カープダイアリー第8444話「龍馬、オリックスバファローズ、君は行けるだろう…」(2023年11月23日)

あぁ オリックスバファローズ…

光輝くあすに向かえ

りょうま オリックスバファローズ、君は行けるだろう…

小春日和の赤いスタンドに向けての青い波のような調べは、ホームベース付近特設ステージで熱唱する宇草からのメッセージ。それは新井カープならではの、「家族」思いのチームにとっての今できるだけの最高の演出だった。

4年ぶりにマツダスタジアムでの開催となったカープファン感謝デー。早朝からファンが押し寄せ、午前9時の開門予定は45分繰り上げられた。

広島の青空の下での久しぶりのシーズンオーラスイベントは中国放送など主催者側の配慮でその内容がブラッシュアップされていた。

オープニングのあと始まった「バットじゃなくてマイクを握れ、カープ歌うま王決定戦」。その先陣を切った末包は、日南で伸びた顎鬚をカットして、秋季キャンプ一本締めに続く堂々のあいさつ、となった。

「みなさま、おはようございます。始まりました、ファン感謝デー。まだまだ早い時間ですが、盛り上げていきましょう。それでは聞いて下さい。太陽と埃の中で」

入りのフレーズから大きな拍手が沸き起こり、気分上々でCHAGE and ASKAを歌い上げた結果は91点。
 
だがそのあと出番となった宇草はそれをも上回る92点を叩き出した。誰がどうやって採点したのかは確認していないが“企画力”でも宇草が優っていたのだろう。
 
前日、オリックス移籍が発表された龍馬は、そのあとグラウンドでファンとハイタッチして笑顔になった。そしてマイクの前で別れのあいさつをする機会にも恵まれた。
 
「まず私のあいさつの前に。8年間カープで頑張ってくれた西川龍馬より、お礼申し上げます」(新井監督) 
 
「長いようで短かった8年間でしたが、ここまでFAを取れる選手になったのも、オーナーを始めカープ球団、大好きな先輩、後輩、裏方の皆さんのこのおかげです。ありがとうございます」「来シーズンパ・リーグで優勝し、セ・リーグはカープが優勝し、日本シリーズでカープと戦いたいと思います。それを目標にがんばりたいと思います。8年間本当にお世話になりました。カープに来てよかったです。ありがとうございました」(龍馬)
 
…そう、やはり龍馬にとっての広島は、カープは「来てよかった」と言える存在だった。外から来て、やがてまた出て行く。そして今度は故郷に戻る。“来て、そして帰る”その流れの中での8年間。たぶん最初からそういう話、だったのだろう。
 
この日、もう一度カープのユニホームに袖を通してグラウンドに立つか、どうか。迷いはあったが鈴木清明球団部長も、新井監督もその背中を押してくれた。
 
FA制度は1993年オフに導入された。当初から「FA宣言したら即、移籍決定」を公言していたカープ球団だけに、30年にも及ぶその歴史の中で、「出て行く者」は「裏切り者」のレッテル貼りがファンの共通認識のようにもなってしまっていた。
 
だが、「辛いです」の言葉を涙のFA会見で残しながらも“出戻り”した新井監督の存在が、その悪しき流れに終止符を打つことになった。
 
カープ球団が、松田元オーナー自身がその矛盾に気付いたのだろう。今回の龍馬のFA移籍に当たっては「いい監督の球団に行けて良かったね、という話をしました。頑張ってほしい」と過去のケースからは考えられないような温かみ溢れるコメントを発している。
 
新キャッチフレーズ「しゃ!」が発表され、新井監督も「よっしゃ!」という気持ちで来季に挑む。同時刻に大阪・御堂筋と神戸・西宮でのべ100万人のファンに祝福された岡田阪神と中嶋オリックスと最高の舞台で渡り合うために…

※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

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