カープダイアリー第8359 話「一、二軍合計で借金55、危機的状況の立浪ドラゴンズと加速する新聞離れ考察」(2023年8月28日)

中日が極端に弱い。借金27で勝率・378…

立浪監督1年目の昨季は借金9の勝率・468で最下位だった。さらに“改悪”されている。

二軍も苦しい。27勝55敗で勝率・329、借金28。“親子”揃って末期的症状だ。

こうなることは最初から分かっていた。

ドラゴンズファンにとってはまさに暗黒時代。SNSではしかし「監督だけの問題ではない」と、きちんとしたものの見方もなされている。

今時の高校・大学生は紙の新聞を読むという習慣がない。それどころかテレビを見る時間すら削ってスマホやパソコン画面を見ている。

広島県内の大学で「メディア」の講義を受けた学生が「この授業で学んだことを記せ」との期末テストの問いにこうこう答えている。

「授業を受けたおかげで新聞というものを読んでみようか、という気になりました!」

かつて関東、関西、中部の大都市圏で電車内網棚などに週刊マンガや新聞が数多く読み捨てられていた時代があった。

国内新聞発行部数は例えば、スポーツ紙共々広島でアジア大会が開催された1994年、あるいはアトランタ五輪が開催された1996年ごろをピークにして緩やかに減少し始めた。原因はインターネットの普及、そしてケータイの情報端末化だ。

1990年、携帯・自動車電話のキャッチホンサービスが開始された。タクシーに乗ったら運転手が通話していて驚かされた、という懐かしい時代…
 
そのころ、誰もケータイの進化の速さを予想していなかったはずだ。

1992年、NTTからNTT移動通信網各社(現NTTドコモ)へ移動体通信事業移管(分社化)がなされ、1993年NTTドコモ初のデジタル方式(PDC)携帯電話が開始された。

1994年にはレンタル方式だった携帯電話機の売り切り制がスタートして、4月にデジタル1.5GHz PDCサービスが首都圏で開始され、10月には関西・東海エリアでも始まった。デジタルホングループ(現ソフトバンクモバイル)とツーカーグループも新規参入した。1999年に既存のマスメディア(新聞・ラジオ・テレビ・雑誌)を驚かせるような新媒体が誕生した。

携帯電話からのインターネット接続サービス(携帯電話IP接続サービス)だ。「iモード」、「EZweb」、「J-スカイ(現Yahoo!ケータイ)」で12月には iモード契約数が300万台を突破した。
 
広島では中国放送が先を見据えていち早くこのiモードと放送の“融合”に乗り出した。カープ球団の協力を取り付けて「RCCカープ」という独自コンテツンをiモードなど3携帯サービスに提供、瞬く間に契約者数が万の単位に増えた。
 
その時代、すでにカープファンは全国にいた。しかしカープの詳しい情報は中国新聞が中心で他都道府県のファンには簡単には届かない。しかしケータイで手に入れる情報だから県境は関係ない。
 
仮にひと月100円で閲覧できるとすると3万人が契約していれば毎月300万円の売上がある。一方で紙の媒体ではないので印刷・輸送。制作コストはゼロ…必要なのは取材・執筆費用と一部メンテナンス費用のみ。
 
そしてケータイを使った情報サービスは、2008年のソフトバンクモバイル日本初のiPhone発売により、一気に新時代へ突入する。ずっと5000万分台をキープしていた全国の新聞発行部数はこの時を境にして急激に下がり始めた。
 
広島では中国新聞関係者が実際、街中に出向いて部数減の原因を調査するような事態になった。
 
だが、歯止めはかからない。東日本大震災もネット媒体移行への流れを加速させた。巨大津波や原発事故の情報はリアルタイムでないと使えない。「翌日」などとは言っていられないのである。
 
中部都市圏では中日新聞と中日スポーツが広く愛読されている。東京では東京中日スポーツが発行されているが、中日新聞東京本社は4月1日から東京中日スポーツの1部売り定価140円(税込)から160円(同)に改定した。安さで勝負してきたが、採算が合わなくなった。10円じゃなくて20円は掟破りだが、背に腹はかえられない。
 
