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桂文華三十周年独演会~おかげさまで~ 紹介文

3年前、文章講座へ通い終えたタイミングで、文華師匠から連絡をもらう。
毎年、11月3日文化の日に開催の独演会で配布するパンフレットのメッセージの依頼でした。
自分でいいのかとためらうも、気がつくとキーボードを叩く自分がいました。なんとか書き上げた原稿をアップします。
実際には文字数の関係で原文から削っており、せっかくなので原文そのままを掲載します。実際には文字数の関係で原文から削っており、せっかくなので原文そのままを掲載します。


~以下原文~


桂文華三十周年独演会~おかげさまで~

                                                                            リアライズ文華落語塾 木本 努

とある会社の会議室。段ボールで拵えた高座を組み立て、毛氈をひき、座布団を置いた。扇子と手ぬぐい、ICレコーダーを持って高座に上がり身を整えた。こちらの様子を見計ら い師匠から声がかかった。

『ほな、木本っさん、はじめましょか』
「よろしくお願いします」

覚えたての七段目。稽古が始まった。私は、ICレコーダーの録音ボタンを押した。いまから5年前の2013年3月に私が尊敬の念を抱く方から落語を奨められた。聴く方ではなく、演る方だった。

長時間、聴くのも耐えられないように思われた落語を演るやなんてとんでもない、と私は思った。しかし仕事の役に立つと言われたことが頭に残り、思いきって文華落語塾の門を叩いた。

初稽古、初めて文華師匠と顔を合わせた。歓迎してくださった。塾生のほとんどが文華師匠より年上だった。こき使える年下が欲しかったようだった。
私はこき使われてやるもんかと思っていたが、今、こうしてお祝い文を書いている。知らぬ間に文華師匠の思うつぼにはまっていた。

ICレコーダーの残り時間を気にしながら、文華師匠の声に耳をかたむけた。

『木本っさん、あこんとこ、ちょっとな~』
「な、なんでしょう」
『ちょっと、野暮なんちゃうかぁ。なんか、笑かしたろうっていう気ィが透けてみえるな ~」
(うっ、うっ、)
『俺って面白いやろう?って気ィでやると、お客さんにバレてまうんですわ。お客さんは ようわかってはるで』
(図、図星・・)
『あのね、落語は登場人物の気ィになってやらなあかんのですわ。演技の世界やけどリア リティを出さなお客さんに伝わらないんですわ。ま、こんなこと云うてても僕じしん、で けてへんねんやけどね。ははは~』

と、おどけながら指導をしてくださり稽古が終わった。 私はICレコーダーの録音を止めた。

 
一か月に一度、半年間の稽古を経て発表会を行う。発表会当日は自分の出番が来るまでは お腹がキリキリする。発表会に出る他の塾生に目をやるとやはりキリキリしているように見えた。楽屋から高座の袖までいたりきたりと落ち着かない。

一番太鼓、二番太鼓、出囃子。自分の出番が近づくつれ、お腹の苦しみから胸の高まりに変わってくる。出番前は喉 がカラカラに乾く。出番中は目のまえ真っ暗。

ところが、高座を降りたとたん、頭スッキリ、体はシャキっと、気分爽快。
はやく打ち上げに行きたい。

文華師匠の出番は最後。モタレの出番が終わり、出囃子『千金丹』の三味線が弾かれる。この時、文華師匠はのどを鳴らし、調子を確かめる。

「ん、ん、ぐぁ、ぁぁ、あ~、#%&♪~」
そして、廻りにいる方がた一人ずつ目を見て挨拶をされた。

「お願いします。」
「よろしくお願いします。」
「お願いします・・・」

この瞬間、幾年月を積み重ねてきたプロの落語家と同じ舞台にいることを私は実感させられた。あと幾日で文華落語塾の落語発表会がある。お客さんに『おもろかったで』と言われるよう、文華師匠に稽古をつけてもらった時のICレコーダーを繰り返し聴いている。

今日も文華師匠は出番前、いつものようにのど鳴らして調子を確かめ、廻りのみなさまに 「お願いします。」と挨拶されているだろう。

平成三十年十一月三日 文華の日「桂文華入門三十周年独演会~おかげさまで~」の名びらがめくられた。

文華の日2


もし刺さる根多でしたら、木戸銭歓迎です。寄席代にして、さらなる刺さる根多を仕入れてきます。