カープダイアリー第8277話「必然の1対9完敗、育成新加入の23歳に手痛い満塁弾を許した訳」(2023年6月1日)
強烈な打球がグングン伸びて高い右翼席のフェンスの上を越えて行った。八回、思わぬ“プレゼント”に沸き立つバファローズファン。茶野のプロ1号満塁弾で9対1…
第1戦は大瀬良と山本由伸の手に汗握る投手戦、第2戦は九里のガッツ投法…、熱い戦いの続く京セラドームでの締めくくりは、完全なワンサイドゲームになった。
原因は打たれた薮田、いや薮田を一軍に帯同させた松田元オーナーにある。
二軍戦で大した成果も挙げられていないのに5月19日、戸根の特例2023抹消に合わせて一軍に合流するという“裏技”が使われた。その5日後、戸根が一軍に戻って抹消されたのは薮田ではなく塹江だった。
薮田には入団までのエピソードがついてまわる。松田元オーナーが薮田の母親のタクシーに乗車した際、亜大の息子を売り込んだ、といういかにも“らしい”話だ。
そのため本人はもちろん薮田の母にとっても、オーナーの存在は特別なものになった。プライベートでトラブルが生じた場合もそう。グラウンド内にもオーナーの意向が持ち込まれるようになった。緒方監督の時、佐々岡監督の時、そして今もそう。
前回、薮田が投げたのは5月25日の中日戦(マツダスタジアム)。8対2、大量リードの八回だった。
首脳陣は楽なシチュエーションでの登板を優先するようだ。だがこの日はビハインドとはいえまだ4点差。そして何より違ったのは、中日とオリックスの打線の“火力の差”だ。
下位打線に3連打され舞いあがった薮田は一番廣岡に四球を与え、茶野には1ボールからストライクを取りにいったツーシームを叩かれた。独立リーグ→育成ドラフト4位→開幕前支配下登録というタフな経歴を持つ23歳が手にするバットによって粉砕されるというストーリー。内情を知れば誰もが納得するだろう。
投げてもオリックスはプロ3年目、二十歳の山下舜平大の存在がますます大きくなりつつある。オリックスは「育成のカープ」の上を行く。そのシステムは“カープ出身”の水本ヘッドや梵打撃コーチによってより充実したものになる。
3月17日、大阪シティ信用金庫スタジアム。オープン戦で対戦した際には4回2/3で10三振を奪われた。それでも龍馬の適時打やマットのソロで2点を奪い、まったく打てないような状況ではなかった。
しかし推定年俸700万円、一軍登板なしの右腕はその後もどんどん評価を高めた。そして「秘密兵器」とか「バケモノ」(能見篤史氏)などと称される存在になり開幕を迎えた。
新井監督は第1戦で山本由伸に若手をぶつけたようにこの日も「八番ファースト林」、「九番セカンド羽月」を組み込んだ。
結果は林が2打席連続3球三振、羽月も得意の連続ファウル打ちをしないまま中飛と見逃し三振に終わった。もう「バケモノ」には歯が立たない。
けっきょく「あまりパッとしな内容ではなかった」という相手に対して打線は6回4安打6三振。相手のミスに乗じて坂倉のタイムリーで1点を奪うのがやっと、という結果に終わったのである。
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