日刊スポーツは地域によって異なるが広島では7月1日から1部10円の値上げとなった。こうした傾向はどの新聞社も避けては通れない。中国新聞も日刊スポ―ツに合わせるかのように7月1日、10円値上げした。両者とも1部160円。
 
それでは今時の大学生が毎日160円も出して新聞を購入するかといえばNOだ。コンビニの店員に聞けばすぐわかる。「買っていかれるのは年配男性、たまに女性も…」だ。
 
コンビニの書店ラックはその規模を加速度的に縮小されつつある。新聞ラックもそうだ。そこには10部、20部、少ない場合は5部、8部といったスポーツ紙も入っている。ではそれが日々、どれほど売れているか?10部置いて、2部3部、よくて4、5部というところか…
 
立浪監督が日々、大変な思いをしてグラウンドに立っているであろうことは容易に想像がつくが、その足元は実はグラウンド以外のところ、親会社の経営基盤という部分でも先行き不透明となっている。
 
巨大メディア複合体の中日新聞社は、戦前、愛知県内における2大新聞社が戦時下による新聞社の統廃合命令に伴って1942年に合併して設立された。その関係で、今なおそれぞれのオーナーだった大島家と小山家による2オーナー制が続いている。
 
そのオーナー制の下にある中日球団、その球団の方針によるチーム作りがうまくいなかいのは構造的欠陥によるもの、と考えた方が合点がいかないか?
 
中日新聞社は北海道新聞社、西日本新聞社とともに戦後まもなくブロック紙3社連合を結成して記事の相互補完ほか協力体制を築いてきた。
 
その一角、西日本新聞社では同紙発行の西日本スポーツを、3月31日をもってWebサイトに全面移行した。
 
今季、中日の1試合平均入場者数は3万に届かない。ソフトバンクの方は3万5000人を超えている。西日本新聞社はそれでもブロック紙3社連合結成時の1955年に創刊した「西スポ」を刷ることをやめたのである。
 
最盛期に5300万部を超えていた国内発行部数はもうすぐ2000万部台まで落ち込む。広島でいえば中国新聞社ももうあとがない。あとがないからカープを唯一無二のコンテンツとして、必死で“売れそうな、いい話”ばかりを取り上げる。
 
新井監督や黒田博樹アドバイザーはそうした“お家に事情”をすべて察しながらカープ球団やメディアと向き合っているから、うまくいっているのだろう。

もちろん油断すればカープも立浪ドラゴンズのようになりかねない。実際、野村謙二郎監督の1年目、2010年には勝率・408で借金は26だった。下手すりゃ勝率3割台、という危機的状況だった。

緒方孝市監督の1年目も借金2の4位。佐々岡真司監督の3年間は一度も貯金できなかった。

新聞発行部数の話に戻すと、2004年の球界再編問題は当時の巨人軍、渡辺恒雄オーナーが中心になって画策されたものだ。同オーナーは先ごろNHK特番「独占告白渡辺恒雄」の中で「こっちは今のままで、現状維持で何も困らない、困っている人たち(入場者数じり貧のパ・リーグ勢やヤクルト、カープ)のためにひと肌脱ごうと思っててるの」と話していた。本当にそうか?
 
読売新聞の発行数は2001年の約1千20万部を頂点に頭打ちとなっていた。地上波プロ野球中継もまた1990年代半ば以降、視聴率的に伸び悩んでいた。読売グループが政界を裏で操れるのはその影響力が桁違いだから。渡辺恒雄氏はその力を維持したいがために近鉄バファローズ消滅に端を発する8球団制に舵を切ろうとしたのではないか?
 
マスメディアと球界は密接な関係にある。そして立浪ドラゴンズが抱える根本的な問題点に、中日新聞や中日スポーツが深く切り込むことは決してない、という落ちになる。

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