1本を放っている。

打って良し、守ってよし、走ってよし、野間たかよし…

試合後の新井監督
高橋投手もテンポ良かったですし、ストライクも先行させてましたので、なかなか厳しいなと見てたんですけど、けっこう捉えた当たりが正面行ったのもありましたので、いつかワンチャンスで流れが来てくれと…
(曾澤は)さすがですね、高目の真っ直ぐをね、体の状態も今年彼いいですし頼りにしてます。松山さん、さすがですね~えーさすがです!矢野、崇司もそうですし、ベテランと中堅と若手が噛み合ったナイスゲームだったと思います。


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