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振り返れば俺がいる(22)テレビについて(その8)大人になってからハマった『まほろ駅前番外地』

――高校卒業後もドラマは観ていたのでしょうか。

いや、相変わらず中谷美紀の出演するドラマは観ていましたけど、それ以外はあまり観ていなかったですね。

これまでのインタビューでも言いましたけど、昔の私は偏見がひどかったんですよね。

映画や音楽にハマると、アニメやゲームは劣ったものと見るようになったり。バラエティーやお笑いが好きだったから、音楽番組とかドラマもバカにしていたし。

自分の中に「映画は好きだけど、ドラマはなぁ……」という偏見が長らくありました。

もちろん、まったく観ないわけでもないんですけど、映画に比べると観る時の熱量が違いました。

――そんないっき82さんが、今ではドラマも好んで観ているんですよね。

そうですね。新しいドラマが始まる時に気になるものがあれば、観てみるようにしています。

もちろん、初回だけ観て、2回目以降は観ないものもあるんですけどね。

――最近だと、どんなドラマを観ているんですか?

今回のクールはおもしろいのが多くて、4本のドラマを観ています。

『レンアイ漫画家』木曜22時(フジテレビ)
『リコカツ』金曜22時(TBS)
『コントがはじまる』土曜22時(日本テレビ)
『ソロ活女子のススメ』金曜深夜(テレビ東京)

――この中で特にハマっているのはどれですか?

どれもおもしろいんですけど、特に好きなのは『コントがはじまる』ですね。

売れない若手芸人の話なんですが、売れなくても好きなお笑いを続けるか、辞めて人生をやり直すか、という主人公の葛藤がたまらないですね。

自分もお笑い芸人を目指したことがあるからかもしれないけど、凄く青春を感じます。

菅田将暉、有村架純、中野太賀、神木隆之介といった若い人たちの演技も素晴らしいですね。今の役者さんは本当に達者な人が多いと思います。

――昔は若い俳優さんが苦手だったんですよね?

そうなんですよ。20代の中盤くらいまでは、若い俳優さんが苦手で、その頃はドラマも観ていませんでしたね。

『花より男子』(’05)の時代かな、小栗旬が売れ出した頃とか。彼は私と同い年なんですけどね。

「生意気そうだなぁ」って、観たこともないのに嫌いで(笑)

今は小栗旬も好きですけどね。これは単に当時の代表的な俳優を挙げただけですよ。

小栗旬に限らず、イケメンと言われていたような若手俳優はほとんど嫌いでした(笑)

――どういうきっかけでドラマを観るようになったんですか?

妻と一緒に住むようになってからです。

ずっと一人だったら、多分、今もドラマは観てないですね。

うちの妻は、一日中テレビを観ていても平気なくらいのテレビっ子で、当然、ドラマも観るわけですよ。

私もまったく付き合わないわけにはいかないし、最初は付き合いのつもりで観ていたんですけど、その内に段々とドラマのおもしろさもわかってきて。

もちろん、最初は違和感がありました。

妻に勧められて、昔のドラマも結構観たんですよ。

そしたら、中には登場人物がやたら一人語りするようなものもあって、モノローグというやつですか。

「なんじゃこりゃ⁉」って思ったりもしたんですけどね。

まぁ、そんなものばかりでもないし、逆にそういったものもドラマの様式美として考えれば、観れなくはないですよ。

要は慣れっていうやつです。

――奥様との付き合いから始まるなんて。そんな入り方もあるんですね。

やっぱり、好きな相手が好んでいるものは、はなから否定するわけにもいかないし。

「何かいいところがあるのだろう」と、長所を探すつもりで観始めました。

最初は軽い気持ちで観始めたんですけど、ドラマって一口に言っても、色々なものがあるから、ハマるものはハマってしまいますよね。

――これまでに観てきたドラマの中で、特にお気に入りのものと言うと、どんなものがありますか?

まっさきに思い付くのは、『まほろ駅前番外地』(’13)ですね。

▲2013年1月~3月 金曜深夜放送(テレビ東京)

多田(瑛太)と行天(松田龍平)の二人の便利屋の話で、昔の『傷だらけの天使』(’74~’75)とか『探偵物語』(’79~’80)に通じる感じがあるんですよね。

便利屋だから、毎回、色んな依頼人がきて、色々とあぶない仕事も引き受けるっていう話。

映像の方も、『傷だらけの天使』とか『探偵物語』の感じがありました。ちょっと古い感じのする暗めの画質ですよね。

――『傷だらけの天使』とか『探偵物語』って、いっき82さんが生まれる前のドラマですよね。

私がなんでそんな古いのを知っているかと言うと、うちの父親が好きなドラマだったんですよ。

だから、うちにビデオがあって、子どもの頃にちょっとだけ観せてもらったことがあったんです。

大人になってから、観直したいなと思っていたところに、丁度、『まほろ駅前番外地』が始まって、大ハマりしたんです。

――『まほろ』は、どういうところが好きなんですか。

色んなおもしろさが詰まった作品なので、一言で言い表すのが難しいですが、まず映像の質感が私の好みですね。

映画もドラマも、私にとっては、映像が命なんです。ストーリーとかよりも。

だから、『まほろ』みたいな、私のストライクゾーンに入ってくる映像作品は何度でも観ても飽きないんですよ。

もちろん、『まほろ』はストーリーもいいですけどね。

毎回、1話完結型の物語で、人情味あふれるストーリーもあれば、1話丸々事務所の中だけで展開するコメディー色の強い回もあります。

1話完結のおもしろいところは、こういったバラエティーに富んだおもしろさを提供できるところにあると思うんですよね。

全話の物語が繋がっている長大な物語を描いたドラマでも、おもしろものはありますけど。

――『まほろ駅前番外地』の演出は、大根仁監督が手掛けていましたよね。

そうそう、私はこの作品で、初めて大根監督のことを知りました。

この監督も堤幸彦監督のところにいた人なんですよね。

それを知らずに観ていて、「おもしろい映像だなぁ」と思っていたら、そういう出自の方だったので、運命のようなものを感じました。

堤幸彦監督と同じように、おもしろい映像を作る人です。

『まほろ』はオープニングの逆再生の映像が印象的でした。

――大根監督といえば、作品ごとに起用されるアーティストの音楽も特徴的ですよね。

私も音楽の感性に共感するところがあって、作曲家の人選を作品に合わせて、巧みに切り替えるところが好きですね。

大根監督が作品に起用したのがきっかけで好きになったアーティストも多いです。

『まほろ』のオープニング曲は、フラワーカンパニーズ、劇中の音楽とエンディング曲は元・ゆらゆら帝国の坂本慎太郎が手掛けていましたが、どちらの音楽も好きです。

(次回に続く)

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