カープダイアリー第8325話「首位までゲーム差ゼロ…ローテ、打線、コーチ配置流動化で加速する新井カープ成長曲線」(2023年7月22日)

前半戦6月28日に続いて、お立ち台に上がった森下が野間の隣りで言った。

「とにかく優勝したいんで、もっともっと熱い応援、よろしくお願いします!」

二回、石川昂に先制ソロを許し、直後に2点の援護をもらい五回に犠飛で追いつかれても粘って、粘って8回3失点で6勝目。3万666人の公式発表があったスタンドからの声援を体中で受け止めた。2日前、球宴の舞台として熱気に溢れたマツダスタジアムには、まだまだ夏の夜の夢の続きがありそうだ。

東京ドーム巨人戦完封勝利から中9日。開幕戦は大瀬良、交流戦頭は九里、そして今回は森下。右肘の不安が払しょくされた右腕がローテの中心で夏場を乗り切っていく。

18番がヒーローインタビューを受けると「優勝」の2文字がいっそう引き立つ。DeNA打線を7回2失点に抑えた前回6月も「優勝争いをするために大事な一戦だと思ったので、いい勝ち方ができてほんとに良かったです」と話した。

2月の日南キャンプ紅白戦。メンバー紹介を担当した森下は「みんな大好き、野間さん…」とマイクを通じてファンに紹介した。その「野間さん」が「返してくれるだろうと思ってみてました」。

場面は2対2同点の七回。中日二番手の勝野からライト線二塁打を放ち、一番田中広輔の送りバントで進んだ三塁上で祈った。

結果は期待通りのレフト前タイムリー。そのあと秋山四球、上本左前打で満塁として、三番手の齋藤からマットがセンター返しの2点適時打。5対2とした。

「とにかく勝ちたかったんで、何とか還せて良かったです」

野間は多くを語ろうとはしなかったが、この1本には価値があった。

この日のスタメンは…

田中広輔
野間
秋山
上本
小園
マット
曾澤
大盛
森下

前半戦ラストゲームDeNA戦は同じ右腕のバウアーに対して…

上本
野間
秋山
松山
坂倉
田中広輔
小園
大盛
床田

…だった。

左脇腹の張りを訴えていた菊池は打撃練習なし。先のDeNA戦で2試合、“つなぎの四番”役を務めた菊池の代役が上本だった。

「西川不在の中、上本、菊池、野間、秋山、坂倉の5人で上位を組みたい」(朝山打撃コーチ)というのがチーム方針で二番・三番は固定した状態が続く。この日は「田中広輔と上本、どちらを四番にするか」が検討され「簡単に三振はしない、ことを起こしてくれる」上本の四番が決まった。

打順にこだわったのは昨季3度対戦した高橋宏斗の前に堂林のソロによる1点に封じられたからだ。打撃コーチとしては“責任問題”。朝山打撃コーチにしてみればオフからずっとそのことが頭にあった。

高橋宏斗はカウント球でも、追い込んでからでもスプリットを投げてくる。しかもカウントによってその高さを変えてくる。実は阪神も右腕には痛い目に遭っていた。藤井ヘッドも危機感を募らせ、この日の打線をどう組むかを思案した。

攻略のための基本方針は「際どい球は追いかけず、どの球種も浮いたところをセンター方向へ…」だった。

野間はそれを実践した。初回の第1打席でボールカウント2-1から真っすぐをファウルにしたあとスプリットも2つファウルにして153キロを中前打。五回の二死一、二塁でも真っすぐを左前打。後半戦のスタートをいい形で切ることで、七回第4打席は“上から目線”で打席に立つことができた。

そういう意味では二回のチャンスで、高橋宏斗の浮いた真っすぐを左前に弾き返した大盛のバッティングも二重丸だった。

新井監督はコーチ陣と意見交換しながら細部に渡っての調整の手を緩めない。試合が始まるとコーチャーボックスの小窪コーチと赤松コーチの持ち場が前半戦とはテレコになっていたし、投手コーチも菊地原コーチがベンチに居て、横山コーチがブルペンに回っていた。

投手ローテも打順もコーチの配置も固定しない。だから「四番菊池」も「四番上本」も必要なら採用する。通常、マイナスのイメージの方が強いこうした流動化によって、新井カープはどんどん戦う集団へと姿を変えていく。

鬼門と言われた交流戦を踏ん張り、そこからの星取りはこれで15勝7敗。球宴を挟み6連勝で貯金10として、後半戦黒星スタートとなった首位阪神とのゲーム差がゼロになった。


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