カープダイアリー第8594話「スイング軌道修正で大事なのは再現性…」(2024年4月23日)

そう、大事なのは…再現性…

今季1号ホームランから計4打席を挟んで、宇草のバットが決勝の2号2ランを叩き出した。

打球は、六大学野球で慣れ親しんだ神宮球場のライトスタンド中段に飛び込んだ。

土曜日のマツダスタジアムで巨人・ケラーから放った代打ホームランと同じような打ち方ができた。スイング軌道が理にかなっているから打球がいい角度で上がる。ムダな力が抜けて「8分(はちぶ)打法」(朝山打撃コーチ)になっているから“しなり”が使えて打球が飛ぶ。

試合は投手戦になった。六回を終えてスコアボードにゼロが12個。床田も吉村も自分の投球に集中しているように見えた。

カープ打線は3安打。秋山の2安打と矢野の左前打で、いずれも得点圏まで進んだものの、勝負どころでは吉村の真っ直ぐに詰まらされ、フォークを打ちあぐんだ。

宇草は二回、二死無走者の場面では、アウトローの真っ直ぐに手も足も出なかった。カーブ、フォーク、スライダー、ストレート、ストレートという配球だった。追い込まれて指1本分短かく握ってはみたものの、ストレートに対してスイングをかける機会を逸した。

五回の第2打席は一死無走者でやはり塁に出ることが求められたが、初球のフォークを空振りしたあとインハイに来たストレートに詰まらされて一ゴロに終わった。

迎えた七回は一死から小園が初球のフォークを右前打したが、続く坂倉の初球打ちは三ゴロ。二死一塁で第3打席が回ってきた。本当はこの回、5・4・3併殺打でスリーアウトだった。サード村上の二塁送球が正確さを欠き、坂倉が一塁に残った。

わずかにグリップエンドのところを余らせて構えた宇草は、スライダーストライクのあとアウトローのフォークにはバットを止めてボールカウント1-1。3球目のスライダーを空振りすると指2本分短く持った。4球目のフォークもボールになった。六回のチャンスでは野間がベース板の外を通るこの球に手を出して三振した。

そして5球目。真ん中付近に来た真っすぐに初めてスイングをかけた。ドンピシャのタイミングになった。

貴重な援護点を得た床田は八回116球を投げて2勝目を手にした。九回の栗林には5セーブ目がつき、防御率は未だ0・00だ。

4連勝で勝率5割に復帰したチームを代表して、ヒーローインタビューを受けた宇草が言った。

「床田さんがすごくいいピッチングを続けてくれてましたし、後ろにもいいバッターがたくさんいるので、何とかつなごうと思って打席に入りました」

さらに「スタメンが続いて新井監督の期待に応えられているのでは?」と振られると「使っていただいてとても嬉しいですし、意気に感じて絶対に結果を残してやるぞ、という気持ちで準備しています」と答えた。

入場者数2万2993人のスタンドの半分は赤く染まり、応援に駆けつけてくれた知り合いや関係者の目の前で自分らしいバッティングを披露することができた。

だが、プロとしてこの世界で生きていくためには、チーム内で自分の持ち場を確保する必要がある。そのためには年上の野間さん、秋山さんを越えることも必要だろう。もちろん6歳も下の田村俊介の打席を、指をくわえて見ていていいはずもない。

鈴木誠也が海を渡ってもう3シーズン目になるが今なお「ポスト誠也」は出てきていない。スイング軌道がこの先、さらに安定するようであれば、宇草は龍馬の残した数字の、果たしてどのあたりまで迫ることができるだろうか…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?