ネガティブリザルト.
毎年2~3月は時間に余裕があり,今年はコロナの影響もあってかなり暇なので,以前取ったデータを論文にまとめている.
まとめているデータは,2019年1月~4月末の期間,長距離選手を対象に練習量(走行距離)と強度(走行速度)を記録して,ゴールデンウィーク中の記録会成績との関連を検討した内容.記録会ではいろいろな種目に出ている選手がいるけど,比較のしやすさと出場人数から5000mに絞って分析.既に,2019年の日本体力医学会大会と同年北海道体育学会大会にて発表していたけど,執筆をサボっていたデータ.
5000mの記録と練習量・強度に関する先行研究では,Esteve-Lanao et al.(2004),家吉ら(2014),家吉ら(2015),中澤ら(2018)があり,今回執筆中データのオリジナリティーとしては「積雪期の走行距離と走行速度について検討したよ」というところ(雪のない地方の人には考えられないかもしれないけど,雪国では雪上でもガンガンjogしているよ).雪上では走行速度が上がらないので,走行距離が多い選手が好記録で,走行速度はあんまり関係なさそうかな,というのが解析前の予想(=仮説).先行研究では,どの研究も「走行距離の多い選手の方が記録が良かったよ」と示されているしね.
しかしながら,困ったことに,相関分析をしてみると仮説を支持しない「ネガティブリザルト」.
今回のデータでは走行距離と自己記録達成率に負の相関が認められた(≒走行距離が長かった選手ほど遅くなる).N=8というサンプル数の少なさ故,両端の選手が引っ張って相関を出してしまったこともあり得るけども,N数に関しては先行研究とはそれほど変わらない(先行研究では7~10名).
走行速度で見ると,期間全体を通じて平均的な走行速度と自己記録達成率に正の相関が認められた(≒走行速度が速い選手ほど速くなる).こちらはある程度順当な感じもするけど,各月で見ていくと積雪期間中(1~3月)は相関が無く,4月に正の相関が表れている.とすると,冬期間の走り込みに関しては,距離踏んでも速くはならず,春になって速度をあげるといい,という,感覚的には「そんなことしたらケガするよ」が示されて・・・
先行研究の結果との相違は,やはり雪上・氷上のランニング特性が関係しているのでしょうね.佐藤ら(2015)は,雪上路面では通常路面と比較して,同じ生理学的負荷でも走速度が低下することと,大腿二頭筋の筋活動量が低下することを示している.要するに積雪路面ではランニングエコノミーが下がることと,ハムを使わず走っているよ,と.その状態で量を増やしても5000mに対応した速度が上がらず,故に春先の記録につながらない,ということかな.
論文上はここまでしか言えなさそうだけど,実際2019シーズン全体では冬場に走りこんでいる選手の方が記録を出しているので,あくまで「春先の記録」ということで解釈をしてもらいたい.むしろ,走り込みをしつつ春から走れるようにするにはどういうトレーニングをすべきか?という点を考える必要があると思う.毎日のjogを雪のないところで行う,は,雪国では現実的ではないので,他のトレーニングとの組み合わせになろうかと.
考察をどう書くか,結構苦労はしているけど,ネガティブリザルトだったからこそ「面白く」はなっているかな.
ちなみに,投稿先は「積雪路面」を評価してくれそうな国内地方誌を予定.
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