カープダイアリー第8440話「若き侍ジャパン、韓国撃破で2大会連続優勝、あとがない延長タイブレークで一閃坂倉のバット、小園は4戦通じて打率・412」(2023年11月19日)

2023年は侍に始まり、侍に終わった。

「逆方向!破ったぁ~~!ニッポンサヨナラァ…、2大会連続、韓国を破っての優勝!」

TBSアナの実況にシンクロして、門脇誠の見事な流し打ちが三遊間を抜けた。三塁から万歳しながらホームを踏んだ小園海斗は高々とヘルメットを放り上げ、そのまま一塁ベースを中心にした歓喜の輪の中へ。

タイブレーク突入の延長十回に待っていたのは、2023年プロ野球ラストシーンに最も相応しい場面だった。

「きょう、非常にたくさんのファンの方々の前でね、こうやって勝つことができて非常に嬉しいです」

「非常にほっとしてますし、選手の頑張りのおかげで勝つことができたのでほんとに選手に感謝しています」

「誰も諦めることなくね、勝つことだけをみんな思ってやってましたし、2対0から1点牧選手がホームランを打って入った時からベンチの雰囲気が変わったので、選手はほんとに最後まで諦めずやってくれました」

若いチームを率いて初の国際試合に臨んだ井端弘和監督は、勝利者インタビューで何度の選手たちを褒めた。春先の侍ジャパンとは状況が大きく異なる中、スタッフも選手も特別な思いを胸にこの東京ドームの大舞台に立ち続けていたはずだ。

アメリカ東部時間、3月21日。

大谷翔平がマイク・トラウトを空振り三振に仕留めて侍ジャパンが世界一になった。あれから8カ月。「若い人へ託したい」の栗山英樹前監督の思いから紆余曲折あって井端ジャパンが誕生した。

初陣となったアジアプロ野球チャンピオンシップは各国・地域の若手育成の場だ。選ばれたのは24歳以下もしくは入団3年目まで、そして29歳以下のオーバーエージ26人だった。

クライマックス・シリーズ、ファーストステージ第1戦のあった10月14日。本番まで残り1カ月というタイミングでマツダスタジアムに井端弘和監督の姿があった。そして新井、三浦両監督と、小園海斗、坂倉将吾、牧秀悟の代表組に関する意見交換が行われた。

初めて日の丸ユニホームに袖を通す坂倉将吾に関しては、今季の「捕手一本」での疲労を考慮して代表を辞退する、という選択肢もあった。しかし本人の強い希望で「ゴーサイン」。1年後の「プレミア12」でも日本の扇の要となることが期待される「打てるキャッチャー」を熱望する井端ジャパンにとっては大きなプラス材料だ。

3戦3勝で韓国との決勝に臨んだこの日、スタンドは今大会最多4万1883人のプロ野球ファンで膨れ上がり、多彩な応援が繰り広げられた。

二回、四球と一塁手・牧秀悟のバント処理ミスから招いたピンチで四番ノ・シファンに適時二塁打され2点を先制された。ショート小園海斗が超人的なジャンプ力を見せたが、マッハの打球はそのグラブの上を通過した。今井達也-坂倉将吾のスタメンバッテリーが選択したスライダーがど真ん中に入った。

四回まで毎回走者でゼロ行進だった日本は五回、汚名返上の牧秀悟の一発で1点差にすると、六回には佐藤輝明の犠飛で追いついた。予選3試合では牧省吾の後、五番を打っていた佐藤輝明は八番に下げられた。これもまた井端采配…

2対2同点で延長タイブレークに入り、いきなりの6・4・3のゲッツーで二死三塁まで持っていった吉村貢司郎-坂倉将吾のバッテリーは、しかし三番ユン・ドンヒにボールカウント1-2からフォークを2球続けて中前に弾き返され勝ち越し点を献上した。

ノ・シファンにも右前打されて一、三塁とピンチ拡大。が、五番キム・フィジプはカーブ、カーブ、150キロストレートで3球三振に仕留めた。

1点を追いかけてその裏、二塁走者は藤原恭大、一塁走者は小園海斗。今大会打線を引っ張ってきた23歳コンビが虎視眈々とホームを狙う中、三番森下翔太のところで「代打古賀優斗」が告げられた。WBC準決勝メキシコ戦の“あの究極の場面”とはまさに好対照な選択肢…

結果は投手前への送りバント成功。続く牧秀悟は申告敬遠で井端ジャパンの“司令塔”に打席が回ってきた。佐藤輝明に代って五番を任された坂倉将吾、タイブレークでの失点は、分は自分のバットで取り返す…

マウンド上には逃げ切りを図る韓国ベンチの勝負手、右腕のチョ・ヘヨン。その初球、146キロのストレートを捉えた打球は前進守備のセンター後方へ。余裕の犠飛となり歓喜のスタンドとともに藤原恭大ホームイン、小園海斗は三塁へ進んだ。

万波中正も申告敬遠で再び満塁。打席には小園海斗と今大会二遊間を固めてきた門脇誠。もう、その先にどんな結末が”舞って”いるかは、誰の目にも明らかだった。

-井端監督、未来の侍、どのような侍にしていきたいですか?

「あのう、今回はね、若い選手で臨みましたし、この大会を通じて国際試合の難しさも経験できたというところでは、非常に成長できたかなと思いますので、これを来年のレギュラーシーズン、そしてまた来年はプレミアもありますので、(この若手主体メンバーから)ひとりでも多く侍ジャパンに入ってくれることを願っています」

次回集う井端ジャパン、最強メンバーの刀(バット)の柄(つか)の部分には今大会打率・412をマークしたK・Kと、チャイニーズ・タイペイ戦の九回に千金の中前適時打も放ったS・Sのイニシャル。それは新井カープの未来にとってもかけがえのない財産になる。

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